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【2026年対応版】障害者雇用の“合理的配慮と実務ライン”完全ガイド|現場の負担を増やさず安心して働ける環境づくり

2025/12/04

(監修:RESUS社会保険労務士事務所/社会保険労務士 山田雅人)

はじめに|合理的配慮は“なんでも対応すること”ではない

障害者雇用における合理的配慮は、「可能な限り本人に合わせてあげること」ではなく、障害者雇用促進法および厚生労働省指針を解釈すると、『企業・本人・職場の三者が無理なく働ける“落としどころを調整すること”』であると読み解くことができます。

しかし実務の現場では次のような悩みが多く寄せられています。

・どこまで配慮するべきか線引きに迷う
・本人の希望は理解できるが、業務が回らない
・断ると差別と思われないか不安
・配慮が増えすぎて他社員の不満が強まっている

本ガイドでは2026年以降の企業実務に役立つよう、合理的配慮の考え方・判断軸・断り方・調整の進め方を、法令面・実務面・コンプライアンス問題を専門家がわかりやすく解説します。


合理的配慮の“基本原則”(誤解されやすいポイント)

合理的配慮は「本人の希望をすべて受け入れる制度」ではありません。厚生労働省の指針では、次の原則が示されています。

① 過重な負担にならない範囲で実施する

・人員・費用・業務量・組織規模とのバランスを鑑みる
・業務が回らなくなる水準の配慮は求められない

② 本人の希望・企業側の状況・職場全体を踏まえて決定する

・一方的決定ではなく“調整と合意”が重要
・職場全体の公正性も考慮する

③ 拒否ではなく「代替案・段階案」で対話する

「できません」ではなく「その目的を満たす別のやり方・段階的な実施」を一緒に探す姿勢が大切です。

これら指針の内容を読み解くと何ら特別なことではなく、通常の組織運営の考え方と変わらない『一般的なマネジメント』を行うことが原則的に示されているだけであることがわかります。


“できる配慮/難しい配慮”の判断軸

配慮の種類ではなく、影響範囲で整理すると線引きが明確になります。

実施しやすい配慮の例

・複数の指示が混ざると混乱しやすい → 指示の順番を明確化
・急な予定変更が負担になる → 事前の予告・スケジュール共有
・作業手順が頭で整理しにくい → マニュアル・写真付き手順表
・感情が高ぶると伝えづらい → チャット・メモでも相談できる環境

工数を増やすのではなく、業務の明確化に寄与する配慮は双方にメリットがある

※変化に強い組織づくりが重要な時代だからこそ、事前共有・段階的な変更は本人だけでなく組織全体の安心につながります。

慎重に検討すべき配慮の例

(業務継続性・公平性・安全性に影響するポイント)

・担当業務を大幅に削減し他社員に肩代わりさせ続ける
・本人の希望で特定の社員だけが常にフォローし続ける
・繁忙期を完全免除(人手不足の元凶化)
・注意指導・評価の一切を控える

対応できない=差別 ではない

第三者が見て合理的な説明が文書的に可能かどうか、を軸に検討するとトラブルに発展しにくいです。 「代替案・段階案があるか」で考えると安全です。


対応を判断するときの4ステップ(実務の型)

合理的配慮は感覚論や『一般常識』ではなく、プロセスで判断すると安全です。これらは科学的な組織運営の管理手法としても効果的で職場マネジメントとしても重要な考え方です。

① 本人の困りごとと希望を整理
② 業務・職場の状況・公平性を踏まえて選択肢を検討
③ 適切な範囲の配慮と代替案を提示
④ 合意内容を記録・定期的に見直す

「調整の軌跡」を残すことで、不公平感・トラブル・誤解を防ぎやすい

同一労働同一賃金や労契法上の不利益変更に抵触しない重要なステップであり、応用ではなく組織運営の基礎的なプロセスです。


職場で起きやすい“典型的な迷いポイント”と実務対応

ケース① 希望を聞くほど配慮が増えてしまう

・希望をすべて叶えようとする

→ 配慮が拡大 → 職場の負担増 → 不満蓄積 → 関係悪化 → ⚠

❶ 満たしたい目的・満たすべき要望
❷ 譲れない条件・譲ってはいけない条件(業務継続性・公平性・安全性・コスト)

を両立する方法を“共に探す”のが安全です。

ケース② 配慮を減らすべきタイミングがわからない

本人が慣れてきたのに、配慮内容だけが初期のまま固定されているケース。

→「できることが増えた」ことを面談で共有し、
→ ステップアップを“押しつけにならない形”で合意して進めます。

ケース③ 他社員の不満が強まる

本人だけが特別扱いされていると見えてしまうケース。

→共有しすぎず、しかし不透明にもしない
→「公正性・安全性を守る調整を行っている」と伝えられる環境づくりが重要

経営者の独りよがり、甘やかしの独断になっていないか、社内アンケートによる定点観測も有効

▶従業員アンケート・社員意識調査のやり方|質問例・注意点・導入のコツ


応じられない配慮の伝え方(断り方の安全な文例)

✖「それはできません」
◎「難しいので目的を満たす別の方法を一緒に考えさせてください」

✖「業務上無理です」
◎「業務を維持するため〇〇の条件は守りたいので、そのうえでできる範囲を探しましょう」

✖「みんなの迷惑になります」
◎「公平性と負担の偏りが出ない仕組みを大切にしたいので、その点も含めて調整させてください」

拒否ではなく“目的を保った別案”の提示が鍵


調整が難しい場合の選択肢

・人事・産業保健・上司を含めた三者面談
・第三者(外部相談窓口・相談員・社労士)を交えて調整を進める
・記録をもとに評価制度・配置・役割配分を見直す

“職場だけ”で抱え続けると長期化・不満・問題悪化の原因となりやすい。必要に応じて外部第三者の公平な視点で運用を点検している企業は定着率が高い傾向があります。


まとめ|合理的配慮は“双方が働き続けられる仕組みづくり”

合理的配慮は本人に合わせることでも、企業が我慢することでもなく、本人・企業・職場の三者が安心して働けるラインを調整する取り組みです。これらは障害者の雇用に限らず、全ての組織運営に求められる組織マネジメントの基本的な考え方とも一致します。

・働きやすさ
・公平性
・業務継続性

この3つが揃うと、組織全体として離職防止につながり、個人の戦力化の両立にもつながります。


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