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【2025年版】海外のペット同伴出勤・ペットフレンドリー制度の実態― Googleのドッグランは本当?米・欧・豪の労務管理トレンドを専門家が解説 ―
2025/11/07

海外では「Pet-friendly Workplace(ペットフレンドリーな職場)」が急速に普及し、日本でも導入を検討する企業が増えています。本ページでは、アメリカ・イギリス・オーストラリアを中心に、ペット同伴勤務の制度設計・労務管理・海外企業の運用実態を整理し、2025年時点で企業が押さえるべき要点を専門家として解説します。(監修:RESUS社会保険労務士事務所/社会保険労務士 山田雅人)
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1.はじめに|海外で“Pet-friendly Workplace”が広がる理由
アメリカやイギリスを中心に、ペット同伴勤務は一部業界だけの特別な制度ではなく、「企業文化」として浸透しつつあります。
背景には次の要因があります。
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ペットの家族化(Pet as Family)の定着
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従業員の精神的健康(ウェルビーイング)への関心の高まり
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若年層の価値観の変化(“ペットを中心とした生活”の一般化)
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採用競争の激化により、福利厚生の多様化が必要に
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コロナ以降、在宅勤務でペット依存度が高まったことによる職場復帰の課題
このような背景から、海外では「ペット=生活の一部であり、職場対応が必要」という認識が広がっています。
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2.国別のペット同伴出勤の状況(米・欧・豪)
【アメリカ】世界で最も先進的。Googleは犬が歩く“ドッグフレンドリーオフィス(dog-friendly office)”の代表
米国ではペット同伴は広く浸透しています。
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Google
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Amazon
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Airbnb
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Ben & Jerry’s
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Clif Bar
など大手企業が dog-friendly office を導入。
Google本社(Googleplex)には、犬が歩き回れる専用エリアやドッグランが存在すると複数の現地社員インタビュー記事・公式ブログで紹介されています。
【特徴】
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Pet Policy(ペットポリシー)の明文化がほぼ必須
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アレルギー配慮、噛傷事故の責任区分、許可制など厳格
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犬同伴を福利厚生の一部として位置づける企業が多い
【イギリス】急速に拡大し“新しい職場文化”に
英国でも dog-friendly office が普及しています。
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英国従業員の52%が「職場に犬を連れて行きたい」と回答
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ペット関連産業の大手(Mars、Pets at Home など)が積極導入
【特徴】
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Calm Room(犬のための静音室)など専用設備がある企業も
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在宅勤務と同伴勤務を柔軟に組み合わせる文化
【オーストラリア】IT・クリエイティブ産業で一般化
オーストラリアは働き方の自由度が高く、ペット関連福利厚生も広がっています。
【特徴】
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Pet Day(ペット特別休暇)の導入企業も
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小〜中規模のIT企業を中心に制度化が進む
【カナダ】福利厚生として“ペット保険”を提供する会社も
カナダでは、ペット保険を企業福利厚生に含む例もあります。
【特徴】
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オフィスに Pet Zone(ペット専用エリア)を設置
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ウェルビーイング(心の健康)施策として活用
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3.海外に共通する「Pet Policy(ペットポリシー)」とは?
海外企業は、ペット同伴制度を導入する際、必ずと言っていいほど「Pet Policy(ペットポリシー)」を作成します。
【Pet Policyに含まれる主な項目】
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同伴できる動物の種類(犬のみ/猫可/小動物可)
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ワクチン証明書・健康証明書の提出
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ノミ・ダニ駆除の義務
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攻撃性・吠え癖の確認
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アレルギー配慮・立入禁止エリア
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飼い主の責任範囲(噛傷事故・破損時の費用負担)
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同伴可能時間・頭数制限
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ルール違反時の許可取り消し
海外のPet Policyは非常に体系的で、日本でもそのまま参考にできる内容が多いのが特徴です。
▶日本版Pet Policy(ペット同伴出勤)ガイドライン・誓約書・就業規則ひな形
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4.学術研究が示す「ペット同伴勤務の効果」
欧米では大学・研究機関が「犬を職場に連れて行くことの効果」を調査しており、以下のような研究成果が報告されています。
【主な研究結果】
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✅ ストレス軽減効果
犬同伴で働く人は、非同伴者よりストレス値が低いとの調査結果。 -
✅ コミュニケーションの活性化
職場の心理的安全性が向上したという研究報告。 -
✅ 創造性・生産性の向上
犬との触れ合いにより、脳の休息→柔軟な発想につながるとされる。 -
✅ 離職率の低減
ペット同伴制度を導入した企業は従業員満足度(Employee Engagement)が向上。
“ペット=福利厚生”ではなく、“ペット=組織文化の要素”として扱われている点が特徴です。
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5.海外と日本の制度比較(一覧表)
| 項目 | アメリカ | イギリス | オーストラリア | 日本 |
|---|---|---|---|---|
| ペット同伴出勤 | 普及 | 拡大中 | 盛ん | 少数 |
| ドッグランの有無 | Google含め一部企業に存在 | 有り | 有り | ほぼ無し |
| Pet Policy | 明文化が必須 | 普及 | 普及 | ほぼ未整備 |
| アレルギー対策 | 書面化が基本 | 進んでいる | 進んでいる | 個別対応が多い |
| ペット保険の福利厚生 | 多い | 一部 | 一部 | ごく一部 |
| 社会的理解 | 非常に高い | 高い | 高い | 上昇中 |
日本の課題は「ペット飼育可のオフィス物件がほぼ存在しない」「制度が曖昧で、ルール整備が遅れている」「税・社会保険制度上の判断は個別解釈に依存」な点であり、ここに実施を躊躇する理由がありそうです。
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【FAQ】海外のペット同伴出勤・ペットフレンドリー制度について
Q1.Google本社にドッグランは本当にあるのですか?
