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ストレスチェックが50人未満の中小企業にも義務化されるのは迷惑か|中小企業は「負担ばかり」強いられているのか
2025/12/23

大企業で義務化されているストレスチェック制度が、50人未満の中小企業にも及ぶ可能性があるとして、経営者の間で関心が高まっています。
「また中小企業に新しい義務が増えるのか」
「人手も余裕もないのに、これ以上やることを増やされても困る」
「医者を儲からせたいだけなのでは?」
ストレスチェック制度について、50人未満の中小企業の経営者から、このような声を聞くことは少なくありません。
実際、現在は努力義務とされている50人未満事業場についても、将来的な義務化を視野に入れた議論が進められており、不安や反発を感じるのは無理もないことです。
しかし一方で、人事労務の現場から制度を見ていると、ストレスチェックは「やらされ仕事」にもなりますし、制度設計や運用次第で中小企業にとって非常に使い勝手の良い“組織改善ツール”にもなり得る制度でもあります。
本ページでは、「ストレスチェックは本当に中小企業にとって迷惑な制度なのか」という疑問を、人事労務と経営の両面から整理しています。今後実施を予定している中小企業だけでなく、ストレスチェックに負担を感じているすべての経営層・人事・総務部門向けに外部の目線からストレスチェックをわかりやすく解説します。
「負担が増えるだけ」という感覚は、決して間違っていない
最初にお伝えしておきたいのは、ストレスチェックを“そのまま受け取れば”、中小企業の負担が増えるのは事実だということです。
⚠実施方法が分からない
⚠個人情報の扱いが不安
⚠何をすれば法令上問題ないのか分からない
⚠結果が出たあと、どう対応すればいいのか分からない
これらを整理しないまま制度だけが導入されれば、「結局、形式的な作業が増えただけ」「コストと責任だけが増えた」と感じる経営者が多くなるのは当然です。問題は、ストレスチェック制度そのものではなく、制度の“目的”が共有されていないことにあります。
ストレスチェックは「社員を調べる制度」ではない
ストレスチェックという言葉から印象するのは、
-
社員のメンタル状態を調べる
-
問題のある社員を洗い出す
-
ハラスメントがないか見つける
といったイメージを持たれることがありますが、これは制度の本質とは少し異なります。ストレスチェック制度の本来の目的は、
-
心身の不調が深刻化する前に組織で兆候を把握すること
-
トラブルが表面化する前に、職場環境の「歪み」に気づくこと
にあります。誰が悪いかを特定する制度ではなく、「どこに無理がかかっているか」を間接的に把握するための制度と言った方が、実態に近いでしょう。
なぜ「社内ハラスメントアンケート」より荒れにくいのか
中小企業では、社内ハラスメントアンケートの実施を検討するケースもあります。しかし、ハラスメントアンケートには次のような懸念点があります。
▲問題を直接聞くため、対立が生じやすい
▲急な実施に社内がざわつく
▲回答内容が処分や評価に使われるのではという不信感
▲回答率や正直さが下がりやすい
一方、ストレスチェックは、
〇ハラスメントの有無を直接聞かない
〇業務量、裁量、支援の有無、心身反応といった間接指標を見る
〇全国共通の法定制度である
という特徴があります。
その結果、
☑特定部署だけ数値が高い
☑管理職層に負担が集中している
☑夜勤・現場部門が慢性的に高負荷
といった「組織の歪み」が、対立を生まずに浮かび上がります。これは、組織改善にとって非常に重要なポイントです。
経営リスクと「自然な接続」ができる制度
ストレスチェックは、単なる健康施策ではありません。実務上は、次のような経営リスクと密接につながっています。
✅パワハラ・指導トラブル
✅未払残業代請求
✅精神障害による労災
✅安全配慮義務違反
重要なのは、ストレスチェックの結果は「処分の証拠」として利用されるのではなく、「予防と是正を検討していた組織的対応の記録」として残る点です。
問題が顕在化した後に「把握していなかった」と言うのと、「数値上の兆候は把握しており、対応を検討していた」と言えるのとでは、企業の説明責任は大きく異なります。
この点において、ストレスチェックは経営リスクを低くするための防御的ツールとしても機能します。
