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中小企業のための評価・フィードバック実践講座|叱る・褒める・伝えるを使い分ける方法

2025/11/04

はじめに|評価とフィードバックは「信頼づくりの場」

評価面談やフィードバックの時間は、単なる「査定」や「指導」ではありません。
それは、上司と部下が信頼関係を築くための対話の時間です。

中小企業では、「伝えたつもり」「分かっているはず」という思い込みが離職やモチベーション低下を招くことがあります。
評価の目的は「点数をつけること」ではなく、「成長を促すこと」です。
本講座では、上司が現場で実践できる「伝え方の原則」と「行動フィードバック法」を紹介します。


第1章|中小企業に多い評価・面談の課題

  • 面談が形式的になっており、やる気が高まらない

  • 評価理由をうまく説明できない

  • 部下の反発・沈黙が怖くて踏み込めない

  • 「叱る」と「パワハラ」の境界が曖昧

評価・面談が機能しない最大の原因は、上司が「伝え方」を学んでいないことにあります。
正しいフィードバックの技術を持てば、社員は納得し、行動が変わります。
面談は「評価する場」から「育てる場」に変わるのです。


第2章|評価の本質を理解する:3つの目的

1. 「過去」を評価するだけでなく、「未来」を描く

評価とは、過去の点検ではなく未来への助走。
「何ができなかったか」よりも「これからどう成長するか」を一緒に考える時間にしましょう。

2. 公平よりも「納得感」を重視する

人は“結果”よりも“理由”に納得すると受け入れます。
同じ評価でも、説明の丁寧さがモチベーションを大きく左右します。

3. 「伝える」ではなく「理解してもらう」

フィードバックは一方的な通告ではなく、双方向の対話です。
「あなたはどう感じましたか?」と、相手の言葉を引き出す姿勢が信頼を生みます。


第3章|フィードバックの実践法:DESC法とSBIモデル

DESC法とは、主にアサーティブ・コミュニケーション(自他尊重の伝え方)で用いられる手法で、感情を整理して建設的に伝えることができます。評価やフィードバックの場面でもこのDESC法を活用することで、感情的にならずに冷静かつ建設的な伝え方ができます。

1. DESC法(感情を整理して伝える)

  • D:Describe(状況を具体的に述べる)
     例:「先日のミーティングで、発表の途中で声が小さくなっていましたね。」

  • E:Express(自分の感情を伝える)
     例:「せっかく良い提案なのに、もったいないと感じました。」

  • S:Specify(望ましい行動を提案する)
     例:「次回はもう少し自信を持って話してみましょう。」

  • C:Consequences(結果を共有する)
     例:「そうすれば、もっと説得力が増します。」

この手法は、「指導」ではなく「応援」に聞こえるのが特徴です。


2. SBIモデル(行動に焦点を当てる)

  • S:Situation(状況)

  • B:Behavior(行動)

  • I:Impact(影響)

例:「昨日のクレーム対応(S)で、お客様の話を遮らずに最後まで聞いていましたね(B)。その姿勢が、相手の信頼につながっていました(I)。」

このように、「行動」と「影響」をセットで伝えると、部下は何を続けるべきか明確に理解できます。


第4章|叱る・褒める・伝えるのバランスを整える

「叱る・褒める・伝える」をバランスよく使い分けることが、信頼を壊さずに行動を変えるコツです。

目的 有効な言葉例 注意点
叱る(是正) 「○○の点は改善が必要です。次回はどうすればよいと思いますか?」 感情的にならない/相手の意見を聞く
褒める(承認) 「前回よりも早く対応できていましたね」 過度な称賛は逆効果。具体的に褒める
伝える(共有) 「この方針の背景にはこういう意図があります」 命令口調ではなく“説明+対話”で伝える

上司がこれらを意識的に使い分けることで、フィードバックは「恐れられる時間」から「成長の時間」に変わります。


第5章|面談で使える質問例:考えを引き出す問い

  • 「今回うまくいった要因は何だと思いますか?」

  • 「やりづらかった点はどこでしたか?」

  • 「次に同じ場面があったら、どう改善しますか?」

  • 「この仕事で一番嬉しかった瞬間は?」

質問の目的は、反省ではなく気づきを促すこと。
一方的に伝えるよりも、相手の“自己評価”を引き出す方が行動変容が早まります。


第6章|評価結果を伝えるときの注意点

「今回はこの目標を達成できましたね。次はどんな力を伸ばしていきたいですか?」
こうした言葉が、社員の定着率を高めます。

評価結果を伝える際は、「結果」だけでなく、「理由」「期待」「支援策」を添えて説明することが大切です。
面談後は必ず評価シートで記録を残し、本人と内容を共有しましょう。
フィードバックはその場限りではなく、次回につながる約束で締めくくることが理想です。


まとめ|評価は“管理”ではなく“育成”

評価フィードバックとは、過去の結果を裁く行為ではなく、未来の行動を引き出すための「対話」です。
誠実に伝え、相手の成長を信じて向き合う姿勢こそが、中小企業の人材育成力を高める最大の要素です。


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