NEWS

中小企業が男性の育児休業に取り組むと助成金がもらえます

2019/10/17

中小企業でイクメン?イクボス?助成金?

厚生労働省は令和元年10月16日に『イクメン企業アワード2019』・『イクボスアワード2019』の受賞企業と受賞者を発表しました。少子化は国家繁栄の一大事とあって、官民一体となって取り組みを強化していますが、現状はどうなっているでしょうか。

平成29年度に厚生労働省が行った『仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査』によると、約3割の男性が育児休業を取得したいと希望しており、既に認知度も高くなった「イクメン・イクボス」といった仕事と育児に関するキーワードですが、その実態は乏しく、『平成30年度雇用均等基本調査』では女性の育児休業取得者の割合は82.2%に対して、男性取得者は6.16%(前年5.14%、前々年3.16%)と6年連続で増加傾向にあるものの政府の掲げる目標(2020年に男性の育児休業取得率13%)にはまだまだ遠く及ばない状態です。

止められない少子高齢化や年金・医療制度の財政の他、女性の社会進出促進や出産・育児の家庭内での一方への負担など、社会の要請として男性の育児参加率向上は当然といえますが、利益追求の企業にとってメリットが無ければなかなか進むことはありません。特に人的余裕が無く、一人一人の職務に重責を担わせなければならない中小企業にとっては自社で男性の育児休業など到底不可能だと思っている経営者も多いかもしれません。中小企業事業主の立場で男性社員が育児休業を取得するメリットとデメリットについて、要点を確認しておきましょう。

男性従業員に育児休業を取得させるメリット

☑人材の離職防止

☑情報の共有化によるチームワーク向上

☑企業イメージの向上

☑休業期間中の社会保険等負担

☑助成金の受給

制度の基本

労使双方で負担している健康保険や雇用保険は、病院での診察を安く受けれたり、失業給付を受けるためだけではありません。育児休業取得のためのルールや実際に取得させた場合には取得した本人だけでなく会社も社会保険料が免除されたり、助成金を受けたりなど様々な制度が用意されています。

☑育児休業制度(パパ育休)

子が1歳(条件によって最長2歳)に達するまで(両親が育児休業を取得する場合は1歳2か月に達するまでの間で1年間)、申し出によって育児休業の取得ができます。育児休業は通常一人の子につき連続する一度の期間ですが、男性の育児休業は特例として産後8週間以内の期間に育児休業を取得した場合には特別な事情が無くても再度育児休業の取得ができます。

☑育児休業給付金と社会保険料の免除

育児休業期間中には賃金支払い義務がありませんので、通常の会社であれば無給扱いの補填として、雇用保険から育児休業給付金が支給されます。

育児休業給付金は休業開始時賃金の67%(6カ月経過後から50%)が支給されますが、給付金は非課税扱いのため所得税が控除されたり、翌年の住民税算定にも含まれません。

また、休業期間中の社会保険料は『労使ともに免除』、雇用保険料は無給であれば保険料負担が無いため、給付金の実質手取りは給与支払時の80%程度が維持されます。つまり、事業主にとって休業期間中の社会保険料・労働保険料の負担が軽減されるばかりでなく、休業期間中の収入を補償するような負担や配慮も必要ありません。社会保険料は育児休業期間中の支払が免除された場合でも、「支払ったもの」として扱われますのでご安心ください。

収入イメージ 育児休業前 育児休業期間中
給与 230,000円 0円
育児休業給付金 0円 154,100円
所得税 5,000円 0円
社会保険料 30,000円 0円
雇用保険料 1,200円 0円
住民税 15,000円 15,000円
手取り 178,800円 139,100円(77.7%)

《両親で育児休業を取得するときの育休概要(厚生労働省リーフレット)》

男性の育児休業取得に対する助成金(中小企業)

【両立支援等助成金(出生時両立支援コース)】

男性が育児休業・育児目的休暇を取得しやすい職場風土づくりのための取組(制度)を行うことで助成金が受給できます。

①男性が子の出生後8週間以内に開始する連続5日以上(大企業は14日以上)の育児休業を取得すること

受給額:57万円(生産性要件を満たした場合には72万円)

②男性が子の出生前6週間又は出生後8週間以内に5日以上(大企業は8日以上)の育児目的休暇を取得すること

受給額28.5万円(生産性要件を満たした場合には36万円)

支給内容<生産性要件を満たした場合> 中小企業 中小企業以外
1人目の育休取得 57万円<72万円> 28.5万円<36万円>
2人目以降の育休取得 5日以上14.25万円<18万円>

