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【2026年対応版】テレワーク組織の“心理的安全性とコミュニケーションのルール”実務ガイド

2025/12/08

デジタルでつながる人間関係の職場で離職・不満・衝突を防ぐ仕組みづくり(監修:RESUS社会保険労務士事務所/社会保険労務士 山田雅人)


1.はじめに|テレワーク時代の組織では「人間関係が見えなくなる」ことが最大リスク

リモートワーク・ハイブリッドワークが定着し、多くの企業で次のような声が聞かれます。

・チャットやメールの文面が冷たく感じられる
・対面機会が少なく、相談や雑談のきっかけを作れない
・仕事の依頼や指摘が文面でキツく受け取られ、関係悪化につながる
・オンライン勤務で若手育成が進まず、孤立・離職が起きやすい

特に技術・開発・制作・クリエイティブ職種では、

・自己完結型の働き方(業務領域が明確)
・業務中心の文化(業務完遂が最優先)
・言語化より作業を優先する傾向(コミュニケーションより仕事)
・弱み・不満・困りごとを表現しづらい(物理的に一人で仕事をすることが多い)

といった特性から、悩みや違和感が表に出るまでに時間がかかり、問題が表出した時には退職や衝突寸前になっているケースが多く見られます。待遇も悪くなく、人間関係のトラブルも聞かないのに、なぜか離職率が高い場合も、こういった人間関係の悩みによる可能性があります。

こうした問題に対して、近年注目されているのが『デジタルオフィス(仮想オフィス)の心理的安全性とコミュニケーションのルールづくり』です。


2.よくある誤解(ここがずれると機能しない)

心理的安全性は誤解されることが多く、次の認識は正しくありません。

誤)注意しない・指摘しない環境づくり

誤)仲良くなることで仕事が回る

誤)仕事大好き人間が集まっているので仕事があれば問題ない

誤)懇親会・雑談を増やせば改善する

実際にはテレワーク型やデジタルオフィスでも考え方は同じでなければなりません。

◎ 課題や意見を言いやすい

◎ 意見の対立が許容される

◎ ミスや弱みを共有しても排斥・評価リスクがない

◎ 上司や組織が訓練されており指摘やフィードバックが標準化されている

この 「安心して業務の本質について議論できる状態」こそが心理的安全性の意味するところです。


3.テレワークで摩擦が生まれる“構造的な理由”

テレワーク・ハイブリッド勤務では、次の3つの力が働きやすくなります。

(1)文字コミュニケーションによる誤読

句読点・語尾・短文・敬語の強さなどが感情のニュアンスとして過剰に解釈されやすい。

(2)依頼の粒度不足

目的・期限・優先度・背景情報が不足すると、受け手の解釈に委ねられ、歪みが生まれる。

(3)相談ハードルの上昇

オフィスでは気軽に声をかけられる内容でも、リモートになると「仕事の邪魔はできない」「今聞いて良いのか」「迷惑ではないか」と悩みを抱え込む傾向が強い。

特に、技術・制作・開発系の職種では【不安を抱えたまま作業優先 → 不満蓄積 → 急な離職・衝突】となりやすいことが特徴です。


4.実務で必要な「最低限の仕組み」4点

現場のトラブルを減らすために、次の4つの仕組みがあるだけで改善が進みます。

① 発注・依頼・レビューの“統一テンプレ”

例:
・依頼目的
・成果物の定義
・優先度(高/中/低)
・期限/中間報告の要否
・評価ポイント(何ができていればOKか)

② チャット・メールの扱いルール

・深夜・休日のメッセージ
・既読スピードの期待値
・短文/長文/スタンプ/いいねボタンの使い分け
・「怒っている」「冷たい」と受け取られやすい表現の注意点
・緊急連絡チャネルの明確化

③ オンライン1on1のフォーマット

・業務進捗だけでなく「温度感」を扱う質問項目
・業務外の話題を扱うタイミング
・改善点の伝え方の型(事実 → 影響 → 行動)

④ 雑談・レビューの再設計

自然発生に頼っていた雑談・称賛・フィードバックは、リモート環境では制度化して初めて機能します。「会議」だと発言力の強い「上から下」への伝達だけになりがちなため、

✅上司は一定時間発言しない
✅タイマーによる発言時間の均等化
✅批判のみは禁止し、必ず代替案・提案とセットで話す
✅事前課題として回答案を複数(例えば3つ)用意してもらう

