NEWS

中小企業のためのOJT・人材育成実践講座|属人化しない育てる仕組みと教える力・待つ力

2025/11/04

はじめに|「教える人がいない」が組織の成長を止める

中小企業の多くが抱える課題――
「新人を採用しても、育てる人がいない」「結局、忙しい人にしわ寄せがいく」。

OJT(On the Job Training)は本来、“現場で育てる仕組み”ですが、多くの企業では「教える人のセンス」に頼りすぎています。

中小企業が人材を定着・成長させるためには、OJTを“属人化”させず、仕組みとして回すことが不可欠です。

本講座では、OJTを“属人化させない”ための仕組みと、現場リーダーが身につけるべき「教える力・待つ力・伝える力」を解説します。


第1章|OJTがうまくいかない3つの理由

  1. 教える人が忙しすぎる
     → 教育が「後回し」になり、放置や丸投げが発生。

  2. 目的とゴールが共有されていない
     → 「いつまでに、何ができるようになるか」が曖昧。

  3. 評価やフォローの仕組みがない
     → 教えて終わり。定着・習熟度の確認が行われていない。

【ポイント】
OJTは“指導者の才能”ではなく、“仕組み”でまわすもの。
属人化を防ぐには、「設計」と「見える化」が鍵です。


第2章|OJT設計の基本ステップ(OJTシート活用)

ステップ1:到達目標を決める

「3か月後にこの業務を一人で回せるように」など、ゴールを明確化。

ステップ2:業務を分解する

→ 業務を「手順」「判断」「報告」の3要素に分けて教える。
 - 手順:やり方
 - 判断:なぜそうするのか
 - 報告:どのタイミングで伝えるか

ステップ3:担当と期限を決める

→ 指導者・確認者・期限を明確化し、OJT進捗表で共有。

ステップ4:週1レビューで進捗確認

→ 「教えた/できた/確認済」をチェック欄で記録。この“週1レビュー”こそが、OJTが続くかどうかを決める最重要ポイントです。


第3章|教える力・待つ力・伝える力のバランス

力の種類 目的 具体的な行動例
教える力 業務手順を明確に伝える 「まずやって見せる」「根拠を説明する」
待つ力 成長の余白を与える 「失敗をすぐにフォローせず、自分で考えさせる」
伝える力 気づきを促す・方向を示す 「なぜそう思った?」「次はどうする?」と問いかける

ポイント:
「全部教える」より「考える力を引き出す」。
OJTは“正解を伝える場”ではなく、“考える場”に変えることで人が育ちます。


第4章|OJT担当者が意識すべき3つの会話法

  1. 観察→確認→指導の順で話す
     → いきなり指摘せず、事実を確認してからアドバイス。

  2. フィードフォワードを使う
     → 「次はこうしてみよう」など、未来志向の伝え方をする。

  3. “できている点”から伝える
     → 先に良い点を認めてから改善点を話すと、受け入れやすい。

「観察→確認→指導」の順序は、ハラスメント防止・心理的安全性の観点からも有効です。


第5章|OJTの見える化とチーム共有

  • OJT進捗シートを全員で共有(Excelまたはクラウド)

  • 「教える側・教わる側・上司」が同じ情報を見られる状態に

  • 教育完了を“報告文化”にする(Slack・チャット・日報で共有)

→ 教育を“個人の努力”から“チームの仕組み”へ。“見える教育”が定着すると、育成は個人の努力から組織文化へと変わります。


第6章|OJTフォローと育成評価の連動

OJT成果を評価制度に反映させることで、“教える文化”が企業に根づきます。

  1. OJT完了チェックリストの導入
     → 教育の到達レベルを見える化。

  2. 評価面談での振り返り項目に反映
     → OJTで得たスキル・改善点を次の評価へ連動。

  3. 育成スコア(指導力・進捗率)を数値化
     → 育成も“評価対象”とすることで、教える側の意欲も高まります。


まとめ|“育つ人材”は“育てる仕組み”がつくる

中小企業のOJT・人材育成は、属人化を防ぐ“仕組み化”が鍵です。
「誰が教えても一定の成果が出る」仕組みを整えることで、育成力と定着力の両方が高まります。
OJTとは、“人を育てる責任”を仕組み化すること。


関連ページ

OJT設計や教育仕組みづくりをさらに実践したい方は、以下のページもご覧ください。

【第4回】中小企業のための定着率向上・エンゲージメント実践講座|辞めない職場をつくる方法
▶新人教育・OJT進捗管理テンプレート(Excel版)
管理職OJT研修プログラム|現場で育てるリーダーをつくる