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独立・退職トラブルを防ぐ!競業避止義務と嫌がらせ対策の実務ポイント
2023/05/29
独立や起業は誰にでも訪れる可能性がある
近年、副業ブームや働き方改革、定年後のセカンドキャリアなどを背景に、**「独立して自分の力を試したい」**という従業員は増えています。
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副業から事業が軌道に乗りそう
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難関資格に合格した
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趣味や特技を活かして開業したい
こうした理由で「退職して独立したい」と考えるケースは珍しくありません。
一方で企業からすれば、優秀な人材の流出は経営リスクとなり、場合によっては**「競合への転職」や「独立による顧客流出」**を警戒することになります。
その結果、退職や独立の場面でトラブルや嫌がらせのような行為に発展してしまう例も少なくありません。
独立トラブルが起きやすい背景
企業側の事情
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長年育成してきた社員が辞めることで、施策が失敗したと感じてしまう
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営業ノウハウや顧客リストの流出を懸念する
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競合への転職・独立が脅威になる
従業員側の事情
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自分の力を試したいという純粋な動機
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職場環境への不満や不正の発見
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顧客や同僚からの独立への後押し
双方に理由があるため、衝突が起きやすくなります。
競業避止義務と独立の関係
独立トラブルの典型例が**「競業避止義務違反」**です。
退職時に「〇年間は同業で働かない」という誓約書に署名しているケースや、独立直後に元勤務先から内容証明が届くこともあります。
ただし、憲法で保障された職業選択の自由を不当に制限する契約は、裁判でも広く認められているわけではありません。
在職中に勤務時間を使って独立準備をしたり、同僚を勧誘するなど明確な不正がない限り、**「独立自体を諦める必要はない」**のが一般的です。
競業避止義務の法的根拠と実務上の考え方
競業避止義務は、労働契約や退職時の誓約書によって定められることが多いものですが、無制限に有効とされるわけではありません。
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憲法第22条:職業選択の自由を保障
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労働契約法第13条:労働者に不利な契約は公序良俗に反し無効
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民法第90条:公序良俗に反する法律行為は無効
このため、
「期間が長すぎる」「地域が広すぎる」「業務範囲が不明確」など、労働者の自由を過度に制限する条項は無効と判断されやすいのが実務です。
判例の傾向
裁判例では、以下の要素を総合考慮して有効性が判断されています。
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競業避止義務の 期間(通常1~2年が目安、それ以上は無効とされることが多い)
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競業対象の 地域・業務範囲(あまりに広すぎる場合は無効)
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使用者が競業避止義務に対して 代償措置(補償金等)を用意しているか
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労働者の地位・職務内容(経営幹部か一般職かで判断が異なる)
実務上のポイント
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独立自体が違法とされることは少ない
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問題は「就業時間中の独立準備」や「顧客リストの持ち出し」など不正行為があるかどうか
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誓約書があっても、代償措置のない過度な制約は裁判で否定される可能性が高い
よくある嫌がらせのパターン
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取引先に「取引禁止」を呼びかける通知
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過度な連絡(鬼電・自宅訪問など)
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不正競争防止を理由とした過剰な警告
もちろん、これらは法的に問題となる可能性が高く、違法な嫌がらせ行為として差し止め請求の対象になることもあります。
トラブルを防ぐための独立準備
独立そのものは自由ですが、余計なトラブルを避けるには事前準備が欠かせません。
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就業規則・誓約書の確認
競業避止義務の範囲や期間を事前に確認しておきましょう。 -
退職時の対応を丁寧に
顧客や取引先へのあいさつは誠実に。誤解を避けることが大切です。 -
第三者への相談
独立前に社労士や弁護士などに相談し、リスクを整理することが安心につながります。
企業ができる「社員を辞めさせない」ための施策
独立トラブルを未然に防ぐには、従業員が独立したいと思わない職場づくりが最も有効です。
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働きやすい労働環境の整備
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公正な評価制度
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独立よりも魅力的なキャリアプランの提示
こうした「定着施策」を行うことで、優秀な人材の流出を防ぎやすくなります。
まとめ
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独立や退職は誰にでも起こり得る自然なキャリア選択
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トラブルの原因は「企業の不安」と「従業員の事情」の双方にある
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競業避止義務違反=即独立できないわけではない
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独立前には「準備」と「第三者への相談」でトラブルを最小限に
当事務所では、
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企業向けには「人材定着施策」や「退職トラブル防止策」
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独立を考える従業員向けには「独立前のリスク診断」
をサポートしています。初回相談は無料ですので、安心してご相談ください。
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