14日以上23.75万円<30万円>

1ヵ月以上33.25万円<42万円>

14日以上14.25万円<18万円>

1ヵ月以上23.75万円<30万円>

2ヵ月以上33.25万円<42万円>

育児目的休暇の導入・利用 28.5万円<36万円> 14.25万円<18万円>

※上記のコースは2020年までの時限措置と予定されています。

※男性育児休業に関する助成金の詳細は都道府県労働局雇用環境・均等部または当事務所までご相談ください。

➡両立支援等助成金(出生時両立支援コース)

法律上の事業主の義務

いうまでも無く育児休業は法律に基づく労働者の権利ですので、申し出があった場合には拒否することはできませんが、平成29年より改正された『育児・介護休業法』によって、従来の『転勤についての配慮』や『不利益扱いの禁止』、『育休等に関するハラスメント防止措置』のほか、事業主の義務の範囲が拡大されています。育児・介護休業法自体に罰則規定はありませんが、法令違反の場合には労働局による厳しい行政指導の他、民事訴訟による損害賠償請求が提起された場合には手痛い出費となるため法律違反とならないよう十分に確認が必要です。

  • 従業員やその家族が妊娠・出産したことなどを知った場合には、その従業員に個別に育児休業等に関する制度を知らせる努力義務が創設されました。
  • 未就学児を育てながら働く従業員が子育てしやすいよう、育児に関する目的で利用できる休暇制度を設けるよう努力義務が創設されました。(配偶者出産休暇、ファミリーフレンドリー休暇、子の行事参加のための休暇など)

《男性従業員の育児休業取得のデメリット》

これだけ多くのメリットがあるにもかかわらず男性の育休取得が進まないのは、「育児休業を男性が取得する必然性の意識」と「代替要員の確保」が大きな理由になっていると思われます。特に中小企業では一人一人の職務に担う責任が重く、範囲も広いため、一人の男性社員が一定期間抜けることによる事業運営上のマイナスは業務が停止するほどの大きなダメージになることもありえます。

しかし、全ての従業員には職業選択の自由があり、『辞める自由』や『転職の自由』は強力に保護されています。終身雇用・年功序列が当たり前であった時代であれば、中高齢が転職によって賃金などの待遇が向上するのはごく一部の優秀な経歴のある人材だけの特権であったかもしれませんが、『転職限界年齢が上昇した現代社会』においては転職や再就職のハードルは低く、育児の年齢層に含まれる40・50歳代であっても半数は転職によって待遇の向上が期待できます。つまり、サラリーマンである男性従業員の離職や転職を思いとどまらせるためには、従業員を定着させるための施策が他社より進んでいなければなりません。「代わりとなる人材がいないから」と、会社都合を理由に男性従業員の育児休業を阻害することは、法律違反のリスクを負うだけでなく、さらに先の『離職』という大きな損失を招く要因となります。中小企業でもできることをクリアし、一人の社員が1年程度抜けても耐えうる組織作りをすすめていくしかありません。

✅個人主義から組織主義へのマネジメント転換

✅アルバイト・時短社員の活用による業務の分散

✅業務の見える化、情報共有を推進する多能工化

✅業務マニュアルの整備による技術の担保

おわりに

助成金を受給できることは最大のメリットではありますが、男女をとわず育児休業を取得しやすい職場を作ることは、今いる従業員のモチベーション向上、組織の生産性向上の他にも、企業イメージ向上による採用戦略の優位性、労使紛争の予防など、長期的視野で考えれば企業は多くのメリットを享受することができます。なにより、仕事と家庭のワークワイフバランスを事業主主体で進めることは、従業員の組織帰属意識を高め、高い待遇の転職オファーを受けたときに断ってくれるかもしれません。資金の限界や代替要員の確保が困難な中小企業のなかでも先行して育児休業の取得を促進することができれば、人事マネジメントの最終責任者である経営者として従業員たちは合格を出してくれるのではないでしょうか。

 

育児休業制度ほか労務管理に関するご相談は

➡メールお問合せフォーム

☎06-6306-4864

《関連記事》

➡転職の限界ラインは49歳まで?2019年雇用動向調査結果が公表!

➡【2019年度最新】両立支援等助成金の受付が開始されています。

➡中小企業の労務管理【リスク回避と競争力向上】

➡新入社員の6割以上が人並みを求めている!新入社員意識調査が発表

➡労働基準監督署の調査が来た!臨検監督の理由と対策

➡ハラスメント防止対策は外部委託が効果的!社外相談窓口を活用

 

▲一覧に戻る▲

 

▲トップページへ戻る▲