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【2026年対応版】管理職の労働時間管理 完全ガイド|名ばかり管理職・深夜メール・テレワーク残業のリスクと実務対策

2025/11/14

(監修:RESUS社会保険労務士事務所/社会保険労務士 山田雅人)

2026年は、中小企業にとって「管理職の働き方をどうするか」が最重要テーマになります。勤務間インターバル、14日連続勤務、深夜業務、テレワークの時間管理など、従来は一般社員向けとされていた健康確保措置が、管理職にも実質必須に近い運用へと変わりつつあります。2026年の働き方改革で、最も注目されるテーマの1つが『管理職の労働時間管理』です。

加えて、2025年時点の監督事例を見るかぎり、次の行為はすでに“問題視の対象”になっています:

● 管理職の深夜0時のメール
● 休日LINE・チャットの指示
● 在宅勤務の早朝・深夜作業
● シフトに入る管理職(実態は一般社員)
● 夜勤・当直を担当する管理職
● 「役職手当1万円」で管理職扱い
● 名ばかり管理職による未払い残業代請求(100〜400万円)

つまり――
管理職の働き方=企業の安全配慮義務の“本丸” として扱われる時代に入ります。

本ガイドでは2025年時点の公開情報と実務事例をもとに、2026年以降の企業が“必ず押さえるべき領域”を、通常より深く、わかりやすい内容で整理しています。

※最終的な制度内容は、厚労省の正式発表を必ずご確認ください。

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1.2026年、最初に狙われるのは“管理職”

2026年の監督指導は、近年の動向から見ても、次の領域が重点的に取り扱われる可能性が高いと考えられます。

■ 1)管理職の深夜・休日対応の増加

深夜メール、休日LINEなどが当たり前になっている企業は、「管理職の健康確保義務違反」として注目されやすい状態です。

■ 2)テレワークの“見えない労働時間”

在宅勤務は
・早朝
・深夜
・すきま時間
に業務が入り込み、長時間労働の把握義務が企業にのしかかっています。

■ 3)名ばかり管理職の横行

実態が一般社員と同じなのに「管理職だから残業代ゼロ」として扱うケースは、2025年時点でもすでに是正の対象。

2026年の方向性は明確です:

管理職だからといって労働時間管理を免除する“企業慣行”は、もはや成立しない。

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2.“管理職だから残業代ゼロ”は通用しない(2026以降の考え方)

管理監督者は、労働基準法上の「特別な地位」にある者だけが該当します。肩書きが店長・課長だからといって、当然に管理職扱いになるわけではありません。

■ 法律上の管理監督者に必要な要素(厚労省見解より整理)

● 決裁権・人事権・予算権など、企業経営に近い権限
● 出退勤の時刻に裁量がある
● 実態として管理職と認められる待遇(手当額含む)
● 他の社員と異なる勤務管理

■ よくある“名ばかり管理職”の典型例

● 役職手当 5,000〜15,000円程度の少額支給
● 出退勤は一般社員と同じの事実上固定出勤時間
● シフト勤務(早番・遅番・夜勤)
● 部下の教育と現場作業が中心(プレイングマネージャー)

この場合、監督署で管理職とはほぼ認められません。「自分が該当しているな…」と思ったら、まずは社内で勤怠記録(証拠)を収集しましょう。

■ 実務の典型例

● 未払い残業代300万円を請求される(過去3年遡り)
● 店長クラスなら1年で百万円を超える未払い残業代が発生する可能性も
● 係長クラスの“裁量なし管理職”で会社側が敗北

これらは特定の案件ではなく、『企業規模に関わらず実務でよくある典型パターン』です。

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3.2026年に問題化する“管理職のヤバい勤務実態”トップ7

■1)深夜0時のメール・指示

→ 労働時間扱いの可能性が高い。
→ 部下のインターバルも破壊するため指導対象。

■2)休日のLINE・チャット確認

→ 「5分だけでも労働」と判断されるケースがある。
→ 管理職=休めない状況の固定化が危険。

■3)在宅勤務での早朝・深夜作業

→ 企業側の時間外把握義務が及ぶ方向。
→ 2026年は重点項目になる可能性。

■4)管理職が欠員シフトに入る(早番・遅番・夜勤)

→ 実態が一般社員と同じため“名ばかり”認定リスク。

■5)休日の業者・顧客対応(不動産・建設に多い)

→ 実質休日が消滅し、連続勤務14日問題にも直結。

■6)夜勤・当直を担当する管理職

→ 管理職への夜勤は健康確保義務の面で強い矛盾を生む。

■7)退職後に“管理職なのに残業代”を請求される

→ 100〜400万円クラスの請求は中小企業でも珍しくない。勤務実態記録の無い会社が請求されれば支払い不可避。

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4.名ばかり管理職の認定基準(解説版)

