NEWS

【2026年対応版】“注意しても改善しない部下”の実務対応ガイド|指示無視・遅延・報連相不足・反発・マイペース型を安全に動かす方法

2025/12/10

「注意しても変わらない」「何度言ってもミスをする」「口答え・反発されて関係が悪くなる」
──こうした相談は2025年以降、管理職研修の中で急増しています。

問題の多くは、“性格の問題”ではなく “仕組みと伝え方の問題” です。

本ページでは、特に現場から寄せられる

●指示が伝わらない
●改善しない
●反発・逃避
●マイペース
●黙る・報連相しない

などの好ましくない状態を、安全かつ建設的に改善へ導くための実務対応として、経営的な視点と労務の専門家としての視点の双方から整理しました。


1.「改善しない部下」は“5つのタイプ”に分かれる

対応を誤らないためには、「同じ注意でも改善しない理由」がタイプごとに異なることを理解することが重要です。

(1)慎重・不安過多タイプ

・間違えることを極度に恐れる
・否定と受け取りやすい

“安全に進められる条件”を整えると動きやすくなる

(2)自己肯定感低め(傷つきやすい)タイプ

・小さな注意でも「自分はダメだ」と受け取る

できている点の明確化+次に強化する点の提示が必要

(3)合理・受注型タイプ

・目的と基準が曖昧だと動かない

「何を・なぜ・どこまで」を明確化すると改善が早い

(4)反発・自尊心高めタイプ

・指示されると抵抗する
・選択肢があると動きやすい

主体性を残しつつ期待基準を提示する

(5)マイペース・切り替えが遅いタイプ

・仕事のメリハリが苦手
・優先順位がぼやける

具体的な期限設定+進捗の見える化 が有効


2.「注意しても動かない」の“構造的な原因”

『改善しない部下=問題社員』とすることはできません。改善しない部下は多くのケースで、以下の要因が絡み合っています。

■(1)指示・期待が“抽象的すぎる”

例:「もっと早くして」「ちゃんと確認して」「しっかりやって」「普通にやって」

→ 指示に具体性が無く何をどう変えるべきかが本人には分からない。

■(2)注意の順番が“感情→事実”になっている

感情が先だと、相手は「防御的」になります。

■(3)業務量や優先順位が整理されていない

改善したくても、そもそもリソース不足で動けない。

■(4)関係性や心理的安全性が不足

「言うと怒られる」「相談すると否定される」「上司への信頼度が低い」

→ こうした背景があると部下の改善行動は止まります。

■(5)本人の特性(認知特性・経験値)

一部の行動は「特性」由来であり、“個人を責める”より“組織を仕組み化する”ことに着眼すると改善しやすい。


3.改善してもらうための「安全な注意・指導フロー(3ステップ)」

現場での実践で効果が高い手順を紹介します。以下の順番で行うだけで、改善確率が大幅に上がります。


STEP1:事実を確認し、相手の理解状況をそろえる

NG:「何でできないの?」
OK:「今日のA業務で○○が抜けていた認識で合っていますか?」

● 目的:認識のズレを正す
● 効果:反発が減る/本人が“気づき”を得る


STEP2:影響と期待を短く伝える

NG:「しっかりやって」
OK:「抜けがあるとBさんの作業が止まるため、次回は○○を入れてほしいです」

● 感情ではなく「影響」を伝える
● “次はどうしたいか”を短文で提示


STEP3:支援・方法・期限を“セットで”提示する

NG:「次は頼むよ」
OK:「フォーマットを一緒に確認しましょう。今日の17時までに下書きできますか?」

● 道筋が見えると改善行動が起こりやすい
● 支援を提示すると“責められた感”が消える


4.タイプ別の「響く注意の言い換え」

管理職が最も苦労するのは、“言い方によって改善スピードが変わる”こと。

■ 慎重・不安タイプ

NG:「早くして」
OK:「優先順位はA→Bで。Aが終わったら声をかけてください」

■ 自己肯定感低めタイプ

NG:「まだできてないの?」
OK:「ここまではできているので、次はこの部分を強化しましょう」

■合理タイプ

NG:「頑張って」
OK:「○○を○時までに仕上げるイメージです」

■反発タイプ

NG:「いいからやって」
OK:「AとB、どちらで進めたいですか?」

■マイペースタイプ

NG:「何度言えば分かるの?」
OK:「次回からは開始前にこのチェックを一緒に確認しましょう」


5.「改善しない」状態が続く場合の“安全な実務対応”

