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職場でハラスメントが起きたらどうする?発生時の社内対応方法を解説

2022/08/05

(最終更新日:2023/04/14)

労働施策総合推進法の改正によって令和4年4月以降、すべての事業者にハラスメント防止措置が義務付けられました。連日のように目にするメディアの報道やSNSからもハラスメントに対する高い関心がうかがえます。

それもそのはず、都道府県労働局に寄せられる民事相談の最多はハラスメント関連であり10年で10倍以上に増加、精神障害の労災認定は過去最多を更新し、最高裁まで争われることの少なかったハラスメント関連の重要判例も日々蓄積されており、健康経営の一つでもあるハラスメントに関連するセミナーは行政、民間の主催に関係なく連日超満員です。

実際に部下からハラスメントを指摘された方や、社内のハラスメントを申告された窓口担当者から、「どう対応すればよいかわからない、正しいかどうか不安」という相談も多く寄せられています。ハラスメント事件はいっそう身近になっており、組織である以上は避けられない問題です。そして、どのような対策を行っていても、発生をゼロにすることはできない難題でもあります。記憶に新しい新型コロナ禍中で介護事業者などケアワーカーはじめ私たちの生活に欠かせないエッセンシャルワーカーにおいて、職場「外」の取引先や顧客からの悪質なカスタマーハラスメント(通称、「カスハラ」)も社会問題として大きな話題となりました。

本記事では民間企業・官公庁でハラスメント対策顧問を務め、ハラスメント事案の実務対応を数多く扱ってきた当事務所が、職場「内」でハラスメントが発生した場合に対処すべき実務上の手順やポイントについてご案内していきます。人事労務部門担当者や管理職、経営者などコンプラ対策担当者だけでなく、会社で働く人たちが知っておきたい参考判例や早期解決に向けて実務で使える手法までわかりやすく記載していますのでぜひ最後までお読みください。➡カスハラ対策はこちらのページへ

(基本の手順)

1.事実関係の調査

2.事故調査報告書の作成

3.加害者への処分実施

4.被害者へのフォロー

5.再発防止への取組措置

 

1.事実関係の調査

事業主が社内のハラスメントを知る契機としては、本人や家族、他の従業員からの相談・苦情、社内相談窓口への通報など、社外からは労働局からの指摘や代理人弁護士、労働組合(ユニオン)からの確認があります。事業主がハラスメントの疑いがあることを知った場合にはまず被害申告者と加害者とされている者を隔離するかどうか検討します。これは、これ以上の被害を拡大させないための配慮としてだけでなく、加害者とされているものが被害者や第三者へ働きかけることによる証拠隠滅を防ぐ目的もあります。ハラスメント対応は事前の防止措置も重要ですが、事後対応によっては事業主の法的責任にも影響しますので、手順を押さえながら迅速かつ適切に行うことが極めて重要です。

労働機関の指摘があったにもかかわらず、その後も被害者のセクハラが止まなかった事案では、会社の防止措置の不備によって被害が続いた点について職場環境配慮義務違反を認め、不法行為責任を負うとした(広島高判平成16年9月2日)

 ①調査担当者または調査委員会の設置

職場の規模にもよりますが、調査の担当者は客観性を担保するために複数であることが望ましく、処分の効力を争われた場合に備えて当事者の同意を得たうえで録音するなど言質詳細を記録し、また会社内部で調査するよりも外部の弁護士や社労士などを活用して調査を行うなど、中立性にも注意することが事実認定の強度を高めるのに有効です。直属の上司や同僚による調査はどうしてもバイアスがかかり、客観的にも中立性が担保されにくく評価に悪影響を与えます。聞き取りする場所もオープンでない場所を選ぶようにします。

