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中小企業のための OJT担当者用 育成ガイド ― 新人指導の「基本と実践」

2025/10/23

はじめに|OJT担当者の戸惑い。こんなお悩みありませんか?

  • 突然「OJT担当」を任されて自分にできるか戸惑っている

  • 自分がされた指導をなぞっているだけで不安

  • ミスを指摘したら落ち込まれた。どう関わるべき?

中小企業の多くでは、OJTは「教え方のプロ」が行うのではなく、現場の先輩社員が引き受けるケースが大半です。
このページでは、中小企業のOJT担当者が、自信を持って新人を育てるための考え方と実践法をまとめました。


OJTとは? 担当者の役割とは?

OJT(On-the-Job Training)は、「実際の業務を通じて後輩を育成する仕組み」です。

単にマニュアルを説明するだけでなく、OJT担当者には以下のような役割が求められます。

役割 内容
1. 実務の伝達者 業務の流れ・注意点を伝え、習得を支援
2. 考え方の翻訳者 「なぜそのやり方なのか?」を新人の目線で説明
3. 行動の手本 立ち居振る舞いや仕事への姿勢を“見せて伝える”
4. 安心の源 新人が困った時に最初に頼る存在として、安心感を与える

教える内容(例)と教え方の基本

分野 教える内容の例 教え方のポイント
出退勤・身だしなみ 打刻、休暇申請、服装規定 「なぜそれが必要か」を背景ごと伝える
電話・来客応対 名乗り方、取り次ぎ、席次など ロールプレイ → 実践 → 振り返りが効果的
報告・連絡・相談(報連相) 誰に/いつ/何を伝えるか 「一つ飛ばさずOJT担当に」が原則。役割の混乱を避けるためにも重要

※ マニュアルやチェックリストを併用し、見る・やる・振り返るの3ステップで定着を促しましょう。


理念・価値観を伝える指導方法とは?

新人にとって最初の指導者が「会社の価値観を体現している存在」になります。
中小企業では、理念や行動指針を“行動に落とし込んで伝える”ことが、育成の質を大きく左右します。

指導シーン 理念とのつなぎ方(声かけ例)
あいさつが小さい時 「君のひと声が、会社の印象を決めるんだ。安心を届ける第一歩だよ」
作業が雑になった時 「細部に気を配るのが“お客様の立場に立つ”ということなんだよ」
困ってる人を見た時 「自分だけじゃなく、チームで動くことが“助け合いの文化”なんだ」

成長段階に応じた関わり方(SL理論)

新人の育成には「相手の状態に応じた接し方」が効果的です。
以下は、SL理論(Situational Leadership)をもとに、育成段階ごとの接し方をまとめたものです。

ステージ 新人の状態 担当者の関わり方
S1:導入期 緊張・受け身・分からないことが多い 手取り足取り、明確に指示
S2:慣れ始め 少し慣れてきたが不安定 できたことを褒めつつ、不安には寄り添う
S3:成長期 自信が出てきたが、ミスも起こりやすい 振り返りを促し、「なぜそうするか」を考えさせる
S4:自走期 自分で判断し動ける 任せる。必要な時に助言する

※ すべての新人がこの流れで育つとは限りません。個人差を見ながら柔軟に対応しましょう。


指導の言葉|叱り方・注意・励ましの例

シーン 避けたい表現 推奨表現(例)
業務ミス 「何やってんの?」 「次はどうすればミスを防げると思う?」
態度が気になる時 「やる気あるの?」 「少し元気がないように見えるけど、何か気になることがある?」
落ち込んでいる時 無視・放置 「誰でも通る道。今日の工夫は良かったよ」
自主性が出てきた時 評価しない 「今の動き、自分で考えた?すごくよかった!」

※ ポイントは、行動に焦点を当てて伝えること。人格や能力を否定しないことが信頼の前提です。


■ よくある質問(FAQ)

Q1. 教えたのに、すぐ忘れてしまいます。どうすれば?
A. 一度で覚えるのは難しいのが普通です。「見せて・やらせて・振り返る」のステップを繰り返しましょう。

Q2. 落ち込んで話しかけにくい時、どう対応すれば?
A. 叱責の後は少し時間を置き、落ち着いたタイミングで「気になってたけど大丈夫?」と声をかけてみてください。

Q3. 上司がOJT担当を飛ばして直接指導するのは問題?
A. 指導の一貫性を保つためにも、OJT担当者を通じて行うのが原則です。混乱を避けるため、役割を明確にしましょう。

Q4. 怒りたくなる時、自分をどう抑えれば?
A. 感情は否定せず、「5秒深呼吸→事実を伝える→解決策を一緒に考える」流れを習慣づけるのが有効です。

Q5. 指導する側も不安です。相談できますか?
A. 指導は一人で抱えるものではありません。上司・人事・OJTミーティングなどを活用し、チームで支えましょう。


最後に|育成は「仕組み」より「関わり方」

OJTは“信頼の土台”をつくる仕事

新入社員は、最初に出会ったOJT担当者の姿勢・言葉・行動で、仕事のイメージが決まります。
育成は「業務を教える」だけでなく、「人を育てる」尊い仕事です。
OJT担当者の皆さまが、無理なく・前向きに・新人とともに成長できることを願っています。

新入社員への教育プログラム・研修などのご要望は当事務所へご用命ください。

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