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逆パワハラとは?裁判例に学ぶ部下対応と解雇の法的ポイント【2025年最新】

2023/06/29

(最終更新日:2025/08/18)

逆パワハラの定義と該当行為の例

逆パワハラは、近年注目を浴びている問題であり、労働環境や人間関係における重要なテーマです。一般的に、パワハラとは上司や上位者が部下や下位者に対して行う権力を乱用した嫌がらせや虐待のことを指します。逆パワハラはその逆の状況であり、部下や下位者が上司や上位者に対して権力を乱用し、嫌がらせや虐待を行うという問題です。

労働施策総合推進法(通称、「パワハラ法」)が施行され、職場のモラルハラスメントが注目されるようになってからは、様々なメディアでハラスメントが取り上げられるようになり、予想もしなかったようなハラスメント問題が次々に明らかになってきました。そして、良好な人間関係にあると思っていた職場でも、新入社員の入社など、組織の新陳代謝によってさまざまな軋轢が発生します。広く報道された事例で陸上自衛隊の自衛官候補生が指導官を銃撃し死傷した事件では、入隊の際に行われた適正検査では何ら問題なかったと言われており、問題社員を見抜くことがいかに困難かを証明しています。

 

労働施策総合推進法と逆パワハラの関係

いきなり『パワハラですよ!』と言われて冷静に対応できますか?

適切に業務指導を行っていても、部下から「パワハラですよ!」と言われれば誰でも焦ります。また、軽率な行為をセクハラと主張され、金銭を要求するケースも増えています。業界内で報告されている事例では、あえてセクハラ事件を起こして企業や上司から高額な示談金を受け取り、海外旅行や高級ブランド品で着飾り豪遊し、尽きれば転職を繰り返している人もいるようです。

現代の企業にとって最大のリスクといえるパワハラ問題ですが、そのなかでも特に逆ハラスメントは解決が非常に難しい問題の一つです。

 

逆パワハラの事例と裁判例

女性社員による反抗的態度と暴言の事例(山本香料事件 大阪地裁 H10.7.29)

たとえばある判例では、女性社員が、バーで上司から受けたセクハラ発言をきっかけに反抗的な態度や暴言を繰り返し、関係のない他の社員にまで暴言を繰り返したことを何度も注意したが従わず、数年かけて教育を試みても改善されなかったためやむを得ず行った解雇について無効を争われた事件がありました(山本香料事件大阪地裁H10.7.29)。

男性社員による女性上司への暴言の事例(社会福祉法人蓬莱の会事件 H30.1.25)

また、男性社員が女性上司に対して会議での書記係をするよう指示したり、「やってられるか」など他のスタッフがいる前で女性上司に暴言を吐くなどしたことを理由に解雇された事案では、一審では解雇は有効とされたものの、控訴審では解雇を無効と判断し650万円を超える支払いと雇用継続を命じました(社会福祉法人蓬莱の会事件H30.1.25)。

 

ここで紹介した以外にも、解雇が有効とされた事件や労災認定がされた逆パワハラ事案があります。➡その他の逆パワハラ裁判例はこちらから

 

逆パワハラは裁判で認定されにくい?【解雇有効・無効の判断基準】

上司に対して暴言・暴力行為をたびたび行うような悪質な逆パワハラ行為であっても、経緯や内容、傷害の程度や反省の姿勢によって会社の行った解雇が無効となった例は多く、一般的な感覚では悪質な問題社員と感じる事案でも簡単には解雇できず、実務の現場でも問題社員の逆パワハラ行為に悩まされている上司がたくさんいます。特に上司は職務的にも優越的な地位であることが一般的なため、パワハラ要件の一つである「優越的な地位」が逆パワハラでは認定されづらいといわれており、ハードルの高さを知っている部下が調子に乗って『助長される』こともあるはずです。

これらの例からも明らかなように、逆パワハラは単なる逆転した形態のパワハラではなく、深刻な問題として認識すべきといえます。従業員や部下が上司や上位者に対して嫌がらせや虐待を行うことは、労働環境や人間関係を悪化させるだけでなく、組織が異常な状態となり、社内での努力や自浄作用では解決できないほどの問題になる可能性があります。

(関連ページのご案内)

パワハラ上司や働かない問題社員を解雇する際に検討するべき事項について、法的リスクを踏まえてこちらのページで詳しく解説しています。▶従業員を辞めさせたい!パワハラ上司・働かない社員を解雇できる条件と法律上の注意点【2025年最新版】

 

