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【2026年版】“辞められると困る部下”が反発・無視・指示拒否をするときの実務ガイド|離職リスクを抑えながら組織を守る安全な対応ステップ
2025/11/27

(監修:RESUS社会保険労務士事務所/社会保険労務士 山田雅人)
辞められると困る部下が反発・無視・指示拒否をする時、強く注意できず放置してしまうと職場の空気悪化・離職の連鎖・労務トラブルへ発展するおそれがあります。本ガイドでは、感情ではなく “手続きと記録” で安全に改善を促し、離職リスクを抑えながら組織を守る実務対応をわかりやすく解説します。
1.はじめに|「強く指導できない」時代の管理職の苦悩
最近の労務相談で急増しているのが、「辞められると困る部下ほど、強く言えなくなる」という問題です。
・話しかけても無視する
・軽い舌打ちや溜息
・目を合わせずそっけない返事・反発的な態度
・指示に対し「今すぐ必要ですか?」「あとでいいですか?」と詰め返す
・他の社員に職場の不満や愚痴を言いまわる
ところが小規模事業者では、
✅いきなり「辞める」と言われると業務が止まる
✅採用から教育まで同レベルまで育成する余力がない
✅パワハラと言われるのではないか
という切実な事情と心理が重くのしかかり、結果として、不快な態度・指示拒否・軽い反抗が “黙認せざるを得ない”状態が続くことがよくあります。
しかし、放置すると——
・職場の空気悪化
・離職の連鎖(業務の停滞)
・管理職のメンタル不調
・思わぬ労働問題や労基署への申告事案
・SNSや口コミでの投稿(レピュテーションリスク)
へと発展し、事業継続に影響が及ぶケースも少なくありません。
「辞められると困る」気持ちは理解できますが、指示の無視・悪態(舌打ちやため息)・不満の言いふらしなど反発を許すことは会社にとって最大のリスクです。
本ガイドでは、労働法律と経営実務の両面から、態度の悪い部下への対応と職場を立て直す方法を考えます。
2.“辞められると困る部下” が見せる典型的な初期兆候
実務上の相談では、次の兆候が多く見られます。
| 初期症状 | 悪化すると |
|---|---|
| 無視・返事をしない | 報連相が断絶する |
| 軽い舌打ち・溜息 | 周囲の士気が下がる |
| 指示への反発 | 業務停滞・秩序不安定・顧客クレーム |
| 目を合わせない | 人間関係悪化・離職率上昇 |
| 「自分のやり方」を強調 | 組織ルールを無視・属人化 |
| 指導時に不機嫌・黙り込む | 雰囲気悪化・指揮命令系統の崩壊 |
初期対応が遅れるほど、“企業側に不利な事実” が積み上がりやすくなるため、対応が必要です。
3.企業にとって最も危険なのは「放置」ではなく「初期対応のミス」
管理職が感情的に叱責したり、裏でスタッフの不満を漏らしたり、本人に改善の機会を与えず退職勧奨ととられるような事実上の処分に進むと
→ パワハラ被害者に立場が逆転
してしまうリスクがあります。逆パワハラ事案では、解雇が無効とされた裁判例も多く、企業側の実務としては 「適切な手順と指導の記録化」「属人的業務の棚卸し」「業務継続のための補填準備」 が求められます。
4.辞めさせずに改善を図る“安全な指導の型”
まずは適切な業務的指導が求められます。指導は次の流れで行うと安全です。
① 私的感情の排除
「態度が悪い」ではなく “業務への影響” に焦点を当てる
② 事実・日時・行為を具体的に
例)
×「いつも反発的」
◎「11/21・11/26の朝礼で『それって今すぐ必要ですか?』と発言するなど指示内容に合理的理由なく否定的な返答が続き、業務遂行に支障が生じた」
③ 期待行動の明確化
例)
「指示への即時否定ではなく、まず指示の内容を聞いたうえで、期限内の遂行に問題や不安があれば相談をしてほしい」
④ 相手の言い分の確認(形骸化しない形で)
「困っていることや改善のために必要なことがあれば教えてください」
⑤ 文書・議事録として残す(最も重要)
