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【2025年版】退職代行が来たときの会社の安全な対応| 初動30分で差がつく“炎上しない進め方”
2025/11/13

監修:RESUS社会保険労務士事務所(社会保険労務士 山田雅人)
はじめに|退職代行トラブルは“初動”で決まる
退職代行サービスの利用は年々増加しています。
中でも近年は、「対話を避けたい」「会社と距離を置きたい」という心理を背景に、連絡の初動から退職代行が介入するケースが増えています。
退職代行を利用されたからと言って、会社が悪い・社員が悪いという話ではありません。
重要なのは、
『退職代行業者とのやり取りをいかに冷静に・淡々と進めるか』
これだけです。
初動のミスは、
・SNSの批判
・口コミの低評価
・バックレ状態
・貸与物未返却
などの二次トラブルにつながります。
本ガイドでは、企業側がとるべき安全な初動対応・実務手順・炎上防止策をまとめています。
1.退職代行から連絡が来たときの「最初の30分」
退職代行を受けた際、最も重要なのは“最初の30分の落ち着いた対応”です。
■(1)まずは「受領しました」の一言でOK
退職代行は、申出があった事実を伝える役割です。初動でやることは、次の一言だけです。
「退職のご連絡につきまして、内容を受領しました。」
これ以上の深掘りは不要です。
■(2)感情的な反応は絶対にしない
・「直接連絡させてください」
・「本人は本当に辞めたいのですか?」
・「こんな辞め方は非常識だ」
こうした発言は、すぐにスクショされ、SNS投稿につながるケースがあります。
■(3)退職手続の“必要書類”だけ淡々と案内
初動では次を伝えるだけで十分です。
・退職日(会社側が確認可能な範囲)
・返却が必要な物品
・離職票等の扱い
・有休の消化希望確認
・書類の送付先
あとは後述の「安全フロー」に沿って進めます。
2.絶対にやってはいけないNG対応10選
退職代行時のトラブルは、会社側の“ひと言対応”が引き金となる場合が多数です。
以下は法律上も実務上も避けるべき対応です。
■ NG1:本人に直接連絡しようとする
→ トラブルの火種。退職代行の役割を無視する行為と捉えられやすい。
■ NG2:辞める理由を追及する
→ 感情的対立につながりやすい。
■ NG3:引き止め交渉
→ ほぼ100%逆効果。退職代行利用者ほど「強引な接触」に敏感。
■ NG4:出社を強制
→ 労務リスク・労基署申告の誘因になる。
■ NG5:退職日を一方的に拒否
→ 提出方法に関係なく“退職の意思表示”は有効。
■ NG6:貸与物返却を強圧的に要求
→ トラブルの典型パターン。手順化して淡々と通知する。
■ NG7:未払い賃金の問い合わせを軽視
→ 訴訟リスク。初動で誠実に回答することが重要。賃金不払い請求は行政指導・弁護士介入・評判リスクの三本立ての「最重要対応案件」です。
■ NG8:SNSでの発言を警告する
→ 防衛のつもりが炎上の引き金になることがある。
■ NG9:代行業者への攻撃的な発言
→ そのまま本人に伝わり、関係悪化に直結。
■ NG10:解決を後回しにする
→ 遅れた対応ほど、本人の不信感が大きくなる。
3.退職代行とのやり取りの“安全なフロー”
退職代行の連絡を受けたら、以下の手順で進めるのが最も安全です。
■ Step1:申出を受領
「退職のご連絡につきまして、内容を受領いたしました。」
ここまででOK。
■ Step2:退職日を確認
退職日は以下のいずれかを基準に決定します。
・会社で定める退職ルール
・本人が指定した退職日
・有休消化の希望
・就業規則における“退職申出の期限”
※紛争化していない限り、本人の希望日を可能な範囲で考慮するほうが全体として円滑に進みやすく、安全です。
■ Step3:必要書類の案内
・離職票
・健康保険資格喪失確認通知書
・源泉徴収票
・年金手続
・会社備品の返却方法
■ Step4:貸与物返却の手順を明確化
返却方法は、
・郵送
・宅配便
・会社の返却ボックス
いずれかで案内するとトラブルが減ります。
■ Step5:給与・未払い分の精算
未払い賃金・立替金の扱いについて“書面で通知”しておくと安心。
■ Step6:退職日確定 → 書類発行
淡々と、丁寧に、感情を出さずに手続を完了させます。
4.SNS炎上・口コミ悪化を防ぐ“認知のズレ”対策
退職代行利用者は「会社が自分を雑に扱ってきた」という認知を持っている場合が多いため、ここを修正しないとSNS批判につながります。
●ポイントはたった1つ
「丁寧に説明してくれた」
これを本人に感じてもらえれば、リベンジ退職・SNS投稿リスクは大幅に減ります。
そのために企業がやるべきは、『一貫した・丁寧な・簡潔なコミュニケーション』です。
やってはいけない言い方
・「ルールだから、この通りにやってください」
・「こういう辞め方は迷惑です」
・「とにかく返してください」
推奨される言い方
・「手続きを円滑に進めるため、必要事項をご案内いたします」
・「ご希望があれば、有休についても確認いたします」
・「返却方法は3つありますので、ご都合の良い方法でご返却ください」
言い方一つで炎上リスクは大きく変わります。
5.書類・貸与物・有休消化に関する実務的注意点
退職代行会社が介入した場合でも、退職手続の基本は通常と同じです。
■ 書類
・離職票
・源泉徴収票
・社会保険資格喪失関係
→ 郵送で問題なし。本人が来社する必要はありません。
■ 貸与物
万が一返却が遅れても、
強圧的な言い方はNGです。
■ 有休消化
退職日までに取得できる範囲で調整可能。
「会社が一方的に拒否」は避けるべきです。
6.バックレ/連絡遮断されたときの対応
退職代行から連絡が来ていても、本人が貸与物返却や書類に対応しないケースがあります。
この場合は以下の3ステップで進めます。
Step1:書面で通知(郵送)
・返却物
・退職日
・給与の精算
を「通知書」として送付。
Step2:連絡を強制しない
→「連絡がない」「対応しない」こと自体を責めない。SNS批判につながりやすい。
Step3:手続は淡々と進め、後追いは最小限
→ 必要な手続が完了すれば、それ以上の接触は不要。
7.トラブルを防ぐための社内整備(チェックリスト)
□ 退職時の手続説明文(退職ガイド)が整備されている
□ 退職代行への初期対応テンプレートがある
□ 担当者の言い方・伝え方が標準化されている
□ SNS・口コミのリスクについて社内で理解がある
□ 外部相談窓口がある(不満を外部に出す前の“受け皿”)
8.まとめ|退職代行は“組織の鏡”
退職代行の利用は、社員一人の問題ではなく「職場で何が起きているかのシグナル」でもあります。
・安心して相談できる職場か
・ミス指摘やコミュニケーションが適切か
・不満が溜まりやすい体制になっていないか
これらを整えることで、退職代行やリベンジ退職を減らすことができます。
RESUS社会保険労務士事務所では、退職トラブルの初期対応から、相談窓口の設置、研修、制度改善まで一貫して支援しています。
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