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逆パワハラの裁判例と企業対応【専門集】アクティス事件・蓬莱の会事件ほか
2025/08/18
1. はじめに
本ページでは、逆パワハラ(部下から上司への嫌がらせや業務妨害)が裁判でどのように扱われてきたか、有効とされた事例と無効とされた事例を整理しています。
その上で、企業がどのように対応すべきか、専門家の観点から解説します。
2. 逆パワハラ解雇が有効とされた裁判例
アクティス事件(東京地判 平成22年11月26日)
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部下がセクハラ対応への不満を理由に業務命令を感情的に拒否し、上司や同僚に対して暴言・中傷を繰り返し、メールや電話で業務を妨害。
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会社は退職勧奨→普通解雇を実施。裁判所は「関係修復困難+改善努力あり」と判断し、解雇を有効と認定
➡ 逆パワハラの基本的な定義や予防策はこちら:総合解説ページ
3. 逆パワハラ解雇が無効とされた裁判例
蓬莱の会事件(東京高判 平成30年1月25日)
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男性社員が女性上司に対し、会議で暴言を繰り返し、威圧的態度を取るなど。第1審では解雇が有効とされたが、控訴審では「配置転換の機会を与えていない」として解雇無効。雇用継続と約650万円の支払い命令が確定
4. 逆パワハラ行為による精神的被害と企業責任
小田急レストランシステム事件(東京地判 平成21年5月20日)
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部下からの虚偽告発や嫌がらせ調査により、上司が精神的に追い詰められ、自殺に至ったと主張。裁判所は業務起因性を認め、労災不支給処分を取り消し、支給を命じた。
アンシス・ジャパン事件(東京地判 平成27年3月27日)
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部下の攻撃的言動によって上司が精神的に追い詰められた事案。会社が適切な配置転換やサポートを怠ったとして、安全配慮義務違反と判断され、約50万円の慰謝料の支払い命令
5. 企業対策の要点(裁判例から学ぶ)
企業対応 | ポイント |
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1. 退職勧奨優先 | 解雇に進む前に合意退職を図ることが法的リスクを軽減します 。 |
2. 複数対応の記録 | 指導・注意・相談の記録、改善努力を文書化し、証拠として保管。 |
3. 配置転換の検討 | 無効判決では、他部署への異動など配置転換機会が重視されます(蓬莱事件)。 |
4. 安全配慮義務の遵守 | 上司の精神的負荷にも配慮し、対応方法の選択肢を示すことが求められます。 |
5. 外部専門家の活用 | 法的アドバイスを事前に受け、トラブルを未然に防ぐ。 |
➡ 社内制度や相談窓口導入については、企業研修・外部窓口サービスの導入事例ページをご覧ください
6. まとめ
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逆パワハラの解雇が有効とされるケースでは、改善努力・配置転換・文書記録が評価されます。
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一方、解雇が無効と判断されるケースでは、措置前の手厚い対応や配慮の欠如が要因となります。
企業にとっては、法的リスクを回避しながら安全配慮を徹底することが不可欠です。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 逆パワハラの裁判例にはどのようなものがありますか?
A. 有効とされた例として「アクティス事件(東京地裁H22.11.26)」があります。無効とされた例には「蓬莱の会事件(東京高判H30.1.25)」があり、配置転換の機会が与えられていなかったことが争点となりました。
Q2. 逆パワハラでも解雇は有効になりますか?
A. 解雇が有効とされるには、注意・指導を繰り返し、改善の機会を与えた上で、それでも関係修復が不可能と認められた場合です。安易な解雇は無効と判断される傾向があります。
Q3. 逆パワハラで上司がうつ病になった場合、労災認定されますか?
A. はい。小田急レストランシステム事件(東京地判H21.5.20)では、部下からの嫌がらせ調査で上司が精神障害を発症し、自殺した事案で労災認定がされています。
Q4. 企業は逆パワハラにどう対応すべきですか?
A. 証拠収集・注意指導・配置転換を優先し、安易な解雇は避けるべきです。裁判例では「配置転換の機会」や「記録の有無」が有効性判断に大きく影響しています。
Q5. 裁判所は逆パワハラをパワハラとして認めてくれますか?
A. 一般的に「優越的地位」を前提とするため、部下から上司への行為はパワハラ認定が難しいとされています。ただし、暴言や虚偽告発により企業責任が問われた例もあります。