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【2025年対応版】副業許可すると会社の社会保険料負担が増える仕組みと回避策|中小企業の実務ガイド(社労士監修)

2025/10/04

はじめに|副業解禁が中小企業に突きつける“社会保険リスク”

「副業・兼業を希望する社員が増えているが、社会保険料の負担がどうなるのか不安」
「副業を許可したら会社の保険料負担が増えると聞いたが本当なのか?」

中小企業経営者や人事担当者から、このような相談が急増しています。

副業を認めることは採用・定着に有利ですが、一方で 社会保険料の合算・事務負担・労働時間通算 という法人側のリスクが伴います。

本記事では、 副業が会社の社会保険負担に与える具体的な影響と、実務上の回避策 を社労士が解説します。


副業と社会保険の関係

1. 二以上事業所勤務の仕組み

健康保険法・厚生年金保険法では、複数の会社で厚生年金・社会保険に加入する場合、 標準報酬月額を合算して保険料を算定 するルールがあります。

  • 本業:月額25万円

  • 副業:月額10万円
    → 合算35万円として社会保険料を計算

この場合、各会社はそれぞれの報酬に応じた割合で保険料を負担することになります。

2. 会社の届出義務と事務負担

  • 複数事業所勤務となった場合、 「二以上事業所勤務届」 を日本年金機構に提出する必要があります。

  • 各会社で報酬証明を取りまとめ、保険料を按分して納付。

  • 中小企業では、事務処理が煩雑で誤りや遅延のリスクが高まります。

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社会保険料が増える具体的なケース

  1. 報酬合算による負担増
    標準報酬月額の等級が上がることで、 会社負担分の健康保険料・厚生年金保険料が上昇

  2. 賞与・臨時報酬も合算対象
    本業・副業双方で支給された賞与も合算され、保険料が増加。

  3. 被扶養者認定の取消し
    副業収入が増えることで、配偶者や子どもが扶養から外れるケースも。会社の事務がさらに複雑になります。

※被扶養者認定の取消し補足:

健康保険の被扶養者認定は年収130万円基準(税法上の扶養控除103万円基準とは異なる)で判断されます。副業収入が基準を超えると、配偶者等が扶養から外れ、世帯全体の社会保険料が増加し、会社側の事務負担も複雑化します。


労働時間通算とのダブルリスク

労働基準法第32条では、労働時間は複数勤務でも通算してカウントする解釈があります。

  • 本業:8時間勤務

  • 副業:4時間勤務
    → 合算12時間勤務 → 時間外労働に該当

この場合、本業の会社も「時間外労働の割増賃金」を負担すべきと解釈されるリスクがあり、未払い残業代トラブルの火種となります。


法的根拠と関連条文

  • 健康保険法 第3条、第48条(被保険者資格・標準報酬算定)

  • 厚生年金保険法 第27条、第83条(被保険者資格・報酬按分)

  • 労働基準法 第32条(労働時間管理)

  • 労働契約法 第5条(安全配慮義務)

  • 民法 第623条(競業避止義務の根拠)


法人が取るべき実務対応

1. 「原則禁止+条件付き許可」の就業規則整備

  • 原則は禁止とする。

  • ただし、同業禁止・秘密保持・健康管理・自己責任を条件に例外を認める。

2. 誓約書でリスクを本人に負担させる

  • 税務申告・社会保険・健康管理は本人責任と明記。

  • 会社は労働時間・報酬額の管理に関与しない立場を取る。

3. 定期的な健康診断・勤務態度確認

  • 過労や勤務態度の悪化があれば副業禁止命令を出せるよう規定しておく。

  • 社内アンケートへの設問追加などでリスクや満足度をあぶりだし。

導入事例(解禁した企業のストーリー)

製造業A社(従業員30名・地方中小企業)

背景:地域の賃金水準が低く、従業員から「副業しなければ生活が不安」という声が相次いだ。
対応:原則禁止を維持しつつ、講師活動や地域活動など収入補助になる副業のみを許可。
結果:従業員の収入確保を支援し、離職率が低下。

