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【2025年対応版】中小企業向け副業規程の作り方ガイド|リスク管理と実務ポイント(社労士監修)
2025/10/03
はじめに|副業解禁の流れと中小企業の悩み
「副業・兼業を希望する若手人材が増えている一方、会社として制度をどう整備すべきか分からない」
これは中小企業経営者・人事担当者から寄せられる代表的な声です。
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副業を全面禁止にすると「時代遅れ」「魅力がない」と若者から敬遠される
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無条件で許可すると、社会保険料や労働時間管理のリスクが高まる
- 制度設計について大企業向けのものばかりで中小企業用の実務書が無い
こうした板挟みの状況で悩んでいる企業は少なくありません。
本ページでは、中小企業の実務現場に即した 副業制度設計の基本方針と注意点 を解説します。
副業をめぐる会社の基本スタンス
副業制度には大きく分けて以下の3パターンがあります。
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全面禁止
リスクは最小だが、採用・定着面で不利になる可能性がある。 -
全面許可
自由度は高いが、労務管理・法令違反リスクを会社が背負うことになる。 -
原則禁止+条件付き許可(推奨)
中小企業の現実的対応。一定の条件を満たす場合のみ申請制で許可。
副業を認める際の主なリスク一覧
副業を制度化する場合、会社が直面しうるリスクは以下のとおりです。
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社会保険料の合算リスク
二以上事業所勤務の場合、報酬が合算され社会保険料が増加。事務処理の負担も。 -
労働時間管理・割増賃金リスク
本業+副業の時間が通算され、時間外労働や割増賃金の支払い義務が発生。未払いは法違反。 -
競業避止義務違反
同業他社での勤務は、会社の正当な利益を害する可能性あり。許可制でも慎重対応が必要。 -
情報漏洩リスク
副業先での活動を通じて自社の顧客情報やノウハウが流出する危険。 -
過労・健康被害リスク
長時間労働により労災リスクや安全配慮義務違反の可能性。 -
税務リスク
副業報酬が20万円を超える場合は確定申告義務。従業員が怠るとトラブルの火種に。
会社が「許可制」で副業を管理するリスクを詳しく解説(社労士の意見)
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社会保険料(二以上事業所勤務)
勤務時間・報酬額を会社が把握して「許可」した場合、合算対象となり得ます。
その結果、保険料の徴収や事務処理に関与せざるを得なくなり、実務負担と法令違反リスクが高まります。 -
労働時間管理
会社が副業先の労働時間を承認すると、「通算管理義務」を認めたと解釈されかねません。
未払い残業代や過労死リスクでの安全配慮義務違反が問われやすくなります。
→ つまり「会社が把握・許可」した瞬間に、リスクを自ら引き受けることになるのが最大の問題です。
実務上の回避策:「原則禁止+条件付き承認」+「会社は関与せず自己責任」
中小企業で広く採用されている形は以下です。
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原則禁止を前提とした就業規則を整備
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「一定条件を満たす場合は可能」とする条文を設ける(例:同業禁止、機密保持、健康管理・自己責任)
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会社は副業の「内容・労働時間・報酬」には関与しない
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その代わり、従業員本人にリスクを説明し、誓約書で自己責任を明記する
これにより、会社は副業の存在を「認知」はしても「管理・承認」はしていない形を取れるため、リスクを軽減できます。
副業を認める際の条件例(就業規則モデル条項)
実務上は以下の条件を明記しておくことが望ましいです。
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機密情報・顧客情報を漏洩しないこと
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同業他社での副業は原則禁止、勤務を希望する場合は必ず会社の了承を得ること
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労働時間の自己管理を徹底し、過労や安全配慮義務違反を招かないこと
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所得税・住民税の申告義務があることを理解し、自己責任で対応すること
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副業により本業の勤務成績・勤務態度に支障を及ぼさないこと
- 副業によって本業に支障が生じた場合は、会社は懲戒や禁止命令を行うことがある
副業誓約書サンプル(中小企業向けひな型)
以下は副業を認める際に従業員から取得しておくことが望ましい「誓約書」の例です。
(就業規則とセットで運用することで、会社がリスクを最小化できます)
副業誓約書(サンプル)
私は、株式会社〇〇(以下「会社」という)に勤務するにあたり、副業・兼業について下記の事項を遵守することを誓約いたします。
第1条(自己責任)
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副業に関する所得税・住民税の申告、社会保険料の算定・納付、その他法令上の手続きは、すべて自己の責任と負担において行います。
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副業に伴い発生したトラブル・損害については、会社に一切の責任を求めません。
第2条(競業禁止・秘密保持)
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会社と同業他社での就労や、会社の正当な利益を害する行為は行いません。
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副業に際して知り得た会社の営業秘密・顧客情報を漏洩しません。
第3条(労働時間・健康管理)
