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【2025年対応版】上司選択制度の導入ガイド|信頼関係から生まれる組織力の再設計

2025/10/27

「上司を選べる会社」が注目されています。
本ページでは、上司選択制度(ボスチョイス制度)の仕組み・法的留意点・導入手順を、社会保険労務士が専門的に解説します。(監修:RESUS社会保険労務士事務所/社会保険労務士 山田雅人)


はじめに|「上司は選べない」という常識を見直す時代へ

企業における離職理由の上位には、常に「上司との関係」が挙げられます。
パワハラや指導トラブルまで至らずとも、「信頼できない」「相談しづらい」と感じるだけで、生産性・エンゲージメントは大きく低下します。

こうした課題に対し、近年注目されているのが 「上司選択制度(ボスチョイス制度)」 です。
これは、社員が自らの上司を選べる仕組みを導入し、信頼関係を起点に組織運営を再構築する制度です。


1.上司選択制度とは

制度の概要

上司選択制度とは、社員(部下)が希望する上司(管理職)を選択し、そのもとで評価・指導・サポートを受けることができる仕組みです。
年に1回や人事異動時などに「希望上司アンケート」「面談希望票」などを通じて実施するケースが多く、完全自由制から、一定条件付きの選択制まで様々な形態があります。

主な導入形態

  • 自由選択型:社員が希望上司を指名し、本人同意の上で上司部下関係を確定。

  • 希望考慮型:希望上司を複数申告し、組織バランスを踏まえて人事が最終決定。

  • チームエントリー型:上司が自チームの方針を掲げ、社員が参加希望を表明。


2.導入のメリット

(1)信頼関係の強化と心理的安全性の向上

社員が信頼できる上司を自ら選ぶことで、心理的安全性が飛躍的に高まります。
「この人になら相談できる」「一緒に頑張りたい」という感情が生まれ、結果的にエンゲージメント・モチベーションが向上します。

(2)マネジメント力の可視化

選ばれる上司・選ばれない上司が明確になり、管理職のリーダーシップ力や信頼度が可視化されます。
これは人事評価・研修・昇進判断の有効な指標にもなります。

(3)人材流出の防止

「上司との相性が合わないから退職する」という離職リスクを軽減します。
特に若手や中堅層の定着に効果があり、リテンション施策としても注目されています。

(4)自律的キャリア形成の促進

社員が自分の成長方針と合う上司を選ぶことで、キャリア開発への主体性が高まります。
単なる“配置”から“選択による共創”へとマネジメントの質が変化します。


3.導入のデメリット・リスク

(1)人気偏り・組織の不均衡

人気のある上司に人材が集中し、その他の部署で人員不足が発生するリスクがあります。

(2)上司側の負担増

選ばれる側の上司に業務負担や評価責任が集中する恐れがあります。

(3)「選ばれない上司」への影響

マネジメント能力が低いと判断されたように見られ、モチベーション低下や離職に繋がるケースもあります。最悪、上司自身が退職してしまうこともあります。

(4)制度運用の公平性

選択結果に組織の思惑が介入すると、「結局選べない」「形骸化した」と不信を生みます。
透明性・ルール設計が極めて重要です。

【デメリットに関する補足】

デメリットは設計段階で多くが軽減可能です。人事制度設計の専門家が入ることで、「公平性」「透明性」「教育支援策」を担保できます。


4.労働関連法上の留意点

上司選択制度は、柔軟な人事制度である一方で、労働契約や就業規則との整合性が不可欠です。
導入にあたっては以下の法的観点に留意する必要があります。

法律・制度 主な注意点
労働契約法 上司変更が労働条件に影響を与える場合は合理性・本人同意が必要。
労働基準法 就業規則の「配置・異動」の定義に基づき、労働者の希望を反映する運用設計を明記。
労働組合法 労使協定や労使委員会との協議が必要な場合あり。特に評価・昇進に影響する場合。
個人情報保護法 選択希望・評価内容などのデータは個人情報として厳格に管理。
パワハラ防止法 「選ばれない上司」に対する侮辱・排除が生じないよう教育が必要(いわゆる「逆パワハラ」化)。

5.制度設計のポイント(専門家による設計指針)