IT企業B社(従業員50名・首都圏)

背景:採用面接で若手人材から「副業制度はありますか?」と質問が増加。
対応:秘密保持契約を条件に副業を条件付き許可。
結果:「副業容認企業」として採用競争力が向上。

介護事業C社(従業員80名)

背景:若手職員から副業希望がありつつも、経営側は過労を懸念。
対応:副業許可時には健康診断と医師意見を確認する制度を導入。
結果:従業員満足度は向上しつつ、過労リスクをコントロール可能に。


FAQ|副業と社会保険負担に関するよくある質問

Q1. 副業を許可すると必ず会社の社会保険料負担が増えるのですか?
A. 必ずではありません。副業先の報酬が少額の場合は合算対象外となることもあります。ただし一定額(社会保険加入基準を満たす水準)を超えると、標準報酬月額が合算され、結果として会社の負担が増加します。

Q2. 副業を許可した場合、会社は必ず「二以上事業所勤務届」を出さなければなりませんか?
A. はい。従業員が複数の会社で厚生年金・健康保険の加入条件を満たす場合、会社には届出義務があります。届出を怠ると指導・是正の対象となります。

Q3. 副業での労働時間も本業会社が管理しなければならないのですか?
A. 労働基準法第32条では「労働時間は通算される」と解釈されます。しかし、会社が副業先の労働時間を細かく把握・承認してしまうと、通算義務を引き受けたとみなされ、未払い残業代や過労死リスクに直結します。そのため「会社は関与せず自己責任」とする運用が現実的です。

Q4. 副業をすると住民税で会社にバレますか?
A. はい。副業収入は翌年度の住民税額に反映されます。会社は「特別徴収義務者」として住民税を給与から天引きするため、従業員に副業収入があることを把握する可能性が高いです。

Q5. 副業を禁止せずに自由にさせても問題ないのでは?
A. 社会保険・労働時間・税務のリスクを会社が負うことになります。特に中小企業では管理体制が不十分なため、全面自由化は現実的ではありません。条件付きで認め、リスクを本人責任にする誓約書を取得するのが望ましいです。

Q6. 副業先がアルバイトではなくフリーランス契約(業務委託)なら社会保険の問題はありませんか?
A. フリーランス契約の場合、社会保険加入の対象外となるケースが多く、会社の負担が直接増えることはありません。ただし、形式的な「業務委託」であっても実態が労働者性を帯びれば、社会保険加入義務が発生する可能性があるため注意が必要です。

Q7. 従業員が副業で得た所得税や住民税を、会社が代わりに処理する必要はありますか?
A. ありません。副業に係る税務申告は本人の責任です。ただし、会社の顧問税理士などがサポートする仕組みを整えることは可能です。


まとめ|中小企業が取るべき姿勢

  • 全面禁止:リスクは最小だが採用面で不利。

  • 全面許可:採用面で有利だが、社会保険・労働時間リスクを会社が負担。

  • 原則禁止+条件付き許可(推奨):リスクを最小化しつつ柔軟性を確保。

結論:副業制度を導入する際は、必ず 「就業規則+誓約書+リスク説明」 の三点セットで設計し、社会保険リスクを会社が抱え込まない仕組みを作ることが不可欠です。


副業制度をどう設計するかで、会社の社会保険料負担や法的リスクは大きく変わります。迷ったら、まずは無料相談で自社に合った最適な仕組みをご確認ください。

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サービス料金表

項目 内容 料金(税込)
既存副業制度の点検 就業規則・副業規程の点検 16,500円
新規副業制度の作成 就業規則点検+副業リスク説明書+副業誓約書 33,000
就業規則新規作成 就業規則+労働条件通知書+NDA 30,800円
就業規則一式新規作成 ③+パート規則+育児介護休業規定 55,000円

※③は就業規則の基本パッケージ、④はパート規則・育児介護休業規定を含むフルパッケージです。

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【参考】厚労省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」最新版


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