ハラスメント行為が強制性交罪、強制わいせつ罪、強要罪、暴行(傷害)罪、名誉棄損など刑法の構成要件に該当するような特に重大な事案が疑われる場合は後の訴訟も考慮し、初期の調査時点から外部弁護士を投入することも検討した方がよいケースがあります。ハラスメントの指摘が公的機関や外部弁護士等による場合には、すでに民事上違法なハラスメント行為が発生している確実性が高いと考え、即時に調査に乗り出す必要があります。特にセクハラ事案の場合には二次被害とならないようプライバシーにも十分注意しながら調査を進める必要があります。

 ②当事者および関係者へのヒアリングを実施

ヒアリングの順序としては、まず①被害者本人のヒアリングを実施後に、②行為者の上司や目撃者、同一部署従業員など関係者についで、③行為者本人にヒアリングするのが基本です。ヒアリング時には圧迫を受けたと後で苦情を言われたり、本人が話しにくい状況にならないよう、複数や同性の方を同席させるなど、できる限り配慮します。

ヒアリングでは『いつ』、『どこで』、『誰が』、『どのように』を具体的に記録することが必要です。また、発言だけの場合にはその発言がどのような関係性と文脈でされたのかも確認し、漠然とした内容や、噂話レベルのものを真に受けて手続きを進めないようにします。

関係者のヒアリングが終わったら、行為者へのヒアリングを実施しますが、相談者は仕返しを恐れて行為者に知られないようにしてほしいと希望することがあります。その場合には事実内容を抽象化したり、特定の個人を対象とした調査ではないこととしたり、事実確認を第三者に口外することを禁止、報復行為は処分が重くなる旨記載した秘密保持誓約書に署名させるなど、相談者の希望に配慮した「工夫」が必要です。また、行為者は「身に覚えがない」と主張することが多くありますが、この場合も①行為の事実が無い意味なのか、②行為の状況や態様が違うのか、③行為の事実はあるがハラスメントの意図は全くなく心外である意味なのか、慎重に確認しておく必要があります。

調査がおわれば後の処分有効性を争われないためにも、行為者に十分な弁明の機会を与える必要があります。事実確認が終わる前から自宅待機命令を出したり、大声で叱責したり、必要以上に説得したりなど、処分ありきで圧迫することは不法行為として行為者から訴えられる可能性があります。会社で処分の決定が下される前までは、あくまでも事実確認のための調査担当者として『傾聴すること』が必要です。行為者が弁明を拒否し、事実関係の調査に不協力な場合にはその旨も記録しておきます。

証拠となる資料の例

家族や友人の日記やメモ、録音データ、当事者間のLINE、診断書、SNSへの投稿など

※秘密の録音は刑事事件では証拠として採用されにくいとされていますが、民事のハラスメント裁判では録音データも有効です。

【家族の日記が証拠として認められた例】

原告作成の日記に格別不自然なところは認め難く、当該日付に当該出来事が存在したという限度での信用性は認められるべきとし、原告のセクハラ被害を認めた事例(札幌地判平成27年4月17日)

 

2.事故調査報告書の作成

 ①調査内容を精査し程度を判定

関係者からヒアリングした内容が全て一致することはほとんどなく、被害者と行為者の供述は食い違うことが一般的です。どちらの供述が信用に値するのか、収集した証拠や当所の言い分からの変化、同僚などのヒアリング、時期や内容の正確性などを考慮して、信用レベルをレビューします。ハラスメントのセーフとアウトの境界線を皆知りたがりますが、実務上はほとんどがグレーのため、まずは次のア~エの4段階程度で区分すると進めやすくなります。

 ア)ハラスメント行為が存在しない場合

元恋人関係による別れのもつれ、プライベートな関係の延長、私的な恨みや妬みによる虚偽申告など、調査の結果ハラスメント行為が存在しない場合は、その旨明確に本人に伝えます。言ってしまえば本人の捏造による冤罪であり、その場合には捏造の動機や状況を整理したうえで、職場の風紀を乱す行為として懲戒処分を検討しますが、社内で啓発や研修など、ハラスメント防止措置が不十分な場合はこの処分も効力が争われる可能性があります。若年層など未熟なアルバイトスタッフなどは誤った理解で「セクハラと騒げば勝ち」と勘違いしているケースがあり腹立たしく思うこともありますが、若年層に教育を怠った責任は会社にあります。ハラスメント研修が人気の理由の一つとして、存在しないハラスメント冤罪で社内のリソースを割く無駄が削減できることにあります。

