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【2025年対応版】不正・トラブルがある場合の役員辞任ガイド|横領・背任・業務放棄でも辞任できる?責任と手続きの境界線【専門家監修】

2025/11/06

【要注意】「辞めれば済む」と思っても、責任が消えるわけではありません。

本記事では、横領・背任・業務放棄などのトラブルが関係する場合に、役員がどのように辞任できるのか、また辞任後もどこまで責任を負うのかを、企業法務・労務リスクに精通した社労士が解説します。(監修:RESUS社会保険労務士事務所/社会保険労務士 山田雅人)


はじめに|「辞めたい」だけでは済まないケースがある

役員には「辞任の自由」が法律で保障されています(会社法330条・339条)。
しかし、不正行為や重大な業務放棄などが絡む場合、辞任できることと、責任を免れることはまったく別の問題です。

たとえば、

  • 不正経理や横領への関与

  • 労災・未払い残業などの放置

  • 会社に損害を与える重大な判断ミス
    などがあると、辞任後でも「任期中の行為」として損害賠償を請求されることがあります。


第1章|不正・トラブル関与時でも「役員辞任」は可能

たとえ社内で問題が起きていても、役員の辞任そのものは自由です。
会社が拒否しても、辞任届が会社に到達した時点で法的に効力が発生します(会社法330条)。

● 辞任そのものは妨げられない

  • 不祥事の渦中であっても、辞任は「個人の自由意思による行為」。

  • 会社の承認・取締役会の決議は不要。

  • 内容証明郵便などで通知すれば、登記が未了でも効力は発生。

● ただし「責任」は残る可能性あり

  • 不正行為・重大な過失などがある場合、辞任後でも民事・刑事責任を問われることがあります。

  • 「辞任=免責」ではありません。

  • 辞任が会社に重大な損害を与える形で行われた場合損害賠償責任を問われる可能性があります。

第2章|役員辞任後に残る責任・法的リスク

ケース 残る責任・リスク 補足
不正経理・背任 損害賠償請求(会社法423条)・刑事告訴 「知りながら黙認」も責任対象になる
労働災害・法令違反 使用者責任(労基法・安衛法) 安全配慮義務違反・過失責任あり
粉飾・虚偽登記 刑事罰・登記懈怠責任 名義上の取締役でも対象
資金流用・横領 刑法上の業務上横領罪 刑事罰+損害賠償請求の両方
情報漏洩・守秘義務違反 民事賠償・信頼失墜 辞任後も秘密保持義務は継続

第3章|トラブル関与時に「今すぐ辞任すべき」ケース

次のような場合は、むしろ早期辞任を検討すべきです。

  • 経営陣が不正を隠蔽しており、自分が巻き込まれかねない

  • オーナー一族が会社を私物化しており会計処理に大きな疑いがある
  • 社内で責任を押し付けられ始めている

  • 書類や会計処理に疑義があるのに改善されない

  • 名義上の取締役にされており、実態の把握ができない

こうした場合、「在任していること自体がリスク」となります。
辞任届を内容証明で提出し、自分の意思と行動を明確化することが防御策になります。


第4章|辞任時に必ず残しておくべき証拠と書類

書類 用途 注意点
辞任届(原本・控え) 自己の辞任意思を証明 発送日・到達日を明記
内容証明郵便の写し 辞任効力の証拠 郵便局控えを厳重保管
決算書・取引資料コピー 自己責任の範囲確認 在任中の行為の証拠に
社内メール・議事録 指示・決定の経緯証拠 誰の判断だったかを記録
登記簿謄本(退任確認) 登記削除の確認 辞任完了後に取得

これらを整理しておけば、後日トラブルに巻き込まれた際も「自分の立場」を客観的に示せます。


第5章|辞任後の対応と再発防止

  1. 履歴事項全部証明書を確認
     → 自分の名前が登記から削除されているか確認。

  2. 不正関与の疑いがある場合
     → 弁護士・司法書士に早期相談。自主的な資料提出や弁明書作成が有効。

  3. 今後の防止策
     → 就任時に「責任限定契約(会社法423条の3)」を締結しておく。
     → 個人として外部専門家(社労士・税理士・弁護士)を継続的に関与させる。