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副業によって長時間労働や過労状態となり、本業に支障を及ぼしません。
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安全配慮義務違反や健康被害を発生させないよう、自己管理を徹底します。
第4条(本業優先)
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副業が原因で本業の勤務態度や成果に悪影響を及ぼした場合、会社から副業の中止・制限命令を受けることに異議を唱えません。
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会社の勤務時間中には一切副業を行いません。
第5条(違反時の措置)
本誓約に違反した場合、会社は就業規則に基づき懲戒処分その他必要な措置をとることができることを承諾します。
令和〇年〇月〇日
従業員署名:______________
会社名:株式会社〇〇
代表者名:______________
✅ 実務運用のポイント
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誓約書は「就業規則」と整合性を持たせることが重要です。
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特に 自己責任・競業禁止・秘密保持・本業優先 の4項目は必須。
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Word版で保管し、従業員から署名・日付を取得しておくとより実効性があります。
実務上の対応フロー
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就業規則に「原則禁止・条件付き許可」の条文を整備
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副業申請書・誓約書を従業員に提出させる
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会社は関与しないことを明確に伝える(自己責任型)
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定期的に副業状況を確認し、問題があれば是正指導
根拠法令・指針
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労働基準法 第32条(労働時間管理)
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労働契約法 第5条(安全配慮義務)
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厚労省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年改訂)
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健康保険法・厚生年金保険法(二以上事業所勤務の社会保険料算定)
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民法 第623条(競業避止義務の根拠)
FAQ|よくある質問
Q1. 副業禁止は違法ではないのですか?
A. 就業規則で「副業禁止」を定めることは可能です。ただし採用・定着に不利となる場合があるため、条件付き許可が実務的です。
Q2. 同業他社でアルバイトするのは認めるべき?
A. 競業避止義務違反の可能性が高く、原則禁止とするのが望ましいです。
Q3. 社会保険料は必ず増えるのですか?
A. 報酬額が一定基準を超えると合算対象になります。事務負担も含めリスクがある点を従業員に説明すべきです。
Q4. 確定申告を会社が代わりにする必要はありますか?
A. ありません。副業に係る税務はあくまで本人の自己責任です。ただし、会社の顧問税理士に依頼するなどで確定申告を補助することは可能です。
導入事例
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製造業A社:原則禁止+「講師活動」「地域活動」等に限って許可。
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IT企業B社:条件付き許可制を導入。年間数件の副業申請があり、情報漏洩リスクを管理。
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介護事業C社:副業による過労を懸念し、健康診断で医師の意見を確認するフローを導入。
副業関連ページ
▶副業許可すると会社の社会保険料負担が増える仕組みと回避策|中小企業の実務ガイド
▶中小企業が副業を許可するメリット・デメリットとリスク徹底解説
▶副業と税務・住民税リスクの実務ガイド|企業が抱える負担と回避策
▶副業に関するよくあるトラブル事例と回避策|許可と禁止のリスク比較
まとめ
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全面禁止は時代に合わないが、全面許可もリスクが高い。
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中小企業に適した方法は「原則禁止+条件付き許可」。
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就業規則、誓約書、リスク説明の3点セットでトラブルを未然に防ぐ。
「会社は副業に関与せず、あくまで条件付きで容認・誓約書で自己責任を明記する」という運用は、中小企業の現実的で安全な方法です。逆に、勤務先や時間まで許可制で細かく把握すると、社会保険や労働時間通算管理のリスクを会社が背負うことになります。
副業制度の作成は当事務所へご依頼ください。
\初回相談無料/
料金表
項目 | 内容 | 料金(税込) |
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① 既存副業制度の点検 | 就業規則・副業規程の点検 | 16,500円 |
② 新規副業制度の作成 | 就業規則点検+副業リスク説明書+副業誓約書 | 33,000円 |
③ 就業規則新規作成 | 就業規則+労働条件通知書+NDA | 30,800円 |
④ 就業規則一式新規作成 | ③+パート規則+育児介護休業規定 | 55,000円 |
→ 【参考】厚労省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」最新版
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