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【2026年対応版】勤務間インターバルの判定基準と実務対応ガイド|シフト改善・就業規則・FAQつき

2025/11/14

(監修:RESUS社会保険労務士事務所/社会保険労務士 山田雅人)

勤務間インターバル制度は、2026年以降、中小企業にも本格的な導入が求められる重要テーマです。特に夜間勤務・交代制勤務・外勤が多い企業では、就業規則改定・シフト再編・勤怠システムの設定変更が不可避となります。

本ページでは、2025年時点の公式情報(厚生労働省公表資料)を前提としつつ、2026年以降の実務で必須となる具体的なポイントを先取りして、わかりやすく解説しています。

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1.勤務間インターバル義務化とは?

勤務間インターバル制度とは、「終業時刻から翌日の始業時刻まで、一定時間以上の休息時間を確保する仕組み」のことです。

・欧州では11時間が一般的な基準
・日本でも「11時間」を推奨する資料が多数
・2026年以降は、中小企業を含めた幅広い企業が制度整備を求められる見込み

※現時点で“必ず11時間”と明言されているわけではありません。
※正式な義務内容は、厚労省の最終公表を確認したうえで運用してください。

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2.2026年の制度改正で何が変わるのか(実務的ポイント)

2026年の制度見直しにより、「努力義務」から「実質的に義務に近い対応」への段階的移行が想定されています。

企業が注意すべき点としては:

・勤務間インターバル未整備は、労基署からの指導対象になりやすい
・長時間残業・深夜労働の是正指導とセットで確認される
・「従業員の健康確保」に関する監督指導の重要対象
・記録の適正化(勤怠アプリ・打刻)が厳格化する可能性

特に夜勤がある業態(医療・介護・飲食・物流)は早めの準備が必須です。

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3.勤務間インターバル導入の目的

公式の目的は以下のとおり:

● 従業員の健康確保
● 過重労働による労災リスクの防止
● ハラスメント・ミス・事故の削減
● 生産性向上と離職防止

近年の労務トラブルでは「休息不足」「睡眠不足」が原因での事故・ハラスメント認定が増えており、企業側の安全配慮義務の観点からも重要性が高まっています。

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4.勤務間インターバル導入の手順(5ステップ)

STEP1.現状の勤務実態を把握

・残業時間
・深夜帯勤務
・シフト不足
・過去の「終業〜始業」時間
→ 月次データで“インターバル不足”の人数を算出します。

STEP2.勤務体系・シフトの見直し

・受付時間の前倒し/後倒し
・夜勤明けの勤務免除
・仮眠室の運用
・応援体制の構築
→ 特に飲食・物流は「締め作業・立ち上げ作業」の調整が重要。

STEP3.就業規則の改定

・インターバル時間の設定
・適用対象(正社員/パート)
・不足時の取り扱い
・例外扱い
→ 下記モデル条文をそのまま利用できます。

STEP4.勤怠管理システムの設定

・インターバル不足の自動検出
・アラート機能
・シフト自動調整
→ システムによっては手動で設定が必要です。

STEP5.従業員への周知と教育

・インターバル制度の目的
・早出・残業依頼のフロー
・スマホ打刻の注意点
→ 周知が曖昧だと「自主残業」が多発し、制度が意味を持たなくなります。

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5.よくある課題と対応例

夜勤明けに早朝業務が入る
→ 交代要員の確保、夜勤明けは早朝シフト勤務を入れない運用

飲食業・物流業で“締め作業・開店作業”が重なる
→ 作業工程の分離、責任者のローテーション

介護・医療の2交代・3交代勤務
→ 夜勤明けの当日勤務を免除(既に多数の病院で実施)

インターバル不足が避けられない日がある
→ 就業規則に例外規程を設け、管理職の承認フローを明記

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6.勤務間インターバルの就業規則モデル(コピペ可)

以下は、2025年時点で一般的に採用されている形式に基づくモデル案です。
※下記モデル条文は一般的な例であり、業種・勤務体系・制度改正の内容に応じて修正が必要です。最終的には、最新の厚労省資料・労基署の運用に基づき調整してください。

