NEWS
【2025年版】中小企業の採用リスク回避マニュアル|求人票・面接・内定取り消しの法的注意点
2025/09/30
はじめに|採用は企業経営の“入口リスク”
採用は人材確保の第一歩ですが、同時に 大きな法的リスク を抱えています。
-
求人票の虚偽記載による労基署是正勧告
-
面接時の不適切質問がSNSで拡散され炎上
-
内定取り消しで裁判に発展、数百万円規模の損害賠償
-
試用期間中の解雇をめぐる労使トラブル
こうした問題は大企業だけでなく、中小企業・零細企業でも頻発しています。
むしろ人事担当者が専任でない会社ほど、「うっかり」や「慣習」 が原因で大きなリスクに直結します。
✅ 採用プロセスは「法令遵守」と「公平性」が最重要。事前準備と仕組み化が、企業を守る最大の武器です。
中小企業で頻発する採用リスク類型
1. 求人票の虚偽・誇大表示
「残業なし」と記載しながら実際は月40時間残業 → 虚偽求人で是正指導。
2. 面接での不適切質問
「結婚の予定は?」「子どもは何人?」といった質問は男女雇用機会均等法に抵触。口コミサイトへの悪評や録音されてSNS拡散の事例も。
3. 内定取り消し
経営悪化や本人不適格を理由に内定を取り消す場合、客観的合理性+社会的相当性 が必要。
無計画な取り消しは損害賠償のリスク大。
4. 試用期間中の解雇
「試用期間だから解雇自由」という誤解は危険。解雇権濫用法理が適用されるため、正社員同様の合理性が求められる。
5. 労務管理との不整合
求人票と就業規則が矛盾 → 採用後にトラブル化。例:求人票で「完全週休二日制」と記載したが、実際は隔週。辞められて終わりの時代ではない(口コミ・訴訟・行政指導・助成金停止)。
採用リスク回避の実務ポイント(6つの備え)
① 求人票チェックリストの導入
-
勤務地、労働時間、休日、給与、試用期間など 労働条件通知書と一致 させる
-
ハローワーク・自社サイト・求人媒体で内容の齟齬がないかを確認
-
「みなし残業」表記には必ず時間数を明示
② 面接マニュアルの整備
-
質問OK例:志望動機、経験、スキル、キャリアプラン
-
質問NG例:結婚・出産予定、家族構成、思想信条、健康状態(業務に直接関係ない場合)
-
面接官トレーニングで「質問の線引き」を徹底
③ 内定通知書・労働条件通知書の整備
-
内定通知書は必ず文書で交付
-
「内定取り消しは経営上やむを得ない場合に限る」 など留保条件を明記
-
労働条件通知書は電子化対応(2025年4月施行の労基法改正)を反映
④ 試用期間の適正運用
-
試用期間中も正社員と同様に解雇制限が適用
-
解雇は「著しく不適格」な場合に限定し、記録を残す
-
試用期間の延長は合理性が必要。本人合意+客観的理由を必須
⑤ 職場アンケートと採用後フォロー
-
採用直後の離職は「入社前説明と実態の乖離」が原因
-
定期的なES調査・アンケートで不満を早期に把握
-
採用後の定着支援(オンボーディング)も「採用リスク回避」の一部
⑥ 採用基準の事前文書化と共有(社外秘)
-
評価基準を文書化(例:スキル・経験・協調性・理念適合性などを5段階評価)
-
一次面接=人物適性、二次面接=スキル・志向性、最終=理念・経営判断 と段階ごとに評価軸を分ける
-
「禁止質問リスト」を添付し、面接官全員に共有
-
文書は「社外秘扱い」で管理し、採用決定後も保存(訴訟対応の証拠にも)
→ 採用基準を事前に固めておくことで、面接官間のブレが減り、不採用理由も合理的に説明可能になります。
実例から学ぶ(中小企業の失敗事例)
-
飲食店(求人票虚偽)
「残業なし」と求人票に記載 → 実際は月40時間残業 → 労基署から是正指導 -
小売業(内定取消)
経営悪化を理由に内定取消 → 学生が提訴 → 裁判で数百万円の損害賠償命令 -
製造業(面接録音炎上)
「結婚予定は?」と聞いた内容がSNSで拡散 → 炎上し採用ブランド失墜
よくある質問(FAQ)
Q1:求人票は媒体ごとに条件を変えてもいい?
A:不可。同一条件で統一しないと「虚偽求人」として指導対象になります。
Q2:内定取消はどんな場合でも違法?
A:経営上やむを得ない場合や重大な虚偽申告など限定的に認められますが、厳格な合理性が必要です。
Q3:試用期間の延長は自由?
A:合理的な理由(例:出勤日数不足)があれば可能。ただし本人同意が必須。
Q4:採用基準を公開すべき?
A:原則非公開。外部に示すと差別的要素を指摘されるリスクがあるため「社外秘」での内部共有に留める。
関連サービス(中小企業向け)
お問い合わせ
採用リスクを軽視すると、炎上・裁判・人材流出に直結します。
当事務所では 求人票点検・採用基準文書化・面接研修・契約書作成 をワンストップで支援します。
\初回相談無料・お見積もり無料/
▶ 初回相談(無料)依頼はこちらから
参考リンク・ソース集(採用リスク回避関連)
-
厚生労働省「公正な採用選考の基本」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/newpage_56780.html
採用活動における基本姿勢や、応募者の基本的人権を尊重した選考のあり方をまとめた公式ガイドライン。 -
厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項(PDF)」
https://jsite.mhlw.go.jp/hiroshima-roudoukyoku/content/contents/001193870.pdf
面接や選考で差別につながる恐れのある質問や、配慮が必要な項目を具体的に解説。 -
厚生労働省「不適切な採用選考・質問例等」
https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html
聞いてはいけない質問(家族構成・思想・信条など)と、その理由を一覧化した解説ページ。 -
厚生労働省「労働基準関係リーフレット集」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000056460.html
労働時間・休日・賃金など、採用後の労務管理にも直結する労働基準法関連のリーフレット集。 -
大阪労働局「就職差別につながるおそれのある不適切な質問の例」
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/shokugyou_shoukai/hourei_seido/kosei/futeki.html
実際の面接場面でありがちなNG質問を具体例とともに紹介。 -
愛知労働局「事業主のみなさまへ 面接に際してご配慮を!」
https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/shokugyou_shoukai/hourei_seido/mensetuhairyo.html
面接時の留意点をリーフレット形式で整理した資料。 -
労働保険制度リーフレット集(全国労保連)
https://www.rouhorentokyokai.org/labor_insurance_leaflet
労働保険関連の制度概要・リスク対応を分かりやすくまとめた参考資料。