なお、同僚や部下からハラスメントを申告されるなど、行為者として疑われると相当なストレス・心理的負荷を与えます。申告者と行為を疑われた当人を引き離すなど、関わりをできるだけ減らす配慮が必要です。パワハラ申告され調査の結果パワハラが認められなかったものの、心理的負担で退職した上司が会社を相手取った裁判では、疑われた上司が部下と協働することは困難にもかかわらず体制変更に応じなかったとして、慰謝料を認めた事例もあります(アンシス・ジャパン事件東京地判平成27年3月27日)

セクハラであれば判定は比較的容易ですが、パワハラは判定が非常に難しく、また最高裁判例など重要判例も増加しており揺らぎがあります。明確な「ア」は稀のため、当社の関与した会社では「アまたはイ(ア寄りのイ)」であるとの判定が多い印象です。なお、職場恋愛のトラブルであっても行為者が上位職である場合などは「心理的監禁状態(※)」論によってセクハラ成立の可能性が高まります(M社セクハラ事件東京高判平成24年8月29日)。

部下に告白するなど職場恋愛を試みる場合には、相手がいかに喜んでいるように見えたとしても告発されれば賠償は免れないリスクを覚悟する必要があります。部下が何も言わないのは照れている(YES)のではなく、嫌がっている(NO)と解釈しなければ大変な目に遭います。

※心理的監禁状態とは、物理的な身体拘束がなくとも、上司部下の抑圧や友好関係を維持するために現実的に逃げれなくなる状態。

 

 イ)ハラスメント行為が違法とまでは言えない場合

事実は確認できたものの、違法とまでは言えない場合には、行為者の処分は戒告(口頭による注意)程度になりますが、「違法とまでは言えない」は大変難しい判定になり禍根が残るケースともいえます。

ハラスメント行為はあったものの、違法とまでは評価できない場合には本人による謝罪や些少な金銭支払いによって解決とすることもあります。被害者が若年層であったり、行為者と被害者の立場に大きな差があれば違法とまでは言えなくても問題が長引き大きな問題になることがあるため、解決金による和解を勧めた方が良い場合もあると話す弁護士もいます。最近は当社も「ハラスメント行為が確認されたものの今後改善が見込まれる場合」には、数万円の解決金を払うことを薦めています。もちろん、行為者だけでなく会社側が慰謝料として被害者に支払うこともあります。

 

 ウ)ハラスメント行為が民事上違法と評価される場合

民事上違法なハラスメント行為があった場合には、被害者の損害の査定と併せて、懲戒処分や示談に向けて解決方法を模索します。

自殺や精神疾患に罹患するなど被害が深刻な場合、又はすでに退職している従業員の場合には金銭解決は免れないことを前提に、会社としての対応を検討します。ハラスメント被害は示談前提の交渉も多いため、会社としては被害者の求める金額や解決方法が過大でなければ、速やかに応じる方法も「レピュテーション(評判)対策」となります。先にも述べましたが、違法行為が疑われるハラスメント事例で会社が事後対策を怠ったと心象される場合には会社も損害賠償請求の対象となる可能性が高まります。この場合には全ての対応について日時や内容を記録し、裁判に備える必要があります。

 