✅注意を行った事実と日時
✅再発時の対応方針
✅本人の返答・リアクション内容
を文書に記録(指導記録書・メール・1on1記録等)。後にトラブルや争いとなったときの証拠として保管。
5.“やってはいけない対応”チェックリスト
| NG | 理由 |
|---|---|
| 放置 | 行動が助長・職場崩壊 |
| 感情的な叱責(溜めて爆発) | パワハラと主張されやすい |
| 一部の社員に愚痴 | 評価の私的感情と判断される可能性 |
| 安易な配置転換 | 会社の対応責任の逃避と評価される |
| 評価を下げて黙らせる | 不利益取扱いの主張リスク |
“強く叱る”のではなく、“手続きを踏んで改善させる” がもっとも安全です。
6.逆パワハラが疑われる場合の対応フロー
軽度 → 中等度 → 重度の3段階で検討します。
7.「属人的業務の棚卸し」「業務継続のための補填準備」
規模が小さくなるほど一人にかかる業務が大きく、1名の欠員で業務が回らなくなる心配が常に上がります。
◆属人的業務の棚卸し
ひとりの社員でしかわからないような業務は「属人的業務」であり、離職だけでなく休業や長期休暇など誰にでも起こりうる「業務離脱」によって業務が停滞する大きなリスクです。
・担当業務一覧の作成
・作業マニュアルの作成
・業務日報、報連相ルールによる共有の習慣化
などで、いったん属人的業務を棚卸しすることが必要です。なお、人間関係が悪化している等の理由で直接指導するのが難しい場合でも、特定の社員だけに対応するのはトラブルを悪化させるおそれがあります。そのため、安全な方法としては、全従業員を対象とした「業務負担・引継ぎ状況・仕事の困りごと」を確認する『社内アンケート』を通常の組織改善の一環として実施すると、個人攻撃にならず組織改善を進めやすくなります。
◆業務継続のための補填準備
ある程度の棚卸しが準備できると、それら業務について『DX化』『パート・アルバイト活用によるチーム業務化』『上位職による業務共有化(引継ぎ)』など、『辞められると困る部下』の荷を下ろして業務を軽くします。なお、棚卸しや業務共有化は、特定の社員を辞めさせるための準備ではなく、誰が欠けても業務が止まらない状態を作るための通常の組織運営として行うことが重要です。
「辞められると困る」で行き詰まらない第三者の活用
小規模事業者の場合、【経営者⇔本人】の対立構造になると、どちらかが辞める(キレる)まで終わらないケースが多く、安定した業務維持に大きな傷跡を残す可能性があります。当人だけでは解決できない問題も、
✅外部相談窓口・ハラスメント防止研修の導入
✅第三者によるアンケート・中立的なヒアリング
✅専門家による改善のアドバイス
を実施すると、組織運営上の問題点が明らかとなったり、評価制度や面談、コミュニケーション方法の改善によって良い結果になることもあります。
8.まとめ|最初の一手で未来が決まる
辞められると困る社員の問題行動は、早期に・感情ではなく・手続きで対処することが最も安全です。
企業が守るべきポイントは次の3つです。
1.不利な事実を作らない(感情的・場当たり的な対応をしない)
2.記録・経緯・証拠を必ず残す
3.離脱を想定した組織再構築と、第三者を介入させる
問題行動が起きたときに失敗できない理由は、組織の空気・離職・業務・採用・企業ブランドに影響するためです。
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「辞められると困る社員」だからこそ、危機が深刻化する前の初期対応が重要です。
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➡ 従業員を辞めさせたいときの法律上の注意点【2025年最新版】
➡ 職場の外部相談窓口(月額5,500円)
※本記事は、厚生労働省「職場におけるハラスメント防止指針」および労働施策総合推進法を参考に作成しています。
※記載内容は一般情報であり、個別の案件については顧問弁護士・顧問社労士等の専門家へご相談ください。