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助成金が不支給に!? 「会社都合退職」とみなされる意外な理由とは【2025年最新版】

2019/11/19

(最終更新日:2025/08/25)

2025年度も、さまざまな雇用関係助成金が企業支援に活用されていますが、その一方で「助成金が通らなかった」というトラブルも。
多くの場合、見落とされがちな『事業主都合による離職』が原因です。

✅この記事でわかること

  • 助成金申請でチェックされる「事業主都合離職」とは何か

  • 解雇・退職勧奨以外にもある不支給リスクのある退職理由

  • 残業やハラスメントが助成金に影響する理由

  • 間違った手続きが企業と従業員に与える影響とは?

 

助成金申請で見落とせない「会社都合離職」の定義とは?

厚生労働省が管轄する雇用関係助成金には、**受給要件の一つとして「事業主都合による離職がないこと」**が設定されています。
特に次のような条項が、多くの助成金に共通して記載されています。

✅ 助成金の主な受給制限

  1. 対象労働者の雇入れの前後6カ月間に、事業主都合による解雇や退職勧奨をしていないこと

  2. 同期間内に、倒産・解雇など「特定受給資格者」に該当する離職者が、雇用保険被保険者の6%を超えていないこと
    (※ただし該当者が3人以下の場合は除外)

 

これらに該当する場合、助成金は不支給または返還対象となります。

 

解雇や倒産だけじゃない!助成金が止まる「事業主都合退職」の例

助成金の受給要件に抵触する「特定受給資格者」とは、以下のような理由で退職した従業員を指します。


 該当しうる退職ケース(例)

  • 長時間労働(違法残業)

  • ハラスメント(パワハラ・セクハラ等)

  • 妊娠・出産・育児による不利益取り扱い

  • 雇止め(無期転換申込権の不当拒否含む)

  • 就業条件の著しい変更(例:給与減額が15%以上)

  • 高齢者の雇用確保義務違反(65歳雇用推進義務)

  • 賃金の未払い・遅配(3か月以上)

  • 労働契約書や台帳の不備

  • 労基署の是正指導に従わない場合

➡企業が“自主退職だと思っていた”場合でも、ハローワーク側が“会社都合”と判断するケースがあります。


⚠ 長時間労働があると「会社都合」と判断される条件

特に見落とされがちなのが過重労働による離職者です。
厚労省では以下のいずれかに該当すると、労働者本人の意思による退職でも「特定受給資格者」に分類する可能性があります。

  • 3カ月連続で月45時間超の時間外労働があった

  • 2~6カ月平均で月80時間超の残業があった

  • 1カ月で100時間を超える時間外労働があった

これは、労働基準法第36条(時間外労働協定)の上限違反と一致するため、助成金支給対象外と判断されやすくなります。


不適切な離職手続きは企業リスクに直結

 よくあるミスと注意点

  • ハローワークへの「資格喪失届」の離職理由の入力ミス
     →「2(自己都合)」とすべきところを「3(会社都合)」と誤って申告

  • 「労働者本人に頼まれて」会社都合退職にしてしまう
     → 実態と異なる申告は不正受給・虚偽申請に該当する可能性あり

 


 修正可能なケースと対処法

入力ミスに気付いた場合は、速やかにハローワークへ連絡し、訂正届の再提出を行えば問題ありません。
放置して助成金申請をすると、不受理・返還・将来的な申請制限のリスクがあります。


離職理由が争われた場合、何が証拠になる?

本人と企業の主張が異なる場合、ハローワークや裁判所は客観的な証拠を重視します。


✅ 有効な証明例

  • タイムカードやICカードの出退勤記録

  • メールやチャットアプリの履歴

  • パソコンの操作ログやスクリーンショット

  • 録音・録画データ(合法な手段での取得)

これらは、未払い残業代請求や退職理由変更申立の際にも有効です。


助成金申請のために「嘘をつく」とどうなる?

従業員のためを思って…という理由で事実と異なる離職理由を届け出ると、
会社・本人ともに次のようなリスクが生じます。

  • 企業:助成金の不支給、返還命令、ペナルティ期間(数年間の受給停止)

  • 労働者:失業給付の不正受給として返還や制裁対象に

 

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 解雇していなくても助成金が不支給になることはありますか?

A. はい、あります。
本人が自主的に辞めたように見えても、過重労働・ハラスメント・就業条件の不利益変更などが原因と認定されれば「会社都合退職」と判断され、助成金の不支給につながることがあります。

Q2. 離職者が1人でもいると助成金は受けられませんか?

A. 条件次第で受給可能です。
「特定受給資格者」が3人以下かつ被保険者数の6%以下であれば、多くの助成金では受給が可能です。ただし、解雇や退職勧奨があった場合は、原則として要件不該当になります。

Q3. 自己都合退職で処理したのに、後から「会社都合だった」と言われたらどうなりますか?

A. ハローワークが調査し、会社都合と認定されることがあります。
労働者から「異議あり」の申し出があり、客観的な証拠が提示された場合、離職票の理由が変更されることもあります。助成金の申請にも影響するため、事実に基づく記載が必要です。

Q4. 資格喪失届の「離職理由」を間違って記載してしまいました。どうすればいいですか?

A. 気づいた時点で速やかにハローワークに連絡し、訂正届を提出してください。
そのまま助成金を申請すると不受理や返還の対象になる恐れがあります。訂正すれば問題にはなりませんので、早めの対応が大切です。

Q5. 従業員から「会社都合にしてほしい」と頼まれた場合、応じてもいいですか?

A. 応じるべきではありません。
本人の希望に基づいて虚偽の理由を記載すると、助成金の不正受給や失業給付の不正申請に該当する恐れがあります。企業・労働者ともにペナルティを受ける可能性があるため、事実に沿った対応が必須です。

Q6. 残業時間が多い会社は助成金をもらえないのですか?

A. 一定の基準を超える残業が原因で退職者が出た場合、助成金に影響します。
以下の条件に該当する長時間労働があると、「特定受給資格者」と見なされる可能性があります:

  • 3カ月連続で月45時間超の残業

  • 2〜6カ月平均で月80時間超の残業

  • 1カ月で100時間超の残業

予防策として、日常的な労務管理と時間外労働の抑制が不可欠です。

Q7. 調査で過去の労務トラブルが見つかったら、助成金は全額返還ですか?

A. 内容によります。
要件に重大な違反があれば、支給取り消し・返還・以後数年間の申請制限が課される可能性もあります。過去の労働トラブルを放置していると、将来的な助成金活用が困難になります。

 


まとめ|「会社都合」は広く見られている。日頃から労務管理の徹底を!

表向きは自己都合でも、ハローワークが実態から「会社都合」と判断することは珍しくありません。
助成金の申請を見据えるなら、以下を整備しましょう。

  • 時間外労働の上限遵守と削減努力

  • ハラスメント対策の整備(研修・窓口)

  • 妊娠・育児に関する法令順守

  • 契約書・台帳・就業規則の整備

  • 正確な労務記録と対応履歴の保存

 


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※記事内容は公開日現在の法制度・通達・公的資料等に基づいています。詳細は厚生労働省・管轄機関にて最新情報をご確認ください。
(参考資料:厚生労働省「雇用関係助成金共通要領」、ハローワーク「受給資格のしおり」ほか)