配置転換・業務見直し理由が「感覚」ではなく「データ」で説明できる
中小企業では、次のような場面がよくあります。
❓なぜあの人は異動になったのか
❓なぜあの部署に人を増やすのか
❓なぜ業務配分を変えるのか
これらを感覚や経験だけで判断すると、不満や誤解が生じやすくなります。ストレスチェックの集団分析は、
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部門別
-
職種別
-
業務特性別
といった形で数値化できるため、配置転換や業務見直しの「合理的な説明材料」になります。
異動理由に不満が生じやすい組織運営においても、経営層の経験や勘だけに頼らず、データを根拠に説明できる点は、中小企業にとって大きなメリットです。
制度設計次第で「コスト」は「投資」に変わる
ストレスチェックが形骸化する典型例は、
-
とりあえず実施する
-
結果を見ない
-
改善につなげない
-
翌年もただ同じことを繰り返す
というケースです。
一方で、ストレスチェックを活用している企業は、
-
外部が実施事務を担い、会社が直接触れない
-
結果を経営判断の材料として整理する
-
小さな改善につなげるツールである
という設計や実施の工夫がされています。こうなると、ストレスチェックは年1回の単なる負担やコストではなく、組織改善のきっかけになります。
中小企業の人事労務顧問の目線で見る「ストレスチェックの利用」
人事労務の現場から見ると、ストレスチェックは次の点で優れています。
-
法定制度のため、社内説明がしやすい(不満や不信感を生まない)
-
中立的で、対立を生みにくい(厚労省が運用方法を指南)
-
外部関与が前提となりやすい(第三者性による信頼性の担保)
-
他の制度(研修、相談窓口、配置見直し)につなげやすい
中小企業だからこそ、問題が小さいうちに、争いにならない形で把握できる制度として活用するなら価値は十分にあります。
まとめ:ストレスチェックは「義務」か「道具」か
ストレスチェックは、
A:やらされ仕事だからやる
B:組織改善の道具として活用する
どちらになるかは、制度そのものではなく、企業側が制度をどう解釈し、どう使うかで決まります。
中小企業にとって、
「負担ばかり増える制度」になるか、
「経営にプラスとなる制度」になるか。
その分かれ道は、決して大げさではなく、実施する企業の考え方と、現実的な制度設計にあります。
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よくある質問(FAQ)
Q. 50人未満の事業場でも、必ずストレスチェックをやらなければいけないのですか?
A. 現在は努力義務とされていますが、将来的な義務化を見据えた議論が進められています。制度内容や時期については、今後の動向を注視する必要があります。
Q. ストレスチェックの結果は、会社が見ることになりますか?
A. 個人結果は本人の同意がない限り、会社に提供されません。会社が確認するのは、個人が特定できない集団分析結果が原則です。
Q. ハラスメント対策としても使えますか?
A. ハラスメントの有無を直接判断する制度ではありませんが、職場環境の歪みや負荷の集中を把握する材料として活用できます。
Q. 中小企業でも外部に委託する意味はありますか?
A. 個人情報保護や社員の心理的安全性を考えると、外部が実施事務を担う方が合理的なケースは多くあります。
当社(社労士事務所)のストレスチェック実施事務従事者代行サービス
当事務所では、ストレスチェックを「単なる義務対応」で終わらせず、人事労務・経営の視点から整理することを重視しています。
-
実施事務従事者業務の外部受託
-
制度設計・運用フローの整理
-
調査票の回収業務、集団分析
など、企業規模や体制に応じた現実的なサポートを行っています。
「制度として正しく、無理のない形で進めたい」
「ストレスチェックをどう活かせばよいか相談したい」
中小企業に多い相談に、外部専門家として最適な設計を提案しています。
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制度の捉え方が変わるだけで、ストレスチェックは中小企業にとっても、十分に意味のある制度になります。
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