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【2025年対応版】なぜ管理職者教育は失敗するのか|人事労務と心理学から考える“現場育成の限界と再設計”
2025/10/20

(監修:RESUS社会保険労務士事務所/社会保険労務士 山田雅人)
はじめに|「上司が育たない組織」の共通点
経営者は「中間管理職が育たない」と悩み、部下は「理想の上司がいない」と嘆きます。
しかし現実には、管理職本人もまた、“現場と経営のはざま”で苦しむ存在です。
特に「たたき上げ型」の管理職は、現場感覚に優れる一方で、大局的・マネージャー的・経営的な判断が求められる局面で戸惑いがちです。
このような管理職に対して、“リーダー論”を一方的に押し付けても、教育は定着しません。
本ページでは、人事労務と心理学の両面から、なぜ管理職教育が失敗しやすいのかを整理し、
再設計すべき教育の在り方を解説します。
第1章|人事労務の観点から見た「教育が失敗する構造」
1-1 役割期待と責任範囲の不明確さ
管理職の多くは、
「プレイヤー+マネージャー+教育者」という三重の役割を同時に担わされます。
しかし、企業側がその役割範囲を明文化せず、「現場リーダー的な延長」で任命してしまうケースが大半です。
結果として、“業務遂行”ばかりに意識が向き、部下育成や組織運営が後回しになります。
✅ 対応策:就業規則や職務定義書における「管理職の役割定義」「評価基準」を明文化すること。
これにより、“何をもって管理職とするか”が共有され、教育目的が明確になります。
1-2 教育機会の“個人依存”
現場たたき上げの管理職は、日々の業務を「背中で見せる」文化で育っています。
そのため、体系的教育よりも経験則重視となりがちです。
しかし、働き方改革やハラスメント防止法施行により、「感覚」ではなく「理論と法令」に基づいたマネジメントが求められる時代になりました。
✅ 対応策:管理職登用時点での必須教育(労務・心理・面談・評価)を明確化する。
昇格前後の「マネジメント基礎研修」や「評価者トレーニング」を制度化することが不可欠です。
1-3 採用依存・外部登用のリスク
「即戦力を採れば早い」と考える経営者は少なくありません。
しかし、他社カルチャーとの不一致や、“急に来た上司”に対する現場の反発によって早期離職するケースが後を絶ちません。
採用コスト・教育投資・組織混乱を考慮すると、内部育成のほうが中長期的な経営リスクを抑えられます。
第2章|心理学の観点から見た「人はなぜ変われないのか」
2-1 “現場思考”が思考の幅を狭める
長年、現場業務を通じて成果を上げてきた管理職ほど、「正解は自分の経験にある」と信じがちです。
この思考は、“過去の成功体験”に基づくため、変化への適応や他者視点の理解を妨げる心理的バイアスを生みます。
→ 心理学では「確証バイアス」「自己正当化」と呼ばれる現象です。
教育ではまず、この“思考の枠”を可視化し、気づかせることが第一歩となります。
2-2 感情の自己管理ができないと、部下育成は進まない
叱り方・伝え方・動機づけ――。
これらの根底にあるのは、「感情マネジメント力」です。
怒り・苛立ち・不安をそのまま表出させてしまうと、部下は防衛的になり、心理的安全性が失われます。
→ 管理職教育では、アンガーマネジメント・傾聴・フィードバックを実践的に扱う必要があります。
「感情を抑える」のではなく、「感情を理解して選択する」スキルを養うことが重要です。
2-3 「リーダー像の押し付け」が失敗を招く
企業が考えている“理想の上司像”を一方的に与えても、人は変わりません。
リーダーには個性・価値観・強みの違いがあり、学校と異なり、組織の教育では「正解を教えること」ではなく「本人の行動パターンを拡張すること」が重要です。
心理学では、内発的動機づけと自己効力感が持続的成長のカギとされています。
外からの「こうすべき」よりも、自ら「こうありたい」と感じさせる教育設計が不可欠です。
第3章|“詰め込み型教育”から“設計型教育”へ
3-1 断片的な講義では人は変わらない
短時間で多くを詰め込む「座学中心研修」は、知識は残っても行動が変わらないことが往々にしてあります。
人が変化するためには、「気づき → 実践 → フィードバック → 定着」の循環を設計する必要があります。
→ RESUSでは、リーダーシップ教育を「研修」ではなく「教育体系」として設計しています。
研修後のフォロー面談、外部相談窓口、アンケート分析を含めてPDCA化します。
3-2 “育てる仕組み”が企業の競争力をつくる
管理職者は、万能のスーパーマンではありません。
だからこそ、体系的・計画的・具体的な教育プログラムによって成長を支えることが重要です。
採用よりも育成、感覚よりも体系。
これこそが、2025年以降の「人を軸にした経営」に不可欠な視点です。
まとめ|「管理職は育てる対象」である
管理職は、部下を管理する立場であると同時に、企業が教育によって育て続ける対象でもあります。
「リーダーは生まれるものではなく、育てるもの」――。
その発想を取り戻した企業から、組織は再び強くなります。
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