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【2025年版】SPIは中小企業に必要か? 導入で失敗しないための実務ガイド|社労士が解説する「適性検査の正しい使い方」

2025/10/31

採用に悩んだときに検討する「SPI」を中小企業目線で解説

(監修:RESUS社会保険労務士事務所/社会保険労務士 山田雅人)


はじめに|SPIは「万能」ではない。中小企業は本当に必要か?

SPI(Synthetic Personality Inventory)は、リクルートが開発した日本で最も普及している適性検査の一つです。
大企業では採用選考の公平性・説明責任を担保するために利用されていますが、中小企業にとっては必ずしも“コストに見合う成果”が得られるわけではありません。

特に、社員数50名未満・採用人数が少ない企業では、SPIの点数よりも「観察力・対話・カルチャーフィット」の方が有効に機能します。
本ページでは、SPIを導入する前に押さえておくべき判断基準と、導入後に陥りやすい誤解を、社労士の実務視点で整理します。


第1章|SPIとは何か?(中小企業にもわかる基礎知識)

SPIは「能力検査」と「性格検査」で構成される総合的な適性検査です。

  • 能力検査:言語・非言語・論理的思考などの学力系

  • 性格検査:職務適性・協調性・責任感・外向性などの心理傾向

本来は、大企業が数百人単位の応募者を「公平に仕分け」するためのツールとして設計されています。
一方、中小企業では応募者数が少なく、面接担当者が経営者本人であるケースも多いため、データよりも人を見る力のほうが重要になります。


第2章|SPIが中小企業に合わない3つの理由

結論から言えば、SPIは中小企業には向きません。

1. サンプル数が少なく、データとして意味が薄い

SPIは統計モデルに基づいた検査です。
母集団が数名〜数十名しかいない中小企業では、「偏差値」「比較値」に実用的意味を持たせることが困難です。

仮に2名の応募者で1名が高得点でも、「それが本当に優秀か」は判断できません。


2. 高得点=定着・活躍とは限らない

SPIで高得点の人ほど、論理的・合理的で環境ギャップに敏感な傾向があります。
中小企業では「限られた環境で柔軟に対応できる人」が求められるため、必ずしも高得点者が活躍するとは限りません。

現場ではむしろ、地道で誠実な“中間層”が定着する傾向があります。


3. 社風とのズレを見落とす

SPIの結果は「一般的な性格傾向」を示すもので、自社の文化との相性までは判定できません。
たとえば「自己主張が強い=リーダータイプ」と評価されても、チームワークを重視する企業では逆効果になることがあります。

まるですべてかのようにテストを妄信することで、本質を見失います。


第3章|SPIを「導入してよい」中小企業とは?

SPI導入が有効に機能するのは、以下のようなケースです。

導入に向くケース 理由・目的
年間採用人数が10名以上 統計データとして有効性が出はじめる
複数部署・職種で採用がある 配属・適性判断に活用できる
面接官が複数名いる 評価の共通基準として機能する
面接経験が浅い担当者が多い 補助資料として役立つ

逆に、年1~2名の採用・ワンマン面接・小規模事業所では、導入効果は限定的です。
この場合は、SPIよりも「観察力+質問設計」を重視するほうが合理的です。

▶中小企業が採用してはいけない人物の見抜き方|履歴書・面接でわかる「ミスマッチのサイン」


第4章|SPIをうまく使う3つのポイント

1. 「落とす」ためではなく、「理解する」ために使う

SPIはふるい落とすツールではなく、「どんな傾向の人か」を理解する資料です。大企業のように倍率10倍以上の応募が殺到するなら仕方ない面もありますが、中小企業で応募が殺到することは稀です。結果をもとに、面接での質問内容を深掘りする使い方が効果的です。


2. 面接質問とセットで使う

SPI結果の気になる項目(例:協調性・ストレス耐性など)をもとに、以下のような質問を設定すると効果が上がります。

例)SPIで「協調性が低い」と出た場合
「チーム内で意見が合わなかったとき、どのように調整しましたか?」

例)SPIで「慎重すぎる」と出た場合
「仕事でスピードを優先する場面では、どう判断していますか?」


3. 評価会議で「補足資料」として共有

面接官複数名での最終判断時に、SPIの結果を「裏づけ」として使うことで、主観的評価の偏りを減らせます。
ただし、SPI結果だけで採用可否を決めることは避けてください。


第5章|SPIの代わりに使える無料・低コストツール

ツール名 概要 費用 活用ポイント
ミツカリ 社風・性格の相性診断に特化。カルチャーフィット重視。 月5,000円〜 自社社員の分析にも使える
カオナビ適性検査 組織分析と連動可能。クラウド運用向け。 中〜高 定着分析に活用できる
エニアグラム性格診断 無料・教育目的向け。 無料 面接官研修の練習用に最適
RESUS採用質問シート SPIの代替として使える質問テンプレート。 無料(配布中) 面接で人柄と価値観を観察する実務資料。

第6章|SPIを使わない採用の成功法

SPIを導入しない場合でも、「履歴書・面接・非言語サインの観察」を体系化すれば、採用精度は十分に高められます。

おすすめの併用ページ:

▶ [採用してはいけない人物の見抜き方|履歴書・面接でわかるミスマッチのサイン]

▶ [中小企業の採用支援総合ガイド|求人・面接・定着をワンストップで支援]


FAQ(よくある質問)

Q1. SPIは無料で使える方法はありますか?
A. 一般的なSPI3はリクルート提供の有料サービスです。小規模企業では無料診断ツール(ミツカリ、適性クラウドなど)や、当事務所配布の質問シートを代替として活用できます。


Q2. SPIで「協調性が低い」と出た人は不採用にすべきですか?
A. 不採用の根拠にはできません。その結果を「傾向」として面接で確認するのが適切です。たとえば、「他人と意見が対立したときの対応」を尋ね、実際の行動から判断してください。


Q3. SPI導入にはどれくらいのコストがかかりますか?
A. 一般的に1人あたり2,000円前後。年間10人以上の採用を行う企業であれば、コストに見合う運用が可能です。少人数採用では、コスパが悪くなる傾向があります。


Q4. 中小企業に最も向く適性検査はどれですか?
A. 「カルチャーフィット(社風適合性)」を重視した検査が適しています。具体的にはミツカリやエニアグラムなど、人柄と価値観を可視化するタイプが有効です。


Q5. SPIをやめる判断基準はありますか?
A. 以下のような場合は再検討をおすすめします。

  • 面接官が結果を活用できていない

  • SPIの結果と実際の評価が一致しない

  • 年間採用人数が少ない
    →この場合は「質問設計+観察チェックリスト」方式に切り替える方が効率的です。


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まとめ|SPIは「導入するか」より「どう使うか」

SPIは、あくまで「採用判断の道具の一つ」です。
大切なのは、点数ではなく“その人がどう考え、どう行動するか”を見抜く観察力です。
中小企業においては、SPIを導入しなくても、対話と質問設計で十分に人を見抜けます。


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(監修:RESUS社会保険労務士事務所/社会保険労務士 山田雅人)
本ページは、公正採用選考の理念に基づき、中小企業が実務的に採用判断を行うための教育・啓発目的で作成しています。