 エ)ハラスメント行為が刑法上の要件に該当する場合

重大なインシデントと扱い、弁護士を入れた早急な対策が必要となります。通常は行為者同様に、会社の使用者責任等を根拠に訴訟となりますが、事後の対応によっても会社の賠償責任は大きく変わります。当事者間の示談解決に協力する、被害者の就業に配慮する、行為者に対する速やかな懲戒処分の実施、被害者(家族)へのフォローなど、あらゆる手を尽くします。たとえば私的な宴席での行為のためで会社は関係ないと高を括っていても、断わり切れない立場にある部下や、誘い方が「ちょっと飯食いながら打合せしようか?」のように業務の延長と認められれば会社は一気に不利な立場になります。どのような事故であっても、職場関係のトラブルを個人間の問題と切り捨てることはできません。真摯な対応が必要です。暴力事件や強姦のような重度なセクハラ事案の場合、行為者を即時解雇によって処分してしまうケースがありますが、行為者もまた労働者であり、法律で保護されています。どんなに悪質であっても、懲戒解雇は慎重に実施する必要があります。被害者は損害賠償の他に、当然に懲戒解雇を求めますが、憎む相手も法律で守られていることを説得しなければなりません。会社の危機ともいえるため、顧問弁護士ではなく、外部の弁護士に処理を委託するケースもあるようです。たしかに、利害関係に無い第三者の説明であれば当事者の納得感が増します。

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 ②諮問委員会等への事故報告書の作成

事情聴取や収集した証拠によってハラスメント行為について評価が終われば、調査報告書を作成します。会社によって調査報告は口頭で行ったり、調査後の行為の評価・処分内容は会社の諮問委員会や取締役会等によることもありますが、行為者から処分が重すぎるとして訴えられた際に調査報告書は強力な証拠となりますし、相談者や行為者とされた労働者からプロセスの報告を書面で求められる場合があります。調査結果や判断基準を当事者に開示することは義務ではありませんが、差し支えのある部分は概要にとどめたり、個人名を塗りつぶすなどプライバシーに配慮し、一部役員だけしか閲覧できないような機密文書ではなく、「開示する」ことを前提とした報告書にすることが望ましいでしょう。できるならば、調査した事実内容部分は被害者にも確認してもらうなど、丁寧な対応を行うことで、後に法的手続きに至った場合でも事業主の対応が裁判での評価に繋がります。

パワハラ被害者が事業主の対応について調査結果や判断過程を文書で開示しなかったことを不法行為であると主張し裁判となった事案では、口頭で判断を示すなどしており、内規上秘密文書である調査結果や判断過程を文書で開示しないことは合理性があり違法と言えないとした(サントリーホールディングスほか事件東京地判平成26年7月31日)

 

3.加害者への処分実施

ハラスメント行為の事実確認、評価が終わると、規則に基づき行為者の処分を検討しなければなりません。懲戒処分を判断するうえで必ずチェックしなければならないポイントとして、「比例原則」と「平等原則」があります。比例原則とは、軽い事由に対しては軽い処分を選択し、重い事由には重い処分を選択すべき原則で、平等原則とは、懲戒処分も社内の労働者の間で同じものであるべき原則です。就業規則だけでなく、「過去の処分実績との比較」や「会社としての防止措置取組状況」など、あらゆる面から「処分妥当性」を検証します。傷つきやすさには個人差があり、また被害者は懲戒解雇のような極端な処分を期待しますが、悪質な行為者でも法で保護されるべき労働者です。セクハラであれば被害者との関係性や「嫌がっていなかった」、「軽い冗談のつもり」、「コミュニケーションの一環」などの主張は通りませんので、行為の事実に基づいて処分できますが、パワハラ問題は指導との境界があいまいで、私生活でも付き合いがあるようならば同じ行為でも評価が変わり、処分妥当性の判定が極めて難しい実務と言えます。重すぎる、または軽すぎる処分でトラブルとならないように、外部の弁護士や社労士など専門家の第三者意見を聴取しながら処分を決定すれば妥当性の評価も高まります。

信用金庫の支店長が顧客からの祝儀(4万円)を着服したことなどで4等級の降格処分されたことを人事権の濫用として争った事案では、過去に144万円の不正領得に加担した事案でも2等級の降格であり4等級の降格例がないことなどから懲戒権の濫用を認め降格処分を無効とした(東京地判平成29年3月17日)