【基準1】権限がない

・採用の最終決裁
・懲戒の決定
・予算決定の権限
がない管理職は、形式だけの可能性が高い。

【基準2】勤務時間に裁量がない

・出退勤が固定
・業務が現場対応
→ 管理職の要件として最も欠けやすい。

【基準3】待遇が一般社員と同じ

・役職手当が低額
→ 手当で残業代の代替をしていると判断されやすい。

【基準4】現場作業中心

→ 飲食・介護・小売で典型的な“現場店長型”。

結論:肩書きではなく“実態”が全てです。

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5.管理職にも必要になる“健康確保措置”(2026運用)

※以下は2025年11月時点の方向性を基に、慎重な対策として整理。

● 勤務間インターバル(管理職にも)
● 14日連続勤務の防止
● 夜勤明け当日勤務の原則回避
● 深夜対応の許可制
● 在宅勤務の時間帯管理
● 長時間労働アラート
● メンタル不調の初期対応

管理職だけは“例外”にする企業慣行は、2026年以降ますます通用しなくなります。

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6.中小企業が取るべき実務(今すぐすべき対応の5ステップ)

STEP1.管理職の勤務実態の可視化

● 出退勤の打刻を外させるのは逆効果
● 「管理職=自由に働ける」はリスク最大
● 在宅・外勤の時間も把握

STEP2.深夜・休日の連絡ルールを明文化

● 管理職による深夜メール=部下の長時間労働の温床
● 2026年は“深夜の指示連絡”自体が問題化する可能性あり

STEP3.在宅勤務の時間管理を導入

● 早朝出勤の扱い
● 夜間作業の申請
● チャット確認=労働時間となるケース

※“業務性”が認められれば労働時間と判断される可能性があります。

STEP4.管理職規程を作り直す

● 管理職の権限・裁量
● 労働時間の扱い
● 深夜対応の禁止
● テレワーク時のルール
→ 一般社員と同じ就業規則では不十分。

STEP5.管理職研修を年1回

● ハラスメント×長時間労働の複合問題が最多
● 「やってはいけない深夜指示」を明確に教育
● 実務とセットで教える必要

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7.就業規則モデル(条文案)

(管理職の深夜業務)
第◯条 会社は、管理職の深夜帯(22時〜翌5時)の業務を原則として禁止する。
2 緊急の場合に限り、所属長が事前に許可したときはこの限りではない。

(管理職の休日連絡の取扱い)
第◯条 休日中の業務連絡は、原則として禁止する。
2 緊急時における連絡は業務記録に残すものとする。

(在宅勤務時の早朝・深夜作業)
第◯条 在宅勤務中の早朝(5時以前)及び深夜(22時以降)の業務は禁止する。

(管理職の健康確保措置)
第◯条 管理職の勤務時間が長時間に及ぶ場合、会社は必要な健康確保措置を講じる。

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8.FAQ(よくある質問)

■Q1.管理職でも勤務間インターバルは必要?
A.健康確保の観点から必要とされる方向です。

■Q2.部長でも残業代請求は可能?
A.可能なケースがあります。実態が管理監督者でなければ対象です。

■Q3.深夜メールはハラスメント?
A.部下の健康確保を阻害する行為とされ、問題視される傾向があります。

■Q4.役職手当1万円で管理職扱いできる?
A.実務では困難です。待遇として不十分と判断される可能性が高いです。

■Q5.テレワークの早朝作業は労働時間?
A.実質的に業務であれば労働時間とみなされる可能性が高いです。

■Q6.管理職が労災認定されるケースは?
A.長時間労働が原因と疑われる場合には、労災認定が検討されることがあります。

■Q7.退職後に過去2年分の残業代請求はできる?
A.可能です(安全配慮の観点からこうした事例は少なくありません)。

■Q8.名ばかり管理職ではないか不安な場合、何を確認すればよいですか?
A.出退勤記録、業務指示の記録、役職手当の額、権限の範囲など、“実態”を確認することが重要です。状況によっては就業規則の見直しや管理職基準の整備が必要となる場合があります。

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9.まとめ|管理職の働き方改革は“企業の本丸”

2026年は、「管理職だから労働時間管理外」という古い慣行が最も強く否定される年になります。

● 名ばかり管理職リスク
● 深夜対応・休日連絡
● テレワークの隠れ残業
● インターバル・連続勤務
● メンタル不調・健康確保義務

すべてがつながり、管理職の働き方が企業の安全配慮義務の中心となる時代に入ります。2026年は、働き方改革以降で最も大きな労務管理の転換期になると予想されています。

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