※会社法423条(役員の任務懈怠による損害賠償責任)、423条の3(責任限定契約)、356条(利益相反取引)に基づき解説しています。


第6章|専門家による「不正・トラブル時の辞任サポート」

RESUS社会保険労務士事務所では、
不正やトラブルが関係する辞任について、次のような実務サポートを行っています。

✅ 辞任届・内容証明作成サポート
✅ 責任範囲・法的リスク診断
✅ 弁護士・司法書士連携(刑事・民事対応)
✅ 証拠整理・説明文書(弁明書)作成支援
✅ オンライン相談・全国対応・秘密厳守

費用の目安:

  • 初回相談:無料(メールのみ・オンライン相談は5,500円/時間)

  • 書類整理・弁明文書作成:22,000円~

  • 総合サポート(登記+弁護士連携):55,000円~


第7章|個人として専門家を関与させる際の利益相反リスク

役員個人が、自分の法的責任や辞任手続きを確認するために外部専門家(社労士・税理士・弁護士)へ相談すること自体は合法であり、利益相反にはなりません。

■ 利益相反にならないケース

  • 自身の法的立場・責任範囲を確認するための相談

  • 辞任手続や登記の正当性確認

  • 自己防衛・予防法務のための助言

これはあくまで「自己の法的安全を確保するための行為」であり、会社の不利益を目的とするものではないため問題ありません。

■ 利益相反になる可能性がある行為

行為内容 問題点
会社の機密情報を無断で専門家に渡す 守秘義務違反・不正競争防止法違反
専門家を通じて会社を訴える 会社との利益が直接衝突する(会社法356条)
他の役員の不正を虚偽報告する 忠実義務違反・名誉毀損の可能性

■ 安全に関与させるための実務ポイント

  1. 相談目的を明確にする(自己責任確認・退任手続など)

  2. 開示情報を最小限にする(個人の立場に関する範囲に限定)

  3. 会社顧問と個人顧問を区別する(契約・相談範囲を明確に)

  4. 会社顧問弁護士に相談する場合は利益相反の可能性を事前に伝える

実務例:専門家別の関与範囲と留意点

専門家 個人相談の典型例 評価・留意点
社労士 辞任届・登記関連の社内文書整備/退職金・役員報酬規程の確認/ハラスメントや報復リスクの助言 ○ 適法。法的助言・社内制度整備支援の範囲内であれば問題なし。
司法書士 辞任登記手続の代理申請/登記懈怠申立て支援/登記簿謄本・履歴事項確認 ○ 適法。商業登記手続は司法書士の独占業務であり、正当な依頼。
税理士 報酬・源泉徴収処理/退任時の所得区分・退職所得計算/役員貸付金・未収金整理 ○ 適法。税務処理・退任精算に関する相談は通常業務の範囲。
弁護士 責任範囲・損害賠償リスクの法的助言/内容証明文書・警告書の確認/損害請求への初期対応 ○ 助言・文書確認段階までは適法。訴訟代理・会社との交渉に入る場合は利益相反リスクあり。

FAQ|よくあるご質問

Q1. 不正が疑われている状況でも辞任できますか?
A. はい、辞任自体は自由です。ただし辞任後も法的責任が残る可能性があるため、証拠保全と登記確認を必ず行ってください。

Q2. 在任中に発生した損害は、辞任すれば責任を免れますか?不正関与中でも辞任すれば責任を免れますか?
A. 免れません。任期中の行為に起因する損害は、辞任後でも会社法423条に基づき請求される可能性があります。

Q3. 他の取締役が不正を行っており、自分は知らなかった場合でも責任がありますか?
A. 注意義務を怠った場合には「監督責任」が問われます。辞任前に状況把握と記録を残すことが重要です。

Q4. 社長から「辞めるなら損害賠償」と脅されています。
A. 法的根拠がなければ無効です。辞任の自由を妨げる脅迫的言動は不当行為に該当します。弁護士等へご相談を。

Q5. 辞任後に警察や税務署から事情聴取があった場合は?
A. 逃避ではなく、誠実に対応しつつ、専門家立会いのもと説明することが重要です。


まとめ|「辞める自由」と「責任の線引き」を明確に

役員は辞任する自由を持っていますが、それで責任が消えるわけではありません。
大切なのは、

  • 正しい手続きで辞任を成立させること

  • 責任の範囲を明確化し、証拠を残すこと

  • 専門家の助言を得て安全に進めること

これらを徹底すれば、不正・トラブルの渦中でも、ダメージを最小化し、あなた自身の法的安全を守ることができます。


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