改善しない部下に対しては、『指導・評価・配置転換・記録』をどう扱うかで、ハラスメント・労務トラブルのリスクは大きく変わります。

① 指導記録の取り方

☑感情を入れず、「日時」「事実」「影響」「期待」「本人の返答」を記録
☑「怒った/指導した/注意した」は記録にならない

② 評価制度との連動

☑行動基準に照らして事実を蓄積
☑情緒的判断は避ける

③ 配置転換の検討

☑能力・特性・役割適性を踏まえ“合理的理由”と“本人への十分な説明”が必要

④ 就業規則上の措置(注意・指導・指示命令)

☑懲戒ではなく“改善の機会”としてのステップを丁寧に
☑懲戒を前提とする指導はハラスメントリスクが跳ね上がる


6.「改善しない部下」への注意で“やってはいけない”5選

① 他人との比較(○○さんはできているのに)
② 人格への言及(この仕事は向いてない・使えない)
③ 感情的な言葉(なんで?どうして?)
④ 曖昧な指示(しっかり・ちゃんと・早めに)
⑤ 投げっぱなし(次は頼むよ・任せたよ)

※いずれもハラスメント判定と結びつきやすいため要注意。


7.“安全な伝え方”万能テンプレ(そのまま使える)

【事実】今日の○○で△△が抜けていました。
【影響】この部分が遅れると全体の作業が止まってしまいます。
【期待】次回は○○を含めて共有してほしいです。
【支援】必要であればフォーマットを一緒に確認しましょう。

短いながらも、

◎責めていない
◎改善の方向性が明確
◎支援姿勢が見える

ため、最も誤解が少ない伝え方です。録音や文書でのやり取りになった場合でも説明の筋が通りやすい、比較的リスクの小さい注意文言の一例です。


8.それでも改善しない場合の“最終ステップ”

改善が見られない場合は、以下の順での対応を意識すると安全性が高まります。

1)認識の再確認(事実・意図・影響)
2)支援方法の見直し(教育・同行・OJT)
3)役割の調整(業務量・優先順位)
4)評価制度との紐づけ
5)配置転換の検討
6)外部専門家(社労士・弁護士)によるリスク評価
7)就業規則に基づく正式な懲戒手順の実施

※中小企業実務は「懲戒ありき」の指導ではなく、「改善後の活躍」を前提とした改善機会の確保が重要。


おわりに|響かない部下の改善は“性格”ではなく“仕組み”で進める

部下が動かない要因の多くは、「伝え方」「優先順位」「仕組み」「理解度のズレ」といった環境・構造にあります。ごくまれに、指導する立場である上司側の「世代間ギャップへの理解不足」や「ハラスメントに関する認識のずれ」が影響している場合もあります。

通常の組織であれば響かない部下に対して「適切な手順に基づく支援」さえ整えれば、多くの行動は改善します。

離職・反発・ハラスメントトラブルを防ぐ鍵は、指導の“質”と“構造” を整えることです。


関連サービス

管理職向け「伝え方・関わり方」研修
“改善しない部下”対応の個別コンサルティング
外部ハラスメント相談窓口(月額5,500円〜)
現場で“使われる”マニュアル整備サポート


FAQ

Q.厳しさがなくなるのでは?
→ 事実・影響・期待を伝えることで「厳しさ」と「安全性」は両立できます。

Q.感情的になってしまう管理職には?
→ 1文テンプレを使うと感情が入り込む余地が減り、安全に伝えられます。アンガーマネジメント研修などを組み合わせることも有効な選択肢の一つです。

Q.改善しない場合はすぐ懲戒ですか?
→ 懲戒ありきはハラスメントリスクが高く、段階的手順と記録が重要です。


管理職の「注意しても改善しない」を根本から解決しませんか?

部下の改善が進まない状態は、“性格”ではなく “関わり方・仕組み・伝え方” の設計で大きく変わります。

●指示が通らない
●反発・無視・遅延
●相談しない・黙る
●人間関係の悪化
●離職リスクの高まり

こうした課題は、適切なステップと支援を整えることで、安全に・再現性高く改善できます。

RESUS社会保険労務士事務所では、管理職の伝え方の見直しから仕組み作りまで、一貫したサポートメニューをご用意しています。

▶ 初回相談無料・お見積もり無料
部下指導の負担軽減・離職防止・トラブル予防まで、お気軽にご相談ください。

——
【お問い合わせフォームへ】


法令注記/免責事項

本ガイドは現行法令・指針を考慮していますが、ハラスメント判定そのものを行うものではありません。
個別事案の判断は、顧問社労士・弁護士など専門家への確認を推奨します。