なぜ逆パワハラは認定が難しいのか

逆パワハラの解決方法

逆パワハラ問題はトラブルになってから解決することは困難で、問題が起こる前に組織内で意識改革を行うことが不可欠です。従業員や上司に対して、パワハラや逆パワハラのリスクや影響を啓発する研修など教育プログラムを実施することが重要です。これにより、関係者が逆パワハラの存在やその深刻さについて理解し、予防策や対処法について学ぶことができます。また、組織内にパワハラを報告するためのチャネルや相談窓口を設けることが有効です。これにより、被害者は安心して問題を報告することができます。

逆パワハラ対策には適切なルールや規制の整備も必要です。組織は明確なガイドラインや規程を策定し、逆パワハラ行為に対しても厳正な処分を行うことを示すことで、問題を早期に発見し、対策することができます。ハラスメント問題は『従業員への教育』と『早期発見するための組織体制』が重要です。

さらに、従業員のメンタルヘルスのサポートや1on1など、個人に対する心理的なサポートやコミュニケーションの場を提供することで、逆パワハラの予防につなげることができます。

逆パワハラ問題は、組織全体のパフォーマンスだけでなく、パワハラ問題が表にでれば、企業の採用や商品の売れ行きを左右する企業ブランドにも大きな影響(「レピュテーションリスク」ともいいます)があります。

逆パワハラは実際に起きており、加害者が被害者となり、被害者が加害者となるなど入れ替わったり、また初期対応のミスによって弁護士をいれなければ解決できないような大きな問題に発展するリスクをはらんでいます。どの組織にも起きうる逆パワハラ問題ですが、事前の準備が不十分な企業は当然にリスクも高まっています。他人を正確に見抜くことの難しさは人事の永遠の悩みですが、些細ないざこざが大きな問題にならないよう、企業側として安全配慮義務を怠っていると判定されるような『不利な事実を作らない』ように、できることにコツコツと取り組むことが唯一の解決方法と言えます。

 

逆パワハラ発生時の対応手順

  1. 状況の事実確認と証拠収集

  2. 関係者ヒアリングと記録作成

  3. 必要に応じた専門家(弁護士・社労士)への相談

 

まとめ:逆パワハラは組織リスク

  • メンタルヘルスや職場環境への影響

  • 企業ブランドや採用活動への悪影響(レピュテーションリスク)

詳細な裁判例の解説は➡逆パワハラの裁判例と企業対応【専門集】をご覧ください。

 

本記事は、厚生労働省「職場におけるハラスメント防止のための指針」(令和2年6月施行)および労働施策総合推進法を参考に作成しています。記載内容は一般的情報であり、個別案件については弁護士や社会保険労務士等の専門家へご相談ください。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 逆パワハラとは何ですか?

A. 逆パワハラとは、部下や下位の立場にある従業員が上司に対して行う嫌がらせや暴言・暴力行為を指します。一般的な「上から下へのパワハラ」とは逆の構造で発生します。

Q2. 逆パワハラは法律で禁止されていますか?

A. 労働施策総合推進法(パワハラ防止法)では明確に「逆パワハラ」という言葉はありませんが、嫌がらせや暴力行為は労働契約法・民法上の債務不履行や不法行為に該当し得ます。組織として防止措置を講じる必要があります。

Q3. 逆パワハラで部下を解雇することはできますか?

A. 暴言・暴力などが繰り返される場合でも、裁判では解雇が無効とされるケースも少なくありません。解雇の有効性は「就業規則」「注意・指導の履歴」「改善の機会を与えたか」などで判断されます。専門家に相談しながら慎重に進める必要があります。

Q4. 逆パワハラの裁判例はありますか?

A. はい。たとえば「山本香料事件(大阪地裁H10.7.29)」では、女性社員が暴言を繰り返し解雇された事例があります。また「蓬莱の会事件(H30.1.25)」では、男性社員の暴言を理由にした解雇が控訴審で無効と判断されました。

Q5. 逆パワハラが疑われるとき、上司はどう対応すべきですか?

A. まずは事実確認と証拠収集が重要です。メール・録音・第三者の証言を記録し、感情的に対応せずに組織として相談窓口や専門家に報告しましょう。初期対応を誤ると「パワハラ加害者」にされるリスクもあります。

Q6. 逆パワハラを防ぐにはどうすればいいですか?

A. 定期的なハラスメント研修や1on1ミーティングを導入し、部下との関係性を見える化することが効果的です。また、社内に外部相談窓口を設置しておくと、早期に問題を把握でき予防につながります。➡詳しくは研修・外部相談窓口サービス

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