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【2025年版】内部通報制度の導入マニュアル|公益通報者保護法対応と実務フロー
2025/09/30
はじめに|内部通報制度は「企業防衛の最後の砦」
内部通報制度は、従業員や取引先からの「不正・ハラスメント・法令違反」の早期発見に直結する仕組みです。
2022年に改正施行された 公益通報者保護法 では、従業員300名超の企業に制度整備が義務付けられました。
しかし、中小企業も「努力義務」とされていますが、実際には労基署・消費者庁の行政指導やSNS炎上、取引停止などの重大リスクを避けるためには、規模を問わず導入が欠かせません。
✅ 内部通報が「機能するか否か」で、炎上するか沈静化できるかが分かれます。
内部通報制度に求められる5つの要件(法的視点)
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通報窓口の設置
内部(人事・総務)または外部(社労士・弁護士)。併用が望ましい。 -
通報者保護
公益通報者保護法により、不利益取扱い(解雇・降格・いじめ等)は禁止。 -
調査・是正措置
通報を受けたら迅速に調査チームを編成し、客観性を担保すること。 -
記録と保存
通報受付から調査・是正までの記録を残すことで、行政・裁判対応にも備えられる。 -
従業員への周知
「どこに通報すればいいか」「守られるのか」を周知しなければ機能しない。研修・社内掲示が必須。
内部通報制度の導入フロー(5ステップ)
① 方針策定
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通報対象範囲(例:法令違反・ハラスメント・労務違反・不正経理)を明確化
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社内規程に反映し、経営トップが責任を持つ姿勢を示す
② 窓口設計
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内部窓口:人事・法務・コンプライアンス部門
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外部窓口:社労士・弁護士など独立した第三者
→ 「社長直通で言えない」状況を防ぐため、外部窓口の導入が有効
③ 調査プロセスの確立
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ヒアリング方法・調査記録フォーマットを定める
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第三者チェックを加え、恣意的判断を防止
④ 是正・再発防止
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規程改定・懲戒処分・再発防止研修を実施
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被害者保護と加害者の適切処分をバランス良く行う
⑤ 従業員周知・教育
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ポスター・社内報・研修・eラーニングで全従業員に周知
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「匿名でも通報できる」「不利益はない」と明言して信頼性を高める
中小企業で多い失敗パターン
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社長直通の窓口しかなく機能しない
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通報しても握り潰される → 労基署・メディアに直行
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調査結果を開示しない → 従業員の不信感が増幅
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通報者を逆に処分 → 公益通報者保護法違反で裁判に発展
→ 外部窓口の設置が、不祥事の隠ぺい体質を防ぎ「企業防衛」につながります。
実際の事例(令和最新版)
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製造業A社
内部通報を放置 → 労基署に直接通報 → 是正勧告+企業名公表 -
医療法人B
パワハラを隠蔽 → 被害者がSNS投稿 → 報道炎上・患者離れ -
サービス業C社
内部通報者を配置転換 → 公益通報者保護法違反で損害賠償請求 → 裁判で敗訴
よくある質問(FAQ)
Q1:従業員50名規模でも導入すべき?
A:努力義務ですが、ハラスメント・労務違反は規模を問わず発生。早期発見のため導入を推奨。
Q2:匿名通報には対応すべき?
A:匿名性がある方が通報は増えやすい。内容の信憑性は別途精査が必要。
Q3:外部窓口は必須?
A:法的に必須ではありませんが「社内では言えない声」を拾うために強く推奨。
Q4:調査は誰がやるべき?
A:社内チーム+外部専門家(社労士・弁護士)で客観性を確保。
Q5:虚偽通報だった場合はどうなる?
A:虚偽であっても不利益取扱いはNG。虚偽と判断した場合でも調査・記録を残し、通報者の権利を侵害しないよう留意が必要。
大企業と中小企業の違い(比較表)
項目 | 大企業 | 中小企業・零細企業 |
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通報窓口 | 法務・コンプラ部+外部弁護士 | 社長直通になりがち → 外部窓口が現実的 |
調査体制 | 独立した第三者委員会 | 社労士・弁護士のスポット調査で代替 |
周知方法 | 社内イントラ・eラーニング | ポスター掲示・小規模研修 |
リスク | 株価下落・株主代表訴訟 | 行政指導・SNS炎上・取引停止 |
再発防止 | 全社制度改定・監査部強化 | マニュアル改訂・研修・理念共有 |
関連サービス(当事務所)
内部通報制度は「設置しただけ」では機能せず、通報者が安心して使える環境整備(外部窓口・周知・研修)がカギです。従業員が『安心して通報できる』と感じられる運用体制こそ本質です。
まとめ|内部通報制度は「攻めのリスクマネジメント」
内部通報制度は「義務だから整備する」のではなく、
炎上・裁判・行政指導を未然に防ぐ「攻めのリスクマネジメント」です。
小さな声を早期に拾い上げられる仕組みが、従業員の安心と企業の信頼を守ります。
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参考リンク・ソース集(内部通報制度関係)
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公益通報者保護法と制度の概要(消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/whisleblower_protection_system/overview
公益通報者保護法の制度概要、改正点、ハンドブック、告示等がまとめられているオフィシャル解説。 -
公益通報受付窓口(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/intro/consult/kouekitsuho.html
企業外部からの通報窓口設置に関する経産省の訓令・ガイドライン情報。 -
公益通報者保護法(e-Gov 法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000122
公益通報者保護法の条文を全文掲載。制度の根拠法令として必携。 -
公益通報者保護法に基づく指針(令和3年告示) 解説(PDF)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/whisleblower_protection_system/overview/assets/overview_211013_0001.pdf
通報制度運用における実務上の留意点などを解説した指針文書。 -
内部不正防止ガイドライン(IPA)
https://www.ipa.go.jp/security/guide/hjuojm00000055l0-att/ps6vr7000000jvcb.pdf
情報漏洩・組織内不正を防止するための技術・運用指針。通報制度との連携視点で有用。