なお、中小企業のハラスメント実務ではいきなり処分を実施するのではなく、予定する処分の打診で行為者の反応をみつつ、段階を踏みながら最終処分を決定することもあります。小規模事業者のように配置換えがかなわないような場合は被害者が納得できないケースもありますので、処分を会社の一方通行で一発決定せず、事前に被害者にはどのような処分を望むのかなど、当事者の心理面にも配慮しながら処分内容を調整するのが、禍根を減らす会社の最後の取組と言えます。

特にセクハラの加害者とされることは社会的生活を断たれるも同然であり、安易にセクハラを認定して被害者を救済すればよいという問題ではないことに留意が必要です。

慎重な検討の結果ハラスメントが確認された場合には顛末書や始末書を書かせるのが一般的ですが、行為者自身に反省の念があり、穏便な解決を願う場合には被害者への謝罪文を促したり、慰謝料の支払いによって合意書を締結する場合もあります。金銭解決も穏便な解決といえますので、当事者間で解決に至った場合には処分を軽減するなど、会社として事実関係が確認できている場合には合意契約を促すことも不当行為とはいえません。

 

4.被害者へのフォロー

調査の結果、ハラスメント行為の認定や行為者の処分内容に方向性が定まった場合は、相談者に対してできるだけ具体的に、理由を添えて報告する必要があります。被害の補償や行為者の処分、事業主の対応が不適切であると判断された場合には、被害者は会社を相手に使用者責任(民法715条)、不法行為責任(民法709条)、債務不履行責任(民法415条)などに基づき、損害賠償請求することが考えられます。(事業主は行為者と同様の責任を負う「不真正連帯債務の関係」とされています。)

ハラスメント問題は社内のコンプライアンス上重要な事案につき、手抜き調査や一方への私的理由での肩入れなど、不適切な対応を行った場合は窓口担当者や調査担当者も懲戒処分の対象となりえます。さらにハラスメント問題は取締役も個人として責任を負う可能性(会社法429条)があり事実上も社内全体の問題です。ハラスメントが実際に起こった場合に「社内だけでの解決が難しい」といわれるゆえんは、社内の利害関係が対立し主観が排除できず、客観性や中立性を疑われるときりがない点にもあります。

処分妥当性についても客観的・合理的な根拠を用いて、本人に理解を促すような配慮が必要です。ハラスメント事案の判定は難しく裁判でも一審二審で逆転、法律でも明確な線引きが無く、弁護士や社労士でも明確な回答に困ることがあるため、本人はもっと理解できないはずです。また、勇気を出し報復覚悟で申告した被害者の心的負担は相当なものだったことが想像できケアは必ず必要です。そして、行為者の処分や被害者のフォローは良くも悪くも周りの従業員にも伝播します。つまり、事故後に会社はどう動いたかによって、その後の組織のパフォーマンスに大きな影響を与えるのがハラスメント対応です。

 

5.再発防止への取組措置

おおよそ問題解決の糸口が見えた時点で終わりではありません。会社として再発防止に取り組まなければ何度でも「面倒な」ハラスメント事案が発生します。ハラスメント対応実務は正解がなく、関係する全員が疲弊し、かなりの精神的負担を伴う「二度としたくない」実務経験であることは、経験した方なら理解できるはずです。過去は変えれませんが、未来を変えるために再発防止の取組は超重要です。

(再発防止の取り組み例)

☑全体研修の実施

☑啓発文書の再周知

☑相談窓口の増設

☑規則類や対応マニュアルの整備(拡充)

☑専門家(弁護士・社労士)との顧問契約・・・など

事故が起きてしまった後の再発防止措置は「どれか一つ」ではなく、可能なものは「すべて」実施することをおススメします。

小規模事業者であれば、既にハラスメントが問題となっていることが周知の事実(みんな事件を知っている)であることもあります。そういったケースでは会社として、ハラスメント事案の概要について社内報などで説明する場合もあります。

