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【2025年法改正対応】就活ハラスメントを受けたらどうする?学生・求職者のための相談ガイド

2025/10/28

― 勇気を出して相談を ―
(監修:RESUS社会保険労務士事務所)


はじめに|あなたのせいではありません

就職活動・インターンシップ・OB訪問などの場で、不適切な発言や誘い、圧力を受けて傷ついた――。

それは「あなたが敏感すぎる」のではなく、就活ハラスメント(就活セクハラ・採用ハラスメント)と呼ばれる行為であり、2025年の法改正(労働施策総合推進法改正)によって企業に防止義務が課される不当行為です。

このページでは、被害を受けた学生・求職者の方が「どう行動すればよいか」「どこに相談できるか」を、専門家の立場からまとめました。


第1章|就活ハラスメントとは

定義(厚生労働省ガイドライン案)

求職者や学生に対して、採用活動やインターンシップ等の過程で行われる性的言動・人格否定・優越的地位を利用した不当な要求や圧力・誘導。

具体例

  • 面接官から外見・恋愛・結婚・家庭観を聞かれる

  • OB訪問で飲食に誘われ、個室や宿泊を伴う誘いを受けた

  • リクルーターが「連絡先を教えて」「君だけ特別」と接近

  • SNSやLINEでの私的な誘い・DM

  • 「女性はすぐ辞める」「地方大だから採用は難しい」などの差別発言


第2章|被害を受けたときの5つの行動ステップ

ステップ①|記録を残す(証拠確保)

  • 日時・場所・発言内容・関係者・そのときの状況をメモに。

  • メール・LINE・DM・SNSメッセージのスクリーンショットも保存。

  • 会話録音(スマホボイスメモ等)も合法です(当事者録音は違法ではありません)。

ポイント:記録があることで、後の調査・証明・再発防止の根拠になります。


ステップ②|信頼できる人に話す

  • 大学のキャリアセンター、就職課、教授、友人など。

  • 話すだけでも整理がつき、二次被害防止にもなります。

✅大学・専門学校では「ハラスメント相談窓口」を設けている場合があります。
→ 匿名でも相談可。必要に応じて企業に連絡してくれます。


ステップ③|企業の相談窓口に連絡する

企業には、求職者・学生からのハラスメント相談に適切に対応する体制を整える義務があります。
連絡するときは、落ち着いて以下のように伝えるとスムーズです。

「○月○日の面接で、○○という発言があり、不快に感じました。
今後の採用活動に影響が出ないか心配です。
相談として対応をお願いしたいです。」

⚠️ 不利益取扱い(内定取消・不採用)を理由に報復することは法律で禁止されています。
(労働施策総合推進法第30条の2)


ステップ④|行政・専門機関へ相談する

自分で企業に伝えにくい場合は、行政・公的機関を活用しましょう。

機関 内容 連絡先
労働局「雇用環境・均等室」 求職者・学生のハラスメント相談対応。指導・助言可能。 各都道府県労働局(厚労省HP)
厚生労働省「ハラスメント悩み相談室」 電話・メール・匿名相談可。 厚生労働省「ハラスメント悩み相談室(公式サイト)
弁護士会・社労士会 法的助言、損害賠償・交渉サポート。 各地域相談窓口
大学・専門学校の相談室 学内・企業間調整、心理的支援。 各学校の公式窓口

✅無料相談を活用することが第一歩です。「迷ったら相談」で問題ありません


ステップ⑤|心のケアを大切にする

被害を受けた後は、「自分が悪かったのか」「応募した自分が悪い」と思い込みがちです。
それは自然な反応ですが、あなたに全く非はありません。

  • 眠れない・不安が続くときは、早めに専門家(カウンセラー・医師)へ。

  • 「よりそいホットライン」0120-279-338(24時間)も利用できます。

  • 信頼できる人と一緒に行動を。孤立しないことが大切です。


第3章|法的視点から見た「企業の責任」

企業は、採用活動やインターンを通じて学生・求職者と接触する際、安全配慮義務・防止措置義務を負っています。

●法的根拠:労働施策総合推進法(2025年改正)第30条の2

事業主は、求職者からの申告を理由として不利益取扱いをしてはならず、ハラスメント防止のための雇用管理上の措置を講じなければならない。

判例でも、企業の調査・対応が遅れた場合、損害賠償が認められています(リクルートキャリア事件・東京地裁2020.9.17)。

つまり、「対応を怠った企業側」にも責任が発生する場合があります。
あなたが声を上げることは、再発防止につながる正しい行動です。


第4章|相談文例・メールテンプレート

件名:就職活動におけるハラスメントに関するご相談

貴社採用担当者 ○○様

私は貴社の○○職採用に応募している○○大学○年の○○と申します。
先日の面接で、○○という発言があり、不快に感じたためご相談いたします。
採用選考や今後の関係に影響が出ない形で、確認・ご対応いただけますと幸いです。

○月○日 面接担当:○○様
内容:○○

ご多忙のところ恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

(氏名・連絡先)

✅ポイント:

  • 感情的な文面にせず、事実と希望を明確に伝える

  • メール送信後は、必ずコピーを自分宛に残す。


第5章|相談先リンク集(保存版)

区分 窓口名 特徴
公的機関 労働局 雇用環境・均等室 企業への指導・助言が可能
公的機関 厚生労働省 ハラスメント悩み相談室 匿名相談可/電話・メール受付
専門士業 弁護士会・社会保険労務士会 法的手続・交渉支援/有料・一部無料
教育機関 大学・専門学校相談室 就活・インターン中の学生相談
支援団体 よりそいホットライン(24h) 心理的ケア・緊急時対応

FAQ|よくある質問

Q1. 相談したことで不採用になったら?
→ 不利益取扱いは禁止されています。労働局等に相談すれば、企業側へ指導が入ります。

Q2. 面接官が社長や役員の場合も相談してよい?
→ もちろんです。役職に関係なく、ハラスメントは違法行為です。

Q3. SNSでの誘いだけでも「就活ハラスメント」にあたる?
→ はい。採用活動を通じて知り得た個人情報を利用している場合、対象になります。

Q4. 証拠がなくても相談してよい?
→ 問題ありません。まずは「相談ベース」で話してみましょう。相談員が整理を手伝ってくれます。

Q5. 他の学生も同じ被害を受けているかもしれない場合は?
→ その旨を相談窓口に伝えましょう。複数申告として調査が行われる可能性があります。

Q6. SNSに被害を投稿してもいいですか?
→ 企業の実名を掲載して被害を拡散させると民法709条(不法行為)および刑法230条(名誉毀損)などに該当するおそれがあります。投稿前に、必ず第三者や専門家に相談してください。特にSNSへの投稿は思わぬ形で広がり、残りますので冷静に検討ください。


まとめ|あなたの声が、次の被害を防ぐ力になります

就活ハラスメントは、あなたが悪いわけではありません。
勇気を出して行動したことが、次の誰かを守る一歩になります。

企業や社会は、あなたの声で少しずつ変わります。
ひとりで抱えず、まずは相談を。


監修:RESUS社会保険労務士事務所

(法人・大学・自治体向けハラスメント防止研修・外部相談窓口運営)

全国の中小企業・教育機関に向け、法改正対応型の相談体制づくりを支援しています。
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