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【2025年版】職場でハラスメント事故が発生した際の報告書作成マニュアル

2025/09/01

はじめに|事故報告書は「企業の説明責任」の出発点

パワハラ・セクハラなど職場でハラスメント事案が発生した際、最も重要な対応のひとつが『事故報告書の作成』です。

これは単なる社内文書ではなく、以下のようなあらゆる関係者に対する「企業としての説明責任」を果たすための基盤資料です。

  • 被害者本人およびその家族

  • 加害者(行為者)および関係者

  • 労働基準監督署・弁護士・監査法人など外部機関

  • 役員・株主・親会社など社外ステークホルダー

適切な報告書の有無は、企業の信頼と法的リスクを大きく左右します。


1. 報告書が必要となる主なケース

  • ハラスメントの相談・通報があった(内部通報含む)

  • 被害者が体調不良や休職・退職を申し出た

  • 外部機関(監督署・弁護士・報道など)への通報が行われた

  • 社内の懲戒・処分を検討する必要が出た


2. ハラスメント事故報告書の役割と目的

目的 意義
法的リスクの軽減 後日の訴訟・労基署調査への備え
初動対応の可視化 適切な対応をしたことを証明
組織学習・再発防止 全社的な共有・研修資料に活用

 


3. 報告書に記載すべき基本項目(テンプレート)

☑ 推奨構成項目(最低限)

  1. 作成日/作成者情報

  2. 発生日・発生場所

  3. 関係者情報(被害者・加害者の部署・職位など)

  4. 事案の概要(時系列)

  5. 通報・相談の経緯

  6. 初動対応の内容(日時・対応者・手段)

  7. 関係者ヒアリングの有無と要旨

  8. 今後の対応方針・予定(調査・処分・再発防止など)

  9. 添付資料一覧(議事録・録音・メールなど)

◎ポイント: 感情表現・憶測・主観は避け、「事実のみを淡々と」記述します。


4. 実例|ハラスメント事故報告書のひな形(記入例)

【ハラスメント事故報告書】

作成日:2025年8月26日
作成者:人事部 山田太郎

1.事故発生日
2025年8月20日(水) 午後3時ごろ

2.発生場所
◯◯事業所 2階会議室

3.関係者
被害者:営業部 田中花子(入社3年目)
行為者:営業部課長 佐藤一郎(勤続12年)

4.事案概要
営業会議中に佐藤課長が田中社員に対して
「君の存在は職場の足を引っ張っている」等の発言を繰り返した。
田中社員はその日の夕方、人事部へ相談を申し出た。

5.初動対応
当日17時に人事部が田中氏からヒアリングを実施。
翌21日、佐藤課長へ事実確認を行い、発言内容を概ね認めた。

6.今後の対応予定
第三者による調査チームを設置予定。
被害者にはカウンセリングの手配と業務環境の再調整を検討。

7.添付資料
・ヒアリング記録(PDF)
・会議出席名簿
・議事録(抜粋)

以上


5. 作成時の注意点・NG表現

NG表現 理由 替わりに
「明らかなパワハラ」 断定はリスク 「ハラスメントと受け止められる言動」
「本人が過敏に反応しただけ」 被害者非難と受け取られる 感情や評価を避け「本人は強く不快感を示した」
「匿名の通報で信憑性が薄い」 通報の信頼性判断は後回し 通報内容の確認作業へつなげる表現を

 


6. 作成後の対応フロー(社内・社外)

  • 人事部→所属長・法務部・経営層へ報告

  • 必要に応じて社内コンプライアンス委員会へ上程

  • 外部相談窓口、顧問弁護士との連携開始

  • 再発防止策・研修・業務再設計への展開

⚠ 報告書は個人情報を多く含む機密文書です。社内共有時はアクセス制限付きフォルダやパスワード付きPDFを利用してください。


7. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 事故報告書は誰が作成すべきですか?
A. 通常は人事・コンプライアンス・法務部門の責任者が作成します。第三者的な視点を持つ担当者が望ましいです。

Q2. 共有範囲はどこまで?
A. 最小限に抑えましょう。所属長・役員・調査担当者など「知る必要のある人」に限定し、メール添付やコピーは厳禁です。

Q3. 加害者が否認している場合は?
A. 「当事者は否認している」と事実として記述。評価や結論は避け、調査中であることを明記しましょう。

Q4. 被害者が報告書の閲覧を希望したら?
A. 可能な範囲で開示は検討しますが、他者のプライバシーや調査への影響を考慮し、法務と相談のうえ判断します。


8. 外部専門家を活用するメリット

  • 報告書の内容が第三者視点でレビューされる

  • 労基署・弁護士との連携がスムーズに

  • 被害者・加害者双方の納得感を高めやすい

  • 調査の信頼性・透明性が保たれる

当事務所では、報告書作成支援・ハラスメント防止研修・外部相談窓口サービスまでワンストップで提供しています。


9. まとめ|報告書1枚が「企業の信頼」を守る

ハラスメント事案の報告書は、
単なる業務文書ではなく「企業の透明性と誠実性を示す証明書」です。

記録を残すことで、被害者や従業員、監督官庁、株主に対して
「私たちは真摯に対応しています」と伝えることができます。

誤魔化さない・漏らさない・感情を入れない。
この3原則を守り、正しい報告書を作成していきましょう。


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※このページは社会保険労務士監修のもと、文章の構成や記述の明瞭性・社内対応など労務管理の観点から作成しています。法的リスクに関する判断や訴訟リスクの見通しについては、顧問弁護士へご相談ください。