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なぜ「従業員第一主義」を宣言できないのか──リスクだけではない、真の成長戦略としての視点

2019/12/18

(最終更新日:2025/08/25)

序章:揺れる今だからこそ見つめ直す「従業員第一」

2022年に本格施行された働き方改革関連法を皮切りに、ハラスメント対策、労働時間の適正管理、人手不足などの課題が経営課題として顕在化しました。コンプライアンスを怠れば、「ブラック企業」として社会的信頼を一気に失うリスクも高まっています。

こうした状況の中、「従業員第一主義」という言葉が注目されていますが、実際にこれを公言・実践する企業はまだ多くありません。なぜそのような状態が続いているのでしょうか?


従業員第一主義とは?

「従業員第一主義」とは、企業の経営判断において従業員の幸福や働きやすさを優先する方針を意味します。

  • 顧客や株主の利益と対立するものではなく、むしろ従業員の満足度が高まることで、サービス品質や顧客満足、企業価値が向上する好循環が生まれます。

  • 正社員だけでなく、アルバイト、パート、派遣スタッフなども含む“全ての従業員”を対象とします。

 


【最新事例】従業員第一主義の実践例と成果

✅ 7Reasons(広告業界)

創業時から完全リモート体制。仮想オフィスやメンタル面談などを通じて社員の働きやすさを追求。業績は前年比2倍超を記録。

朝日新聞「はたらく人ファースト」を貫く10社(2025年3月)

 

✅ さくら住宅(住宅リフォーム)

社員が顧客とともに株主になる「お客様株主制度」を導入し、社員の定着率と顧客満足度が向上

SBIC「徹底した社員第一主義で人材が育つ企業」(2025年4月)

✅ リッツ・カールトン、スターバックス、サウスウエスト航空

世界的に有名な“従業員ファースト企業”が、サービス品質で顧客ロイヤルティを最大化し成功。


メリット:従業員第一主義で得られる成果

効果 内容
✅ 求人応募数の増加 「従業員を大切にする会社」という明確なメッセージは、求職者に強く響く。
✅ 離職率の低下 組織への愛着が深まることで、従業員が長く働き続けやすくなる。
✅ トラブルの予防 ハラスメント防止や労使トラブルの未然防止につながる。
✅ IPO審査への好影響 法令遵守・労務管理が整備されていない企業は上場審査で排除対象となる。
✅ 社会的信用の獲得 働き方・人権・多様性に配慮する企業姿勢が社会的評価の向上に直結。

 

なぜ「従業員第一主義」が宣言されにくいのか?

顧客離れや株主からの批判への懸念

「顧客第一じゃないのか」「コスト増になるのでは?」という不安が先行しがちですが、実際には従業員を大切にする企業こそ、サービス品質が高まり顧客ロイヤルティが向上する事例が多くあります。

表明しても実行が伴わないと逆効果

スローガン倒れや“片想い経営”(従業員に想いが伝わっていない状態)にならないよう、具体的な取り組みと整合性のある制度設計が必要です。


デメリット(対策とセットで考える)

懸念 解説と対策例
☑ コスト増 例:福利厚生や時短勤務などの導入コスト。ただし採用・定着コストとの相殺でプラスに。
☑ 売上への即時効果が薄い 短期的な売上重視の経営には不向きな面も。ただし中長期でのブランド構築と信頼獲得に貢献。

 


結論:従業員第一主義は“理想論”ではなく“成長戦略”

短期的な損得勘定では測れない価値――
それが「従業員との信頼関係」「健全な組織風土」「持続可能な経営基盤」です。

社会全体が「ヒトを大切にする経営」に舵を切る中、従業員第一主義を選択する企業こそ、これからの時代に求められる組織と言えるでしょう。


FAQ(よくある質問)

Q1. 従業員第一主義を掲げると顧客満足が下がるのでは?

A:むしろ逆です。
従業員の満足度が高まれば、接客品質やサービス意識が自然と向上します。従業員第一は顧客第一の土台です。


Q2. 法律的に「従業員第一主義」と明記する義務はありますか?

A:ありません。
ただし、就業規則や評価制度で「従業員重視の方針」が裏付けられていない場合、表明だけでは信頼されません。制度整備が重要です。


Q3. IPOやM&Aではプラスになりますか?

A:大いにあります。
法令遵守、人事制度、内部通報制度などが整っている企業は労務監査・デューデリジェンスで高評価されます。


Q4. 小規模企業でも従業員第一主義を掲げるメリットはありますか?

A:もちろんあります。
むしろ小規模企業こそ人材流出が命取りになるため、**「定着力=競争力」**に直結します。


Q5. 「従業員第一主義」と「顧客第一主義」は両立できますか?

A:十分可能です。
矛盾するものではなく、従業員が満足してこそ、良いサービスが提供できるという連鎖が生まれます。


おわりに

「未来の経営に正解はない」と言われる現代ですが、過去の失敗は豊富な教訓を残しています。その中でも、「従業員を軽視した企業は遅かれ早かれ淘汰される」という現実は変わりません。

当事務所では、従業員第一主義を実現したい企業様向けに、以下のようなサポートを提供しています:

  • 社内制度の設計・整備

  • ハラスメント相談窓口設置

  • ES(従業員満足度)調査と改善提案

  • 労務監査・IPO準備支援

ご相談・お問合せは以下よりどうぞ。

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