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【2026年版】人間関係トラブルの早期発見と職場改善の実務ガイド|悪化前に止める“初期兆候”の見極め方

2025/11/26

(監修:RESUS社会保険労務士事務所/社会保険労務士 山田雅人)


1.はじめに|職場トラブルは「気づいたときにはもう遅い」

人間関係の問題は、表面化した瞬間にはすでに深刻化しているケースが少なくありません。

・突然の退職
・部署内の空気の悪化
・報連相の途絶
・派閥・グループ化
・急なメンタル不調
・クレームや相談の頻発

これらは「原因」ではなくすでに進行した“結果”です。
実務では、問題が表に出た段階では「改善のハードルが非常に高い」ことが多く、企業側の介入が後手に回れば、離職・器物損壊・内部告発・SNSトラブル・労務紛争へ発展する場合もあります。

人材リスク対策で最も重要なのはトラブルが生まれる“前”に気づける仕組みです。


2.なぜ人間関係トラブルは“初期ほど見えない”のか

問題が起き始めた段階では、次の心理が働きます。

・当事者同士が「自分たちで解決しようとする」
・周囲が気づいても「面倒なので関わりたくない」
・当事者が「本音を隠す」
・管理職が「大きな問題だと認めたくない」

つまり、初期段階ほど外からは静かに見えるのが現実です。人間関係の悪化は、「騒がしい職場」ではなく静かな職場から進むことも珍しくありません。


3.早期に察知できる“危険な変化”チェックリスト

以下のうち複数が並行すると、職場で何らかの人間関係トラブルが進行している可能性があります。

□ 前より雑談・笑顔が減った
□ 相談・報告・共有の量が落ちた
□ 部署内で固定化された会話・行動パターンができている
□ 一部の社員だけで意思決定・情報共有が進む
□ 業務のミスよりも“人の言動”に関する注意が増えた
□ 立ち話・休憩の会話が急に減る/増える
□ 些細なことに過剰反応する社員が現れる
□ 不満を口にしない“無関心モード”の社員が出てくる
□ 管理職・リーダーの関与が減っている
□ 書面(チャット・メール)の表現が冷たくなる
□ 急に「自分の仕事だけ」に集中するようになる

1つ発生 → 経過観察
3つ以上 → 早期介入の必要性
5つ以上 → すでにトラブルの地盤が形成されている可能性


4.人間関係トラブルの進行ステージ(初期 → 中期 → 末期)

トラブルは段階的に進行します。末期に介入しても多くは回復困難です。もし職場の空気に少しでも違和感がある場合、放置せず“兆候の段階”で打ち手を考えることが最もコストが小さく効果が大きい対応です。

▼初期(自覚されない段階)

・個人の違和感/無視できる不満
・小さなズレ・誤解
・業務の行き違い

→ この段階での介入が最も効果的

▼中期(可視化段階)

・派閥/結束グループ化
・一部の業務が滞る
・陰口・排除・距離感

→ 小さな態度変化が連鎖し、空気が悪化する

▼末期(破綻段階)

・離職・精神不調
・無断欠勤・バックレ
・内部告発・SNS投稿
・労務相談・弁護士介入

→ もはや“人間関係”ではなく“紛争”領域

企業の課題は初期の段階で気づける仕組みがあるかどうかです。


5.初期段階で企業が取るべき具体策(個人対応・組織対応)

初期兆候を察知したら、以下の順に対応していくことで悪化を防ぎやすくなります。

① 関係性の仮説整理(原因を決めつけない)

・誰と誰の関係性で起きているのか
・業務の問題か、人間関係の問題か
・構造問題か、個人問題か

② 双方向の“事実情報”の把握

・片側のヒアリングのみで結論を出さない
・感情ではなく事実・行動を中心に聴取する
・本人が言いにくいことは外部相談窓口など第三者機関を併用

③ 必要なサポート・調整

・業務の優先順位整理
・期待値調整
・役割の明確化
・相互理解の場づくり

④ 再発防止

・指摘の伝え方の統一
・コミュニケーションルール整備
・フィードバック研修
・定期面談・相談窓口・ES調査

“個人が悪い”という認識で対処すると火種が残り、長期的に再燃しやすい点に注意が必要です。


6.管理職が「やってはいけない対応」

よく見られる失敗例は以下です。

・「2人で勝手に解決してほしい」と放置
・原因を“能力”や“性格”に求めてしまう
・片側の話だけを信じて決めつける
・“気のせい”“考えすぎ”として扱う
・問題を大きくしないために隠蔽しようとする

これらは短期的な平穏を生むかもしれません。しかし長期的には【沈黙 → 固定化 → 分断 → 退職 → 紛争化】という最悪の流れを招きます。

“自力解決に任せる”ことは放置ではなく、問題の先送りです。


7.改善を加速させる仕組みづくり

早期発見と早期改善を実現するには、次が有効です。

✅社内相談窓口と外部相談窓口の併用
✅1on1面談の設計(話しづらさを残さない)
✅ES調査による定点観測
✅チャットや定例会での共有ルール
✅管理職研修の定期運用
✅ハラスメント調査の体制整備

問題発生後の対処よりも、問題発生前の“予防と検知”の仕組みのほうが圧倒的に効果的です。


8.よくある質問(FAQ)

Q:人間関係のトラブルをどこから「企業問題」と捉えるべきですか?
A:本人同士の不仲ではなく、職場環境・業務・離職に影響する状態が見られる段階です。

Q:小さなトラブルに介入すると“過保護”になりませんか?
A:問題の大小よりも、悪化の兆候が連続しているかが判断基準となります。

Q:匿名アンケートやES調査は本当に効果がありますか?
A:初期兆候の可視化・改善の優先順位づけに非常に有効です。

Q:外部相談窓口はどのタイミングで導入すべきですか?
A:問題が起きてからではなく、予防の段階で導入するほうが効果があります。

Q:人間関係の問題とハラスメント問題は同じ扱いですか?
A:重なる部分はありますが同一ではありません。人間関係の不調がハラスメントへ発展するケースがある一方で、業務設計や役割の不明確さが背景にある場合も多く、分類よりも早期の状況把握と改善が重要です。


9.支援サービスのご案内

RESUS社会保険労務士事務所では、職場の人間関係トラブルの早期発見・予防のため、以下の支援を提供しています。

管理職向け人間関係トラブル予防研修
評価フィードバック研修・伝え方トレーニング
外部ハラスメント相談窓口
匿名ES調査・改善提案
社内マニュアル・規程・運用ルールの整備
トラブル発生時の第三者調査・改善支援

お気軽にご相談ください(初回相談無料)。

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免責・注記

・本ページは厚生労働省指針および関連制度の内容に沿って記載していますが、すべての事案に法的判断を直接適用できるものではありません。
・本内容は2025年11月時点の情報に基づき作成しており、今後の法令・通達等の更新により変更となる場合があります。
・実務対応にあたっては、個別ケースごとの状況や事実関係を確認したうえで検討されることを推奨いたします。


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