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就業規則は誰のため?わかりやすいって何だろう(です・ます調は非常識?)

2021/08/20

常時10人以上の労働者を使用している事業場では就業規則を作成し、労働者代表等の意見書を添付し、所轄労働基準監督署に届け出なければならない(労働基準法第89条、90条)

長引く新型コロナウイルスの対応で社内の労務管理を考える機会が増えたことから、就業規則の不備に気が付いたり、ウィズコロナに向けたテレワーク規程の整備や感染者対策など見直しを検討している会社が増えているようです。本格化するワクチン接種は職場内で義務化されるなど話題となっているのではないでしょうか。

毎日ニュースで取り上げられた雇用調整助成金はじめ、テレワーク関連の助成金要件や社内の感染対策ルールなどに規則が用いられる機会も多かったことから、当社も本年は過去にないほど規程に関する相談が多かった1年間であり、常にどこかの会社の規則作成に頭を悩ませていただいております。知人の弁護士事務所や社労士事務所も労務相談はかなり多かったようです。

そんな今年出番の多かった就業規則、労働者が10人未満の会社では作成が義務付けられていませんが、実際は中小企業の8割が就業規則を作成しているといいます。

≪参照:平成30年度中小企業の雇用状況等に関する調査(中小企業庁)より≫

※なお、同調査では規則策定・見直し時は60%が社会保険労務士事務所に相談していると回答されています。

 

「ですます調」の就業規則は非常識!?

働く人たちとしては、コロナで失業や休業の不安がある中、自分の職場のルールはどうなっているのか確認された方も多いと思いますし、事業者としても、職場で感染拡大した万が一の補償の範囲から、雇用調整助成金やその他コロナ関連の補助金が自社に適用できるかどうかについて多岐にわたって調べてこられたことでしょう。

さて、就業規則の整備に向けて動いている会社からの相談の中で、堅苦しい文章が嫌なので、問題が無ければ「ですます調」の柔らかい文章で作成してほしいという初めてのご要望をいただき納品いたしました。社員への説明会も無事に終え、職場の雰囲気がガラッと変わったと大変お喜びいただきました。もちろん、過去にも語尾についてどちらがいいかの相談はありましたが、最終的には「だ・である調」での作成となることが100%でした。

同業者にこんな話をしましたところ、最近は就業規則作成アプリでも「ですます調対応」のものがあるし、厚生労働省でも外国人向けに「モデル就業規則(やさしい日本語版)」を発行していると教えていただきました。お恥ずかしい話、当方は言われて初めて優しい日本語版の就業規則を見ました。いろいろと勉強になります。

(A.普通の就業規則)

第●条 労働者は誠実に職務を遂行し職場秩序の維持に努めなければならない。

(B.やさしい日本語版就業規則)

第●条 働く人はまじめに仕事をして働く場所のいろいろな関係がうまくいくようにしなければなりません。

 

近年は少子高齢化による人手不足に加えて新型コロナで急速に雇用形態が多様化しており、外国人労働者を採用している中小企業も増えています。

それでも、世の中の就業規則は99%が「だ・である」調だと思います。インターネットで【就業規則 ひな型】と検索すれば膨大な量が出てきますが、そのどれもがしっくりこないのは、難解な文章に加えて全ての語尾が「だ・である調(常体)」なのが原因かもしれません。

就業規則は労働者と会社が裁判で争う場合に強力な証拠となり勝ち負けに大きく影響を与えますし、労務を学ぶときには就業規則がいかに企業を守るために重要となるかを徹底的に叩き込まれます。社労士事務所や弁護士事務所でもそうして「会社を守る」ことを目的として策定しているため、難しい法律文書でびっしりとルールを定めています。そのため、自社のルールを経営者が理解していないことがあります。自社のルールはどうなっているか顧問先に問合せしないとわからないということも珍しくありません。

職場の秩序維持を目的とする就業規則の理解を深めるための方法として、(やさしい日本語版を使うかは別として)誰にでもわかりやすい日本語を工夫することも確かに必要なことです。わかりやすさの追求で本則内にイラストを挿入したり、アニメーションや漫画で補足資料を作成することも法的な有効性には問題ありません。

