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【最新判例】セクハラ裁判例で学ぶ企業の責任と防止義務|2025年対応版(社労士監修)

2025/09/24

はじめに|なぜセクハラ判例から学ぶ必要があるのか

セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)は、被害者の尊厳を傷つけ、離職・メンタル不調・訴訟リスクを招き、企業の信頼にも深刻な影響を与えます。ところが実際の実務の現場でセクハラ事案が発生した場合、家族への影響や被害者心情から、示談や謝罪金の支払いで『表沙汰にせず完了』させることが多くあります。「業務指導の一環」や「本人にも問題があった」ことを主張して対立することの多いパワハラ型とは実務上大きく異なる特徴があります。

しかし近年は裁判所が企業の防止体制を厳しく問う傾向にあり、セクハラ防止のためには「相談窓口を設けただけ」では不十分です。
判例は、何が不適切とされ、企業にどのような責任が課されたかを示す重要な指針です。


主なセクハラ判例一覧(2020〜2025年)

最近の代表的な判例を10件整理しました。(PC閲覧推奨)

裁判所 判決日 事案 裁判所の判断 企業への教訓
東京地裁 2020年12月3日 上司が部下に執拗に食事・交際を迫った 職場環境を害するセクハラ、会社に安全配慮義務違反 相談窓口での早期対応が不可欠
名古屋高裁 2021年8月25日 派遣先管理職による性的言動 派遣元・派遣先双方に防止措置義務 契約段階から防止策を協議すべき
大阪地裁 2022年6月14日 社内飲み会での性的発言・身体接触 業務関連行事も職場環境の一部と認定 飲み会も規程・研修の対象とすべき
福岡地裁 2023年10月12日 被害相談後に人事上の不利益 通報を理由とした処遇は報復的で違法 通報者保護の仕組みを整備
東京高裁 2024年9月5日 上司がSNSで深夜に性的メッセージ送信 業務外ツール利用も職場環境を害すると認定 SNS規程や利用ルール整備が急務
札幌地裁 2025年1月22日 社員研修旅行中の上司の不適切行為 勤務関連性ありと認定、会社に責任 出張・研修もハラスメント対策の対象
大阪高裁 2021年3月18日 昇進人事に絡めた性的関係要求 職務権限を利用した優越的地位の濫用 人事権限者への厳格な教育が必要
東京地裁 2022年11月8日 派遣社員への性的発言を放置 使用者責任が認められ企業に賠償命令 二次雇用関係でも防止義務あり
名古屋地裁 2023年5月26日 同僚間の性的な噂の流布 職場環境を害し会社に対応義務違反 噂・陰口もハラスメントの対象
広島地裁 2024年4月11日 上司が部下を業務外に呼び出し性的強要 職務関連性あり、会社に安全配慮義務違反 勤務外行為も業務関連性を重視

※本一覧は公開された裁判例等を基に当事務所が整理・編集したものであり、個別案件への法的助言には代用できません。


判例から見える企業の責任

これらの判例から、企業には以下の3つの責任があることが明確になります。

1. 職場環境配慮義務(労働契約法5条・民法709条)

セクハラで職場環境が害されれば、会社が責任を負います。

2. セクハラ防止措置義務(男女雇用機会均等法11条)

就業規則、相談窓口、調査・再発防止策まで一連の対応が必要です。

3. 通報者保護・第三者相談体制(公益通報者保護法・労働施策総合推進法)

内部窓口だけでなく外部相談窓口も整備し、通報者保護を徹底することが求められます。


実務対応チェックリスト(企業人事・管理職向け)

✅ 就業規則に「セクハラ禁止規定」を明文化しているか
✅ 相談窓口が複数あり、男女いずれも相談可能か
✅ 外部相談窓口を導入し、第三者性を担保しているか
✅ 通報者・相談者への不利益取扱いを禁止しているか
✅ 管理職研修・従業員研修を定期的に実施しているか
✅ 飲み会・出張・研修旅行も規程に含めているか
✅ SNSや業務外コミュニケーションへのガイドラインがあるか
✅ 調査手順・懲戒処分フローを文書化しているか


FAQ|セクハラ判例と企業実務

従業員向けFAQ

Q1. セクハラを受けたらどうすればいい?
A. 社内相談窓口や外部相談窓口に相談してください。メールやSNSの記録を保存することも重要です。

Q2. 飲み会やSNSでの発言もセクハラになりますか?
A. 判例上、業務関連の延長とされ、セクハラと認定された例があります。

Q3. セクハラを社内窓口に相談すると会社全体に知られませんか?
A. 会社の通報窓口には法律上守秘義務が課されており個人情報は保護されるべきですが、小規模な企業では相談したことが伝わってしまう可能性もあります。そのため匿名相談可能な外部相談窓口を導入している企業も増えています。

人事・管理職向けFAQ

Q1. 相談窓口を設けただけで義務は果たせますか?
A. 不十分です。実際に相談が機能し、再発防止策が講じられていることが重視されます。

Q2. 加害者への懲戒処分は必須ですか?
A. 重大性に応じて必要です。処分を怠ると「企業の対応不十分」と判断される可能性があります。

Q3. セクハラが疑われる行為があった場合、証拠が不十分でも調査する必要がありますか?
A. はい。判例でも「調査義務を怠った」ことが企業責任を問われる事例があります。証拠が十分でなくても、事実確認や聞き取りを行い、必要に応じて専門家に相談することが重要です。


まとめ|判例は「予防の指針」

セクハラ判例は、企業にとって過去の失敗例ではなく、未来の予防策を示す「指針」です。同時に、適切な体制を整えておくことは、従業員だけでなく企業自身を守る「盾」となります。

就業規則、相談窓口、教育研修、外部相談窓口――これらを組み合わせてこそ、セクハラの予防と早期解決が可能です。

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事業所への法的助言には代えられません。必ず顧問弁護士・顧問社労士にご相談ください。