といった「ミーティングルールづくり」の設計が必要です。


5.社内窓口だけでは不十分|外部相談窓口の併用が有効な理由

「相談が出てこない」「限界になってから退職を申し出る」「離職率の高い理由がわからない」この動きがテレワークでは顕著です。

特に次のような傾向が見られます。

・相談=評価が下がると思ってしまう
・困りごとを共有する文化が希薄
・チャットで悩みを報告する心理的ハードルが高い
・そもそも“誰に言えばいいか”分からない

外部相談窓口は感情的ケアではなく「早期発見のインフラ」として機能します。社内の1on1や管理職のフォローと併用することで、

・問題が小さいうちに改善に着手できる
・離職・衝突・モチベーション低下を予防する
・現場の「声」から組織改善のヒントが得られる

というメリットにつながります。特に物理的に一人で仕事をすることが多いテレワーク等では、会社側から「フォロー体制を整備しているよ。一人じゃないよ」というメッセージを発信すること自体が、安心感の醸成につながります。


6.導入の流れ(最短で現場が変わる実装モデル)

1)通知(周知文テンプレで心理的障壁を下げる)
2)依頼テンプレ・チャットガイドラインの運用開始
3)オンライン1on1の型を導入
4)外部相談窓口の併設
5)改善提案・研修・制度運用見直し

制度だけでなく使えるツール・文例・テンプレを共有することが、現場に違和感なく浸透させるための重要なポイントです。


7.チェックリスト|自社の状態を確認する

次のうち3つ以上当てはまる場合、離職・衝突リスクが高い傾向があります。

□チャット上で誤解や口論が生まれたことがある
□相談や雑談の場が自然発生に依存している(個人任せ)
□指示や依頼の粒度に個人差が大きい(上司による)
□オンライン1on1の実施率が低い
□若手育成やオンボーディング制度が無い
□退職理由が「不明」な離職者が多い(辞めた理由がよくわからない)
□現場の本音や不満が見えにくい(相談が上がってこない)
□社内窓口を設けているが利用率が低い

社内アンケートで社内課題を可視化する

テレワーク型組織では問題が表面化せず、またスタッフの心理面や「個人的な意見」が組織に集まらないため、組織改善が経営者の独善になりがちな傾向もあります。社内での匿名アンケートを実施することで、「日頃は言えないこと」が把握できることがあります。

【アンケート設問例(5段階評価と口述)】

・社内の業務連絡はやりやすいですか?

・相談やフィードバックをの受け取りやすい環境だと感じますか?

・チャットは利用しやすいですか?負荷となっていませんか?

・上司と直接1on1の機会を与えられていると思いますか?

・今後困ったときや悩みを打ち明ける相手は社内にいますか?

・人間関係で離職を考えたことがありますか?

・外部窓口の設置や研修を実施してほしいと思いますか?

アンケートの目的は「不満を洗い出す」ことではなく、改善すべきポイントを早期に把握し、組織づくりに反映することです。

▶社内アンケート実施でよくある失敗とリスク回避法|匿名性・バイアス・やりっぱなし防止

▶ESアンケートの実務活用マニュアル|メリット・デメリットと導入のコツ(社労士監修)

▶職場のハラスメント調査・社内アンケート代行|社労士監修でES・社員意識調査を支援


8.よくある失敗例

✖ 制度を整えただけで運用を点検していない
✖ 形式的に1on1を行い、内省や改善につながらない
✖ 社内窓口だけで解決できると誤解する(中立性の不存在)
✖ 関係悪化後に研修を実施し「後手後手」でいつも手遅れ
✖ 改善の優先順位が不明確で場当たり的な対応になる


9.FAQ

Q.完全リモートでも導入できますか?
A.可能です。むしろオフィス集合の機会が少ない組織ほど外部窓口が機能します。アンケート実施・ルールテンプレ作成・外部相談窓口の3点セットで定着率の改善が期待できます。

Q.相談が殺到してしまうことはありますか?
A.設置初期はやや増える傾向にありますが、改善策が打ちやすくなるためむしろ早期沈静化につながります。また一年に一回窓口設置の再案内するなどすれば効果的です。

Q.研修だけでも効果は出ますか?
A.一時的な効果はありますが、制度・ツール・相談の導線と組み合わせることで再現性が高まります。

Q.専門職同士なので、人間関係はある程度我慢すべきでは?
A.我慢させることで成長する考え方もありますが、人間関係の悩みは離職だけでなく、ハラスメントトラブルなどに発展した場合、組織全体の問題として大きなリスクになるおそれがあります。早期に相談や改善のルートを用意しておくほうが、結果的に組織と本人の双方にとってプラスになります。


10.サポートのご案内

RESUS社会保険労務士事務所では、テレワーク/ハイブリッド組織向けに次のご支援を行っています。

管理職向けコミュニケーション・指導法研修
心理的安全性と離職防止に関する研修
外部相談窓口(ハラスメント・人間関係・業務上の困りごと対応)
1on1テンプレ/依頼テンプレ/周知テンプレの提供
社内アンケート実施(ハラスメント・公益通報調査)

経営課題の中心を占める人事問題は当事務所にお任せください。ハラスメント防止・コミュニケーション力向上・マニュアル作成まで、幅広く対応いたします。

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