争いになったときのことももちろん大切ですが、ですます調で作成を依頼いただいた事業主様のように、まずは社長含め、「みんなが協力しあって働くための大切な決まり事」であることに主眼を移して就業規則を作成することも必要だと目から鱗の一件でした。

 

就業規則に常識は必要か

今では信じられませんが、10年以上前に規則作成の仕事を始めた頃は、企業の責任者に「品がない」と言われたり、「表現が軽い」とか、「この表現では社員に舐められる」と言われて作り直したことがあります。

そういえば最近は育児・介護関係の規定は別規程が一般的になりましたが昔は本則内にびっしり並べるのが常識でしたし、データではなく紙やスキャンされたPDFだったり金庫に厳重に収納されていたりと探しにくいのが当たり前でしたので、少しずつではありますが就業規則は厳格な位置づけより、デジタル技術の進歩も相まって実務のツールとして利用する機会も増え、理解しやすく変わってきているのは間違いありません。「絶対に明朝体」というわけでもなく、メイリオや游ゴシックなど角の丸いフォントを使っているところもあります。

 

わかりやすさは個人の主観的なものになりますが、裁判所向きの品や格式にこだわりすぎず、日常で使う平易な文言、見やすい文体(フォント)で、探しやすい場所に項目ごとに分けるなど、本当に理解してもらうべき従業員の「最大多数の最大理解」ためにベターなものを作成することは、「治療」ではなく「予防」と考えれば長期的な視野でも有益です。大企業に勤務している方や若い世代からすれば「コイツ何当たり前のこと言うとんねん」ですが、中小企業ではまだまだ当たり前とは言えないです。わかりやすさはどこの会社にも汎用性がありますので、お客様(の会社の従業員)が喜んでくれて業務的にも楽になれば当社的にもいうことはありません。

次のご依頼からは特に指定がなければ、ですます調のもので初回納品してみようかなー。どうですか?

 

就業規則はこだわらない方がいい!?(事務所代表のひとりごと)

多少の経験があるため就業規則はこだわって自分で一から作りたいという猛者がいますが、ホームーページ制作や自宅の新築と同様に、素人がこだわると失敗します。やはり餅は餅屋であり、売れてる就業規則作成アプリを活用したり、予算的に余裕があるなら弁護士や社労士などプロのアドバイスを受けながら作成するのが長期的に見れば安全です。自分で作成した就業規則を後から専門家に添削依頼すると、新たに作成するより高くつくこともあります。

1.自己都合退職は3カ月前の通知にしてほしい

1.有給休暇は上司の許可を取るようにしてほしい

1.有給休暇は代わりの人員を用意してから取得するようにしてほしい

1.遅刻は罰金1万円。欠勤は罰金10万円

1.社内恋愛禁止の項目を入れてほしい

1.競合他社への転職を禁止してほしい

など、どうしてもこだわりたいルールだったとしても、法的に「そらあかんで(無効)」という内容を記載してしまいトラブルになるケースは多々あります。そんなことは知っているけれど入れてほしいと言われることもあります。顧問先であれば強く諫めますが、就業規則に記載するだけなら事業主の自由ともいえるため、常識はずれで社員に嫌われる項目であっても強く求められた場合には記載することもあります。規則作成だけの請負契約であればやむを得ません。

一方で、同業者が作成した文書でも「絶対に●●してはならない」など、「絶対」を多用している就業規則を見かけますが読んでて嫌な気持ちになるので、当社の規則に絶対の文字はありません。

 

いずれにしても、新型コロナで新しい職場、新しい働き方は嫌でもすすんで行きます。かつては当然だった社長一人の一方的なトップダウンによる指揮では社員の心をつかむことができない時代ですし、カリスマ社長も法律には勝てません。社内規則にもわかりやすさを工夫し、社内規則の理解を深め、社長も従業員も同じ目線で労使対等な話し合いをしながら経営活動を行うことが慢性的な人手不足に陥りにくい健全な経営手法なのだと思います。

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