(勤務間インターバル)
第◯条 会社は、従業員の健康確保の観点から、終業時刻から翌日の始業時刻まで、原則として◯時間以上の休息時間(勤務間インターバル)を確保するものとする。
2 前項の休息時間が確保できない場合は、所属長の承認を得たうえで勤務時間の繰下げその他の措置により、可能な限り休息時間を確保する。
3 業務の性質上、緊急の対応や突発的な事情により休息時間が確保できない場合は、所属長はその理由を記録し、従業員の負担軽減のため必要な措置を講じる。
4 本条の規定は、正社員・契約社員・パートタイマー等の雇用形態にかかわらず適用する。

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7.勤怠管理設定の注意点

・自動アラート機能の有無を確認
・「前日の残業申請の未登録」でインターバルが崩れるケース
・早朝出勤の実績と申請のずれ
・外勤(移動時間)との扱い
・夜間の緊急呼び出しの記録

インターバル制度の運用は、システム設定に8割依存します。導入前には必ず検証が必要です。

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8.FAQ(よくある質問)【2026運用版】

Q1.パート・アルバイトにも適用されますか?
A.一般的には、雇用形態を問わず適用する運用が推奨されます。ただし、2026年の最終指針が公表され次第、適用範囲を再確認してください。

Q2.管理監督者(管理職)にも適用されますか?
A.管理監督者は労働時間規制の適用外ですが、健康確保措置としてインターバルを確保するのが望ましいとされています。

Q3.出張の移動時間は休息時間に含まれますか?
A.移動時間が実労働とみなされる場合、インターバル計算に影響します。出張旅程の組み方に注意が必要です。

Q4.夜勤明けに数時間だけ勤務させてもいいですか?
A.健康確保の観点から推奨されません。医療・介護業界では「夜勤明け当日勤務の禁止」を採用する例が増えています。

Q5.インターバルが確保できなかった場合の罰則は?
A.現時点では“直接の罰則規定”は明示されていませんが、労基署の是正指導の対象になる可能性があります。

Q6.繁忙期に例外は認められますか?
A.突発的・一時的な例外は就業規則に明記することで運用可能ですが、常態化はリスクがあります。

Q7.インターバル制度は36協定と関係しますか?
A.両者は別制度ですが、長時間労働の是正のためセットで指導される傾向にあります。

Q8.「自主的な早出」はインターバルに含まれますか?
A.自主的な早出でも、実質的に業務指示と評価される場合はインターバルの対象外となる可能性があります。
会社は「早出の禁止」を明確化する必要があります。

Q9.深夜帯のチャット・メール対応は労働時間ですか?
A.実労働とみなされる可能性が高いため、原則インターバルを阻害します。労務リスクが大きい行為です。

Q10.24時間営業の業種はどうすればよい?
A.交代要員の確保、夜勤明けの勤務免除、シフト入替ルールを整える必要があります。“例外運用”ではなく“構造的な対策”が必要です。

Q11.休息時間を確保できなかった場合、その分の賃金補償は必要ですか?
A.勤務間インターバル制度は「労働時間規制」ではなく「休息時間の確保」を目的とした制度であり、現時点(2025年時点)では直接的な賃金補償ルールは定められていません。ただし、長時間労働や健康障害のリスクがある場合は、別途労働時間管理上の対応が必要となります。

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9.まとめ|勤務間インターバルは「健康確保=経営リスク管理」

勤務間インターバル制度は、
・安全配慮義務
・労災リスク
・ハラスメント・ミス・事故
・離職防止
すべてに直結する、企業の“基盤”です。

早めの就業規則改定・シフト再構築が、2026年の監督指導をスムーズに乗り切る最重要ポイントです。制度変更の方向性が示されている段階で早期に準備を始めることは、労務リスクの低減だけでなく、従業員の安心感や信頼にもつながります。

事務所では、勤務間インターバル制度の整備だけでなく、就業規則改定・勤怠設定・監督署対応まで一貫サポートしております。制度内容が確定した際の追加改定にも対応可能です。

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