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【2025年対応版】中小企業が副業を許可するメリット・デメリットとリスク徹底解説|社労士監修

2025/10/04

はじめに|副業許可をめぐる中小企業のジレンマ

「副業を希望する社員が増えているが、制度を認めるべきか悩んでいる」
「採用面接で副業制度の有無を聞かれて困った」

近年、中小企業経営者や人事担当者からこうした声が増えています。

  • 副業禁止にすると「時代遅れ」「魅力がない」と若者から敬遠される

  • 副業を無条件で許可すると社会保険・労働時間・税務リスクが会社にのしかかる

  • 制度設計は大企業中心で、中小企業が参考にできる事例が少ない

本ページでは、中小企業が「副業を許可するかどうか」を判断するために必要な メリット・デメリット・リスクの全体像 を社会保険労務士が分かりやすく整理し、解説します。


会社が副業を許可するメリット

1. 採用力・定着力の向上

若手人材を中心に「副業解禁」を重視する求職者が増加。
制度がない企業は採用競争で不利になる可能性があります。

2. 従業員のスキルアップ

副業経験を通じて IT・営業・企画・マネジメント など、自社で活かせるスキルを持ち帰るケースがあります。

3. 従業員満足度・エンゲージメント向上

従業員が自ら選んだ副業に挑戦できることで、 自己実現感・キャリア満足度 が高まり離職率低下につながる可能性があります。

4. 会社のブランド向上

「副業容認企業」として柔軟な働き方を認める姿勢を打ち出すことは、企業イメージ向上や広報効果をもたらします。


会社が副業を許可するデメリット・リスク

副業を認める場合、企業には以下のリスクが伴います。

1. 社会保険料のリスク

  • 二以上事業所勤務の場合:報酬が合算され社会保険料が増加。

  • 会社は届出義務を負い、事務負担が増加。

  • 根拠:健康保険法・厚生年金保険法(第3条、第48条ほか)。

2. 労働時間管理・割増賃金リスク

  • 労働基準法第32条により、労働時間は副業を含めて通算される解釈がある。

  • 結果として、未払い残業代・過労死リスク・安全配慮義務違反が問われやすい。

  • 根拠:労働基準法第32条、労働契約法第5条。

3. 競業避止義務違反

  • 同業他社での副業は 民法第623条 に基づき競業避止義務違反に該当する可能性あり。

  • 顧客の奪取や技術流出など、経営リスクが高い。

4. 情報漏洩リスク

  • 副業先での活動を通じて自社の営業秘密・顧客情報が外部に漏洩する危険。

  • 情報管理体制の不備が訴訟や信用失墜につながる。

5. 過労・健康リスク

  • 長時間労働で労災・メンタル不調が発生すると、会社の 安全配慮義務違反 が問われる。

  • 特に小規模事業所では管理体制が脆弱でリスクが大きい。

6. 税務リスク

  • 副業収入が20万円を超えた場合は 確定申告が必要

  • 住民税は特別徴収(会社経由)となるため、副業の存在が本業会社に判明する可能性が高い。

  • 誤った処理や従業員の申告漏れは、税務署調査の対象となり得る。

▶副業制度の作り方ガイド(中小企業向け)|リスク管理と実務ポイント(社労士監修)


副業を許可するか判断するためのチェックリスト

  1. 採用・定着で副業解禁が必要か?

  2. 労働時間・社会保険リスクを会社が負える体制があるか?

  3. 競業・秘密保持のリスクを契約で抑止できるか?

  4. 従業員に税務リスクを自己管理させる誓約が取れるか?

  5. 健康管理・過労防止策を講じられるか?

→ 上記をすべて「YES」と言えない場合、中小企業は「原則禁止+条件付き許可」が現実的対応 です。


実務上の推奨運用|「原則禁止+条件付き許可」

ステップ1:就業規則に条文整備

  • 原則は禁止としつつ、条件を満たした場合に限り申請可能とする。

ステップ2:副業申請書・誓約書の取得

  • 副業内容・労働時間・報酬は会社が関与しない。

  • 自己責任で対応することを明記。

ステップ3:定期的な確認

  • 健康診断結果や勤務態度に影響が出ていないか確認。


FAQ|よくある質問

Q1. 副業禁止は違法ではないのですか?
A. 違法ではありません。就業規則で禁止可能です。ただし採用・定着に不利となるため、条件付き許可が望ましい。

Q2. 副業していることは会社にバレますか?
A. 住民税の特別徴収により、会社に通知される可能性があります。

Q3. 同業他社でのアルバイトは可能ですか?
A. 競業避止義務違反となるため原則禁止です。

Q4. 会社が副業先の労働時間を管理する必要はありますか?
A. 原則不要。ただし「許可制」で細かく把握すると、労働基準法第32条に基づき通算義務が発生し、逆にリスクが高まります。

Q5. 副業をすると社会保険は増えますか?
A. 報酬額が一定基準を超えると二以上事業所勤務として合算対象となり、社会保険料が増える場合があります。


導入事例

製造業A社(従業員30名・地方中小企業)

  • 背景:地域の賃金水準が低く、従業員から「副業しなければ生活が不安」という声が出ていた。

  • 対応:原則禁止の方針を維持しつつ、地域活動や資格講師など一部の副業に限り許可。

  • 結果:従業員の収入確保を支援することで、離職率が低下し人材定着につながった。

IT企業B社(従業員50名・首都圏)

  • 背景:採用面接で若年層から「副業は認められますか?」という質問が増加。

  • 対応:競業避止義務と秘密保持を条件に、条件付き許可制を導入。副業申請書と誓約書を整備。

  • 結果:年間数件の副業申請があり、情報漏洩リスクを抑えながら「副業容認企業」として採用力を強化できた。

介護事業C社(従業員80名・介護施設)

  • 背景:若手介護職から「副業で収入を増やしたい」という要望があり、同時に経営側は過労や健康リスクを懸念。

  • 対応:副業を許可する際には健康診断や医師の意見を確認し、過労防止策を制度化。

  • 結果:副業希望者の満足度が向上しつつ、無理な長時間労働は防止でき、安心して運用できている。

サービス業D社(従業員20名・飲食店チェーン)

  • 背景:地方エリアで人件費を抑えてきたため賃金水準が低く、従業員から「収入不足のためせめて副業を許可してほしい」という相談が相次いだ。

  • 対応:副業禁止の方針を見直し、深夜労働や同業他社勤務を禁止した上で、副業を条件付きで解禁。

  • 結果:従業員の生活不安が軽減し、結果として離職防止につながった。


まとめ|中小企業が副業を許可する際の最適解

  • 全面禁止:リスク最小だが採用競争に不利。

  • 全面許可:採用には有利だが、会社が法的リスクを背負う。

  • 原則禁止+条件付き許可(推奨):中小企業に適した現実的解。

結論:副業制度は「就業規則+誓約書+リスク説明」の三点セットで設計することが不可欠です。

副業制度の作成は当事務所へご依頼ください。

\初回相談無料/


料金表|副業制度整備サービス

項目 内容 料金(税込)
① 既存副業制度の点検 就業規則・副業規程の点検 16,500円
② 新規副業制度の作成 就業規則点検+副業リスク説明書+副業誓約書 33,000円
③ 就業規則新規作成 就業規則+労働条件通知書+NDA 30,800円
④ 就業規則一式新規作成 ③+パート規則+育児介護休業規定 55,000円

▶お問い合わせする(問い合わせフォームへ)


→ 【参考】厚労省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」最新版


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