  1. 目的を明確化する
     「信頼関係構築」「マネジメント力の可視化」など、導入目的を明示。
     曖昧なまま導入すると制度疲弊の原因になります。

  2. 選択回数・周期を設定する
     年1回(人事異動期)・半年ごとなど、固定サイクルで実施。
     随時変更可にすると混乱しやすく、上司側の負担が増大します。

  3. 選択プロセスの透明化
     選択基準・人数制限・最終決定者を明確に文書化。
     人事部門・上司本人・社員本人の三者承認型が望ましいです。

  4. 「選ばれない上司」への支援策
     マネジメント研修・フィードバック面談を実施し、改善機会を保障。

  5. 人事評価への反映方法を慎重に
     人気投票的な扱いではなく、「信頼構築力」「部下育成力」などの指標として活用。


6.運用方法の例

運用フェーズ 実施内容
準備 就業規則・制度要領に「上司選択制度に関する規定」を追記。社内説明会・Q&A配布。
選択実施 社員が希望上司を最大3名まで申告(Googleフォーム・社内ポータル等)。
調整 人事部が定員・組織バランスを考慮し、上司本人の同意を得て決定。
発表 新体制発表・異動内示・面談実施。
評価・改善 半期ごとに制度評価アンケート・運用改善会議を実施。

7.導入企業の実例(傾向)

  • IT・ベンチャー企業:チーム制・プロジェクト制との親和性が高く導入が進む。

  • 医療・福祉業界:信頼関係重視の現場では導入により離職率が改善。

  • 製造業・老舗企業:階層構造が強い場合は試験的導入から始めるケースが多い。


8.制度導入時の注意事項(社労士の実務視点)

  • 社内規程(就業規則・人事制度要領)の改訂が必須

  • 労使協定・意見聴取の手続き

  • 「人事権の一部委譲」に当たらないよう、最終決定権は会社側に保持

  • 選択結果を公開しない(個人特定防止)

  • 制度説明・同意書の取得

  • 試行導入期間(半年~1年)を設ける


9.FAQ|よくある質問

Q1.上司を自由に選ばせると、組織の統制が取れなくなりませんか?
→ 統制を保つためには「希望制+会社最終決定」という設計が有効です。 最終的なライン管理は会社が保持し、選択は意見聴取として位置付けます。

Q2.選ばれなかった上司の人事評価はどう扱うべきですか?
→ 「人気度」ではなく、組織マネジメント指標の一つとして客観的に分析します。 評価資料に直結させると不公平感が生じるため、改善指導や研修に活用します。

Q3.小規模組織でも導入できますか?
→ 可能です。上司が1~2名の場合でも「相談パートナー選択制度」として応用可能です。

Q4.法的に問題はありませんか?
→ 就業規則改訂・同意取得・個人情報管理の3点を満たしていれば問題ありません。ただし、異動命令権を制限する設計は避けましょう。


10.まとめ|「選ばれる上司」が企業の信頼をつくる

上司選択制度は、単なる人事制度ではなく、「信頼を可視化する仕組み」です。
制度の目的は“人気投票”ではなく、“信頼をベースにした協働体制の構築”にあります。

組織が変わるのは、上司と部下の関係性が変わったとき。
その最初の一歩を、制度という「仕組みの力」で後押しすることができます。


導入サポートのご案内(RESUS社会保険労務士事務所)

RESUSでは、以下の内容で上司選択制度の導入をサポートしています。

サービス項目 内容
制度設計コンサルティング 制度目的・範囲・対象・運用プロセス設計
社内説明資料作成 社内向け制度説明資料PPT・同意書・アンケートフォーム
規程整備支援 就業規則・人事制度要領・規程改訂文案作成
研修・フィードバック 上司・部下向け研修、信頼関係構築ワーク

信頼される組織は、「信頼できる上司」から生まれる。

上司選択制度は、単なる制度ではなく“信頼関係の再設計”です。

人事制度と法令、そして現場心理の両面から、
RESUSが御社の制度設計を伴走支援いたします。

中小企業から医療・福祉法人、ITベンチャーまで幅広く対応。
貴社の人事制度・組織規模に合わせた最適な導入プランをご提案いたします。

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