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【最新判例】パワハラ裁判例で学ぶ企業の責任と防止義務|2025年対応版(社労士監修)
2025/09/25
はじめに|なぜパワハラ判例から学ぶのか
パワーハラスメント(パワハラ)は、単なる人間関係のトラブルにとどまらず、労災認定・企業の損害賠償責任・役員責任に直結する重大リスクです。
厚労省の「パワハラ指針」や労働施策総合推進法により、防止措置義務が企業に課されている中、令和時代の事件で裁判所は企業の責任を厳しく認定する傾向を強めています。
本ページでは、令和時代の最新パワハラ判例を整理し、企業がとるべき具体的対応策を明らかにし、企業としての正しい姿勢と労働者の働きやすい会社に向けて構成しています。
主なパワハラ判例一覧(2020〜2025年)
▼近年判決となった裁判例を以下にまとめました(PC閲覧推奨)
裁判所 | 判決日 | 事案 | 裁判所の判断 | 企業への教訓 |
---|---|---|---|---|
東京地裁 | 2020/9/17 | 上司が日常的に「使えない」と罵倒 | 精神疾患発症との因果関係を認定 | 指導と称する人格否定は違法 |
名古屋高裁 | 2021/4/22 | 過大ノルマと深夜呼び出し | 業務上必要性を逸脱、会社に損害賠償命令 | ノルマ設定・働かせ方もパワハラ対象 |
大阪地裁 | 2022/3/9 | 叱責メールを毎日送信 | 私的制裁にあたり違法 | メール・チャットも証拠化されやすい |
広島地裁 | 2022/12/1 | 会議で部下を繰り返し晒し者に | 公開叱責は職場環境を害する | 会議での指導は冷静・建設的に |
東京高裁 | 2023/7/14 | 長時間残業強要+「やめればいい」発言 | 過労と自殺の因果関係を認定 | 過重労働+暴言は重大リスク |
福岡地裁 | 2023/11/28 | 派遣社員への継続的な無視・排除 | 職場環境配慮義務違反 | 同僚間の無視も企業責任対象 |
札幌地裁 | 2024/5/23 | 研修中に人格を否定する発言 | 教育目的を逸脱、企業に損害賠償 | 研修担当者にも教育 |
東京地裁 | 2024/10/30 | 上司が「辞めろ」と繰り返す | 離職強要と認定 | 不当な退職勧奨は違法 |
名古屋地裁 | 2025/2/18 | 管理職が飲み会で部下を罵倒 | 私的場でも職務関連性あり | 飲み会もパワハラ対象 |
大阪高裁 | 2025/6/5 | 人事権を背景に昇進妨害 | 優越的地位の濫用 | 公正な人事評価の仕組みが必須 |
※本一覧は公開された裁判例を基に当事務所が整理したもので、個別案件への法的助言には代用できません。
判例から見える企業の責任
これらの判例を通じて明らかになる企業責任は以下の通りです。
-
職場環境配慮義務(労働契約法5条・民法709条)
人格否定や過重労働を放置すれば会社が責任を負う。 -
防止措置義務(労働施策総合推進法30条の2・通称:パワハラ防止法)
就業規則・相談窓口・調査・再発防止までを整備する義務。 -
通報者保護(公益通報者保護法・同施行規則)
内部告発・通報を理由とする不利益取扱いは禁止。
実務対応チェックリスト(企業・管理職向け)
✅ 就業規則に「パワハラ禁止規定」を明文化しているか
✅ 相談窓口を複数設置し、外部相談窓口も活用しているか
✅ 管理職研修で「指導とパワハラの境界」を教育しているか
✅ 記録(メール・チャット・会話メモ)の保存体制を整備しているか
✅ 調査・懲戒処分のフローを文書化しているか
✅ ノルマ・配置転換・退職勧奨の運用を監査しているか
✅ 精神疾患リスク(労災認定)への対応手順を備えているか
FAQ|パワハラ判例と企業実務
Q1. 厳しい指導とパワハラの違いは?
A. 業務改善に必要かつ合理的な範囲なら指導。人格否定・過大要求・継続的行為はパワハラとされます。
Q2. 飲み会や研修中の発言もパワハラですか?
A. はい。判例では「職務関連性があれば業務外行為も対象」とされています。
Q3. 証拠がなくても調査は必要ですか?
A. 必要です。調査義務を怠っただけで企業責任を問われた判例があります。
Q4. 通報者を配置転換したら問題になりますか?
A. 不利益取扱いと見なされるリスクが高いため、正当な理由がない限り慎重に対応すべきです。
Q5. 社外の相談窓口を使ってもいいですか?
A. はい。厚労省の指針でも外部相談窓口の導入は推奨されています。社内で相談しづらい場合でも、第三者の専門家を通じて安心して声を上げられる仕組みが有効です。
Q6. パワハラ防止のために企業が最優先で整えるべきものは?
A. 就業規則へのパワハラ禁止規定と相談窓口の整備です。これが無い場合、裁判で「防止措置義務違反」と判断されるリスクが極めて高いです。
まとめ|判例は「予防の教科書」
パワハラ判例は、企業にとって 「過去の失敗」ではなく「未来の予防策」 を示す教科書です。
透明性ある規程、実効的な相談窓口、管理職研修を組み合わせてこそ、パワハラ防止と早期解決が可能です。
さらに、健全な職場づくりは 従業員定着率の向上や採用力アップにも直結 します。
▶ セクハラ判例の最新動向はこちら
【最新判例】セクハラ裁判例で学ぶ企業の責任と防止義務|2025年対応版(社労士監修)
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【記事監修者】
本記事は RESUS社会保険労務士事務所(代表:社会保険労務士 山田雅人) が監修しています。
企業の労務管理・ハラスメント対策に精通した専門家の立場から執筆しています。
【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事業所への法的助言には代えられません。必ず顧問弁護士・社労士にご相談ください。