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【2025年版】ペット手当・ペット保険補助など“ペット福利厚生”の設計ガイド― 採用力・離職防止・企業ブランドを高める新しい福利厚生 ―
2025/11/07

(監修:RESUS社会保険労務士事務所/社会保険労務士 山田雅人)
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はじめに|ペットに関連する福利厚生制度が注目される理由
近年、従業員のライフスタイルの多様化により、ペットを家族として捉える家庭が増えています。
特に20~40代では「ペットが健康でいることが仕事のパフォーマンスに直結する」と考える従業員も多く、企業が“ペットとの暮らし”を支援する福利厚生が注目されています。
一方で、従来型の福利厚生とは異なり、税務処理・公平性・安全配慮など、制度設計が曖昧なまま導入するとトラブルにつながる可能性もあるため、十分な整理が必要です。
本ガイドでは、2025年時点で企業が検討しやすい「ペット福利厚生」を、人事労務の観点から安全に設計するためのポイントをまとめています。
※税務の取扱いは一般的な取扱いに基づき説明していますが、最終的な判断は税理士等の専門家への確認が必要です。
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第1章|ペット福利厚生の種類とメリット
近年では、「採用広報の差別化」「従業員満足度の可視化」としてペット関連の福利厚生制度を導入する企業も増えています。
1.主なペット福利厚生の種類
ペット関連の福利厚生は、大きく以下の4つに整理できます。
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ペット手当(飼育手当)
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ペット保険料補助
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ペット休暇(忌引き・看病・通院)
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ペットイベント・相談サービス
例:社内セミナー、しつけ相談、獣医オンライン相談 等
企業規模に合わせて、「1つだけ導入」「複数組み合わせ」「限定部署のみ導入」など柔軟な運用が可能です。
2.企業にとってのメリット
・採用力の強化(ペット世代に刺さる)
・離職防止(働き方の満足度向上)
・エンゲージメント向上
・企業ブランドの向上
・動物愛護の企業姿勢を示せる
3.従業員にとってのメリット
・ペットの医療費負担の軽減
・ペット死亡時の精神的負担軽減
・急な通院・看病の休暇確保
・企業へのロイヤルティ向上
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第2章|ペット手当(飼育手当)の設計
1.金額の目安
一般的には月額 1,000~5,000円 程度で設定されることが多いですが、法令で金額は定められていません。
当該手当は毎月定額で継続支給される場合、原則として給与課税(現物給与を含む)となり、社会保険の標準報酬算定および時間外労働の算定基礎に含まれる取扱いが一般的です。
※ただし、労働基準法施行規則で定める算定基礎からの除外手当(家族手当等)に該当しないのが通常である一方、個社の制度設計により判断が分かれる余地もあるため、最終的な判断は顧問社労士・顧問税理士へご確認ください。
2.対象範囲の決め方
・犬・猫のみ対象にするのか
・小動物・鳥類も含むのか
・飼育頭数が複数の場合の扱い
・同居家族が複数頭飼育している場合の扱い
公平性の観点から「1世帯1頭分」や「申請制」など明確化が必要です。
3.支給要件
・予防接種やワクチン接種の証明
・飼育登録の有無(自治体登録など)
・狂犬病予防注射済票の提出(犬の場合)
※法令義務がある項目を要件化する場合は、過度な個人情報収集とならないよう配慮が必要です。
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第3章|ペット保険料補助の制度設計
1.補助の方法
・月額定額補助(例:1,000円/月)
・保険料の一定割合を補助(例:50%)
・年間上限額を設定(例:年12,000円まで)
2.課税関係
通常は 給与課税(現物給与を含む) として扱われるケースが一般的です。年末調整・源泉徴収・社会保険の取扱いに影響するため、支給方法・証憑・給与計上区分を運用要領で明確化してください。
※経費処理の可否を含む最終的な税務判断は顧問税理士へご確認ください。
3.保険会社の選定
・特定の保険会社を指定するか
・従業員が自由に選択できる形にするか
・高額医療費が出やすい犬種への注意点
(差別的扱いとならないよう、制度説明の透明性が大切)
※犬種・年齢等による引受条件の差は保険商品固有の要件であり、会社側の補助対象外とする場合は合理的理由と説明文を運用要領等に記載する必要があります。
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第4章|ペット休暇(忌引き・看病・通院)の設計
1.種類
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忌引き休暇(ペット死亡時)
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看病休暇(急病・ケガ)
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通院休暇(予防接種等)
2.日数の目安
・忌引き:1日(大型犬等で2日とする企業も一部あり)
・看病休暇:1日/年
・通院休暇:半日~1日/年
3.有給・無給の選択
最も多いのは
・無給の特別休暇(就業規則へ追記)
・年次有給休暇で代替する方法(制度化しない)
の2つです。
※ペット休暇を有給にすると課税・給与計算が明確になるメリットがありますが、公平性の観点で慎重に判断する必要があります。
※ペット休暇を有給とする場合は、他の特別休暇(結婚・忌引き等)との均衡や、選択型福利厚生(カフェテリアプラン)での代替メニューを併設するなど公平性の確保が必要です。
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第5章|制度運用上のリスクと注意点
1.不公平感の発生
ペットを飼っていない従業員から不満が出やすい。
→「選択型福利厚生(カフェテリアプラン)」として同額相当の別メニュー(健康支援ポイント、自己啓発補助 等)を用意すると良い。
2.個人情報の取り扱い
動物病院の明細、病歴、家族情報などは慎重に扱う必要がある。
→最小限の情報のみ収集(氏名を含む診療詳細は取得しない等)。保存期間(例:2年)とアクセス権限(人事部内限定)を取扱要領に明記。
3.労働法との関係
・休暇制度を設ける場合は就業規則への明記が必須。
・特別休暇の取り扱いは、他の休暇制度(結婚・忌引き等)との整合を取る。
4.税務上の不確実性
・手当=給与課税
・保険補助=現物給与課税
が一般的ですが、最終判断は顧問税理士へ確認することをお勧めします。
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第6章|ペット福利厚生を導入するステップ
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従業員ニーズ調査(簡易アンケート)
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対象範囲・金額の検討
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税務上の扱いの確認
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就業規則・社内規程の整備
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申請手順・証明書のルール化
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社内告知と運用開始
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年1回の見直し(公平性・利用率の確認)
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第7章|社内規程に入れる場合のモデル条文
※一般的な条文例であり、各社の実態に応じて調整が必要です。
1.ペット手当
「従業員が自己の責任において飼育するペットに係る経費の一部を補助するため、会社はペット手当を支給することがある。対象、金額、申請手続きその他必要な事項は別に定める。」
2.ペット休暇
「従業員は、会社が認める場合に限り、ペットの死亡・看病・通院等により就労が困難なとき、特別休暇を取得することができる。対象、日数、手続きは別に定める。」
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第8章|まとめ|“やりすぎない設計”がペット福利厚生成功のポイント
ペット福利厚生は、目新しさから注目されがちですが、実際に導入する際は
・公平性
・税務の取扱い
・就業規則との整合
・申請手続きの明確化
を丁寧に整備することが成功の鍵となります。
過度に複雑な制度よりも「運用しやすく・説明しやすい仕組み」のほうが長期的に安定します。特に、公平性・税務上の整理・就業規則の整合性を事前に確認することが、トラブル防止と制度の長期運用に不可欠です。
RESUSでは、
・福利厚生制度の設計
・就業規則の整備
・社内アンケート設計
・外部相談窓口
など総合的な支援が可能です。
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