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【2026年版】“言い方ハラスメント”最新ガイド 怒っていないのに伝わってしまう“圧”と、企業が取るべき予防策
2025/11/13

監修:RESUS社会保険労務士事務所(社会保険労務士 山田雅人)
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はじめに|“言い方”は2026年以降、最重要ハラスメント領域へ
2024〜2025年にかけて、社内相談窓口・外部相談窓口に寄せられるハラスメント相談の中で、最も増えているジャンルが「言い方」です。
特徴は次の3点:
● 内容は正しいのに「言い方」が怖い
● 声を荒げていないのに“圧”が伝わる
● 本人にまったく悪意がない
これは従来の“叱責型パワハラ”ではなく、心理的安全性を損なう“非意図ハラスメント”です。言葉はニュアンスよりも、「何と言ったか」が文字化されるため、表面的に判断されやすい傾向があります。
2026年以降は以下の要因でさらに増加します。
■ Z世代・ミレニアル世代の「言い方の繊細化」
■ SNS・録音・動画証拠化により“言動の切り取り”が常態化
■ 企業の教育が「コンプライアンス→言動の標準化」へ移行
■ 「意図より影響」が重視される国際潮流の影響
つまり、“言い方ハラスメント対策=若手離職・炎上対策”です。
本ページは、2025年時点の相談事例・判例傾向・若年層の価値観変化を踏まえ、2026年以降のリスク予測を専門家が整理したものです。
1.“言い方ハラスメント”とは何か(定義)
企業の相談窓口で実務的に用いられる定義は以下の通り。
■ 言い方ハラスメントとは
内容が正しくても、言い方・態度・表情・間の取り方など“伝え方の問題”で、受け手に恐怖・萎縮・精神的負荷を与える言動のこと。
特徴:
・威圧のつもりはない
・本人は普通に話している
・表現・語気・間に癖がある
・相手が萎縮し不整合が生まれる
従来のパワハラとは異なり、悪意ゼロでも成立し得る点が最大の特徴。
2.2026年以降アウトになりやすい “言い方” の典型例
以下は相談窓口で急増している表現です。
(1)語尾が強い・短い・早い
・「違う」
・「は?」
・「だから?」
・「え、何で?」
・「ちがうちがうちがう」
→ 本人はテンポを重視しているだけでも、受け手は“攻撃・否定”と受け取る。
(2)説明がなく突然否定する
・「これじゃダメ」
・「普通わかるよね?」
・「違うよ」
→ “理由がない否定”は、論理重視の若年層が最もストレスを感じる言い方。
(3)ため息・無表情・舌打ち(非言語)
・「はぁ……」
・無言で書類を返す
・眉間にしわ
→ 音声解析や映像解析が進むと「非言語パワハラ」として扱われる可能性が高い。
(4)“比較”を用いた指導
・「前の子はできてたよ」
・「同期の○○はもっとできてる」
→ 人格否定につながりやすい。
(5)マウント構文
・「社会人なら普通わかるでしょ」
・「考えればわかるよね?」
→ これらのフレーズは2025年以降、ハラスメント研修でほぼ禁止語として扱われる傾向がある。
3.なぜ“言い方”が問題化するのか(心理メカニズム)
若手の辞める理由の上位は、『言われた内容より“言い方”がきつい』。
背景は次の3つです。
(1)背景説明と理由提示を重視する現代の若年層
若年層の心理特性:
・理由を知ると即行動できる
・理由がない叱責は「攻撃」と感じる
・感情的な表現に強いストレス
(2)“短く指示する文化”と相性が悪い
上司側の特徴:
・忙しい
・テンポ重視
・簡潔な表現を使う
→ 若手には「怒られている」に変換される。
(3)非言語情報の影響が大きい
実はメラビアンの法則を持ち出さなくても、相談現場では“表情や間”が最も強く嫌悪されることが多い。
4.今日からできる“安全な言い方”5原則(実務向け)
すべての上司が即実践できる内容にしています。
原則1:「理由」をセットで伝える
×「これ違う」
○「お客様対応の基準があるので、ここだけ修正お願いします」
原則2:肯定→改善→肯定の“サンドイッチ法”
Step1:まず肯定
Step2:改善点
Step3:最後も肯定
原則3:語尾を柔らかくする
×「確認して」
○「確認してもらってもいい?」
原則4:指摘は“1対1・短時間・静かな場所”で
公開指導は2026年以降、ハラスメントの高リスク行為に。
原則5:質問を受け付ける一言を必ず添える
「わからなかったらいつでも聞いてくださいね」
→ この一言だけで心理的安全性は約3倍向上。
5.企業が整備すべき“言い方ハラスメント”対策(2026年版)
✔ 言い方基準(NGワード集)の策定
✔ 管理職向けアサーティブ研修
✔ 若手のメンタルサインの点検
✔ 1on1ミーティングで不満吸収
✔ 外部相談窓口の設置(最重要)
→ 内容は正しくても“言い方”が拡散されて炎上するため、外部相談窓口はほぼ必須装備になりつつあります。
▶外部相談窓口の導入マニュアル|設置から運用・社内周知まで完全ガイド
6.自己診断チェックリスト(簡易版)
□ ため息・無言対応をしていないか
□ 短い否定語を乱発していないか
□ 説明なしの指摘をしていないか
□ 部下の話を遮っていないか
□ 表情・間・距離が怖くなっていないか
□ 外部相談窓口があるか
7.まとめ|“意図がなくてもアウト”は避けられない時代
2026年以降のハラスメント基準は、
「意図」→ 無関係
「影響」→ 最重要 に変わります。
だからこそ、企業に必要なものは、
● 教育
● 言動基準
● 外部相談窓口(安全弁)
の三本柱です。
RESUS社会保険労務士事務所では、管理職研修・若手定着支援・外部相談窓口を一貫して提供しています。
FAQ(よくある質問)
Q1. 声を荒げていなくてもハラスメントになりますか?
→ なります。非言語も含め“受け手の心理的負荷”で判断されます。
Q2. 部下が過敏になりすぎでは?
→ 違います。価値観の変化により、言い方の明確化は企業の義務になりつつあります。
Q3. どこまでが適切な指導ですか?
→ 内容+理由+肯定の3点セットで伝えられれば、ほぼ安全です。
Q4. 研修は効果がありますか?
→ 言い方改善は研修効果が最も出やすい領域です。
Q5. 外部相談窓口で“言い方の問題”も対応できますか?
→ 可能です。むしろ最も多い相談テーマの一つです。
Q6. 指導の録音を取られていても大丈夫ですか?
A. 大丈夫な場合が多いですが、「説明・理由・肯定」が不足すると切り取られて拡散されやすい傾向があります。録音の有無に関わらず、日頃から安全な言い方を徹底することが最も有効な予防策です。
法令注記
※パワハラ該当性は個別事情・言動の頻度・職場環境などを総合的に判断するため、「一度で即パワハラ」と決まるものではありません。本ページは相談傾向・判例傾向を踏まえた“企業リスクとして注意すべきポイント”をまとめたものです。判例は事案ごとの個別判断であり、同一の言動が常に同じ結論になるものではありません。