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中小企業のための定着率向上・エンゲージメント実践講座|辞めない職場をつくる方法

2025/11/04

はじめに|「採用した人が辞めない職場」をどうつくるか

人を採用しても、すぐに辞めてしまう。
これは中小企業が最も苦しむ“慢性的な経営リスク”です。

採用・教育・評価を整えても、職場の「安心感」「信頼感」が欠けていると人は定着しません。
離職防止とエンゲージメント向上の鍵は、“制度”ではなく“関係性”です。

本講座では、中小企業が実践できる「定着率を高める仕組み」と「日常の関わり方」を解説します。


第1章|人が辞める3つの理由と「本音の離職要因」

1. 仕事内容・成長の実感がない

→ 「何のために働いているのか」が見えない状態。
上司が“方向づけ”をしないと、やる気が長続きしません。

2. 人間関係・心理的安全性の欠如

→ 「ミスを報告できない」「相談できない」「雑な扱いを受ける」。
こうした小さな不安が積み重なって離職につながります。

3. 評価・報酬の不透明さ

→ 納得できない評価や昇給ルールの曖昧さは、信頼を損なう原因です。

【ポイント】給与より人間関係、制度より上司
人が辞めるかどうかは、上司との信頼関係が8割を占めると言われています。


第2章|エンゲージメントを高める3つの要素

  1. 心理的安全性
     自分の意見や失敗を安心して話せる環境。
     → 「間違いを責めない」「否定よりも質問」を意識。

  2. 成長実感
     自分が少しずつでも成長していると感じること。
     → 目標設定とフィードバックのセット運用が有効。

  3. 貢献実感
     自分の仕事が誰かの役に立っていると実感できること。
     → 日常的に「ありがとう」「助かった」が飛び交う職場文化をつくる。


第3章|離職率を下げる具体的アプローチ

1. 定着KPIを「見える化」する

  • 平均勤続年数

  • 半年・1年後の在職率

  • 退職理由の分類(人間関係/給与/業務負荷/成長機会)
    → 定量的に「何が原因で辞めているか」を可視化。

2. 1on1・定期面談の仕組み化

  • 面談の目的は「問題解決」ではなく「信頼構築」。

  • 聞く7割・話す3割を意識。

  • 面談記録を残して“聞きっぱなし”にしない。

3. 小さな成功体験を共有する文化づくり

  • 朝礼やチャットで「ありがとう共有」

  • 成功した事例をチームで称賛

  • 「上司→部下」だけでなく「部下→上司」への感謝も促進

面談・KPI・称賛の3つを定期運用することで、離職率は確実に下がります。


第4章|上司が意識すべき“3つの会話法”

会話法 目的 例文
承認会話 行動を認めて安心感を与える 「あの対応、よく気づいてくれたね」
共感会話 感情を受け止める 「そう感じたのは当然だよ」
方向づけ会話 次への行動を明確にする 「次はこうしてみようか」

ポイント:
叱る・褒めるだけでは不十分。「聞く・認める・方向づける」を意識すると、関係性の質が変わります。


第5章|エンゲージメントを高める職場の仕組み

  • 定例1on1の時間を固定化(月1回でもOK)

  • 新人・中堅・管理職で対話テーマを分ける

  • 社内サンクスカード・メッセージ制度の導入

  • アンケートで「今の気持ち」を可視化
     → 「不満が出る前に察知する」仕組みを。

小さな工夫の積み重ねが、社員の“働きがい”を支える土台になります。


第6章|定着率向上のためのデータ活用

定着率は、採用効果や職場環境の健全性を測る最も基本的な指標です。

1. 定着率の算出方法(基本式)

定着率 = (1年後在籍者数 ÷ 1年前入社者数)×100

2. データ活用のステップ

  1. Excelで入退社一覧を作成

  2. 半年・1年単位で在職率を自動計算

  3. 離職理由を4分類(人・金・業務・環境)で色分け

これにより、「感覚」ではなく「数字で見る人材定着」が可能になります。


まとめ|“辞めない職場”は「対話」でつくられる

中小企業の定着率向上・エンゲージメント強化とは、「引き留め」ではなく「関係づくり」です。
日々のコミュニケーションを大切にし、社員が安心して働ける職場を実現することが、企業の競争力そのものになります。


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