A.「ドッグラン」という正式名称があるわけではありませんが、Googleplex(米国本社)には犬と過ごせる屋外スペースや、犬が自由に歩き回れるエリアについて、現地社員のインタビュー・公式ブログ等で複数の紹介があります。Google社はドッグフレンドリーカンパニーの代表例とされています。
Q2.アメリカの企業は本当に犬を連れて働いているのですか?
A.本当です。Google、Amazon、Airbnb、Ben & Jerry’s など多くの大手企業が 「ドッグフレンドリーオフィス制度」を導入しています。制度運用には「ペットポリシー(Pet Policy)」が必ず存在します。
Q3.海外ではペット同伴出勤は一般的なのですか?
A.アメリカは特に普及しており、イギリス・オーストラリアでも制度導入が加速しています。日本はまだ少数ですが、海外の流れからすると2〜5年以内に普及すると見られています。
Q4.海外企業は猫もオフィスに連れてくるのですか?
A.企業によって異なります。犬のみ可とする企業が多いですが、ペットポリシーにより猫・ウサギなど小動物を認めるケースも存在します。
Q5.アレルギーへの配慮はどうしているのですか?
A.海外では「アレルギー配慮」が制度の基本項目として明文化されます。
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アレルギー申告
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立入禁止エリア
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空調・換気ルール
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飼い主側の衛生義務
などがペットポリシーに細かく規定されています。
Q6.ペット関連のトラブル(吠える・噛む)が起きた場合は?
A.海外の多くの企業は「許可取消基準」を明確に定めています。問題行動があれば、同伴停止・禁止が行われます。
Q7.ペット保険を福利厚生にしている会社があるのは本当ですか?
A.はい。特にアメリカ・カナダでは一般的で、福利厚生の選択メニューに「Pet Insurance(ペット保険)」が含まれている企業もあります。
Q8.日本企業がペット同伴制度を作るときに参考になる部分は?
A.最も参考になるのは海外の「Pet Policy(ペットポリシー)」です。動物の種類、健康証明、アレルギー配慮、責任区分、許可制…など、制度を運用するための実務が体系化されています。
Q9.海外ではペット同伴勤務に法的なルールはありますか?
A.多くの国では法律ではなく「企業ポリシー」で運用されています。一方で、噛傷事故の賠償責任や安全衛生の考え方は各国の一般法に従うため、文書化が極めて重要とされています。
Q10.海外のように日本でもペット同伴出勤は普及しますか?
A.専門家としての見立てでは、普及する可能性は高いです。採用難・価値観の多様化・ウェルビーイング重視の流れを踏まえると、日本は海外の2〜5年遅れで同じ方向へ進むと考えられます。
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6.まとめ|「海外の今」は日本の2〜5年後に必ず来る
海外の流れははっきりしています。
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ペットは“家族”として扱われる
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職場に連れて行ける制度が一般化
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人事労務が制度設計の担い手
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企業は採用力のために導入
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ポリシーの文書化が必須
日本でも「働き方の多様化」「採用競争の激化」を背景に、ペット×労務管理は次に普及するトレンド と考えられます。
【免責事項】
本ページの内容は、当事務所が公開情報・海外企業の公式ブログ・現地インタビュー記事・研究論文などを基に独自に整理したものであり、各国の制度・企業ポリシーの正確性・最新性を保証するものではありません。ペット同伴勤務・ペット関連の制度は企業や地域ごとに大きく異なり、各社が公表している情報も随時更新されるため、実務での導入を検討される場合は、最新の公式情報・専門家(社労士/弁護士)への確認を推奨します。
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