社内報

令和○年○月○日

令和○年○月ごろに社内窓口に寄せられたハラスメント事案につき、慎重な調査の結果以下の通り懲戒処分を行いましたのでお知らせいたします。

1 概要:職場内で大声での暴言、長時間(1時間以上を数回)の執拗な叱責について、パワーハラスメントであることと認定いたしましたので行為者を以下の通り懲戒処分といたします。

2 処分内容:減給処分(給与月額の10%、3カ月分)

3 処分理由:就業規則○条○項「職場内での優位的地位によって他の従業員に必要以上の不快感を与えたり、職場環境を乱すような行為をしないこと」に違反する。

 

当社といたしましてはハラスメントの無い職場環境に積極的に取り組み、ハラスメント行為を決して許さず、行為者に対する処分を躊躇いたしません。

引き続き、ハラスメント行為についてご相談、お悩みの場合には相談窓口のほか、担当部門への報告にご協力をお願いいたします。

以上

(本件に関する窓口について)

人事部:仁司太郎(内線ピポパ)

(ハラスメントに関する相談窓口について)

社内相談窓口:人事部 TEL:00-0000-0000

社外相談窓口:○○事務所 TEL:00-0000-0000

 

再発防止取り組みが不十分なまま同様の事故が再度発生してしまった場合には企業は確実に配慮義務違反となり、不法行為責任を追及されます。ハラスメント事案が発生した場合に公表したり、研修やセミナーを全員参加で受講させるなど、緊張感が高い間に施策を実施するとより効果的ですし、訴訟リスクの備えとしても有効といえます。

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おわりに

ハラスメント規制は頻繁に改定され、また2015年2月の海遊館事件最高裁判決など重要な判例も生まれており、最近は繰り返しでなくても一度アウト、故意の身体接触は一発アウト、妊娠を「契機」とした不利益な扱いも違法とされるなど、アウトのゾーンは認知している以上に広くなっており、ハラスメント裁判の判例集を読んでいると裁判所が認定する違法性のハードルは一般認識よりも低いことがわかります。特に流動的なハラスメント規制は社会人として随時知識のアップデートが必要であり、職務の地位が上がるほどより関心を持つことが、加害者とならないための保身にも役立ちます。

ハラスメント関連の法改正による対策は「リスクである」という意見が一般的ですが、近年はハラスメントに対する独自の取組や発生件数などを自主的に、求人票やホームページで公表している会社も増えています。つまり、ハラスメント対策を「チャンス」と考えていることが窺えます。口外しないよう口止めを強要する隠蔽体質の会社と、積極的に恥を公表し自浄に取り組む会社のいずれが評価されるでしょうか。瞬時に情報が拡散される現代社会においては恥も誉も隠蔽できる時代ではありません。起きてしまった事故は今後起こさないように反省するしかありませんが、起きてしまった事故にどう対応するかによって企業の評価もまた大きく変わります。

 

ハラスメント相談窓口と研修のご案内

当事務所では企業のハラスメント外部相談窓口のほか、一般従業員、管理職者、役員など、職場のハラスメント対策に関連する研修やセミナーを行っております。特に近年のニュースやハラスメント判例の多さからもわかるとおり、実際の現場ではもっと多くの事案と、表には出ない「示談」による問題解決が頻発しています。皆様の会社で事故を起こさないことも重要ですが、事故が起こった際の対応や注意点など、事前の心構えや抑止のためにも研修もまた重要です。外部相談窓口の増設など、ハラスメント対策の強化として是非ご検討下さい。

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©RESUS Inc.All Rights Reserved. 本記事は当事務所の独自の見解が含まれており特定の事業所に対する法務アドバイスまたは法的見解に代用できるものではなく、事案で考慮すべき情報の提供を目的としたものです。よって、結果の責任は自己が負うことをご理解のうえ情報を利用されるか、顧問弁護士・顧問社労士など専門家のアドバイスに従ってください。

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