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【2025年版】「リベンジ退職」とは何か|企業側が知っておくべきリスクと安全な初動対応

2025/11/13

監修:RESUS社会保険労務士事務所(社会保険労務士 山田雅人)


はじめに|“リベンジ退職”は企業リスクの新潮流

近年、SNSやYouTube、匿名掲示板を中心に「リベンジ退職」という言葉が急速に浸透しつつあります。海外では少し前からトレンドに上がっているキーワードでしたが、近年は日本国内でも話題が急増しています。

リベンジ退職とは、退職を機に、会社への不満・トラブル・ストレスが噴出し、「報復」「暴露」「批判」「炎上」につながる行為全般を指します。

これは単なる「辞め方の問題」ではなく、企業の信用・採用・人材定着に直結する経営リスクです。

本ガイドでは、企業側に必要な
「リベンジ退職の理解」
「発生のメカニズム」
「予兆」
「初動対応」
「予防策」
を、実務の観点から整理します。


1.リベンジ退職とは何か(定義と特徴)

■ 定義

リベンジ退職とは、退職時に発生する「企業への不満・怒り」に基づく行動で、次のような行為が含まれます。

  • SNSでの批判投稿

  • 口コミサイト(Googleマップなど)への低評価

  • 内部事情の暴露

  • 同僚へのネガティブな誘導

  • 退職代行を使い「報復感情」を伴う辞職

  • 引き継ぎ拒否・無断欠勤・バックレ

  • 会社の不備を外部機関に通報

いずれも、共通しているのは「会社に対する失望感や不公平感が限界に達している」という点です。

■ リベンジ退職は“新しい概念”ではない

従来から存在していた「退職時トラブル」ですが、SNS時代では“影響力の大きさ”がまったく異なります。

1度のネガティブ投稿が求人応募数の激減・離職率上昇・採用単価の高騰につながるのが現代の特徴です。


2.リベンジ退職が起きる5つの主要要因

リベンジ退職は「その場の怒り」ではありません。多くは、長期間積み重ねた“職場体験”の結果です。

(1)不十分なコミュニケーション・放置

  • ミス指摘が感情的

  • 一定の基準がなく、人によって対応が違う

  • 結果だけ求め、感謝や承認が少ない

部下は“理由がわからない叱責”に強いストレスを感じます。

(2)ハラスメント・不公平感

  • パワハラ・モラハラ

  • 負担の偏り

  • 一部の社員だけ優遇

  • 人事評価の不透明さ

「どうせ辞めても誰も守ってくれない」という気持ちが生まれます。

(3)退職の申し出時の対応が不適切

  • 強引な引き止め

  • 無理な引き継ぎ要求

  • 退職理由を執拗に追及

  • 上司の感情的な対応

この“最後の1か月”の扱いが、リベンジ退職を誘発します。

(4)退職代行の普及

一部の退職代行サービスでは、「会社から解放されよう」「あなたの代わりに伝えます」など、利用者の感情に寄り添う“強めの訴求”が見られる場合があります。こうした広告トーンにより、本人の感情が増幅され、結果として退職トラブルが深刻化するケースもあります。

▶退職代行トラブル防止マニュアル|中小企業・小規模法人向け労務リスク対策

(5)SNS文化の影響

  • 評価サイトへの投稿が当たり前

  • 匿名で気軽に発信できる

  • “会社が悪い”ストーリーは拡散しやすい

企業の対応次第で、炎上のリスクが一気に高まります。


3.リベンジ退職の“予兆”を見抜くポイント

突然に見えても、必ず前兆があります。

■ 社員の行動から読み取れる予兆

  • ミスが増える・遅刻が増える

  • 同僚との距離が離れ始める

  • 会話が減り、意欲が低下

  • 小さな不満を頻繁に口にする

  • 上司に相談しなくなる

■ 退職を申し出た段階での予兆

  • 話し合いを避ける

  • 退職理由を濁す

  • 有休取得を急に要求

  • 引き継ぎに協力的でない

  • 退職日が極端に早い

  • 書類提出に消極的

こうしたサインが重なったときは、“リベンジ退職の可能性が高まっている”と考えるべきです。


4.企業が最初に取るべき「初動対応」

初動対応を誤ると、不満が増幅し、SNSや口コミに波及します。

(1)最初にやるべきは「話を聞く」こと

退職理由が不満系の場合、まずは安全に話せる場(1対1の冷静な場)をつくります。

(2)引き止めは“原則禁止”

  • 感情を逆なでする可能性大

  • トラブル化しやすい

  • 退職代行にエスカレートするきっかけに

会社側のメリットより本人の安全性・安心感を優先します。

(3)退職プロセスを明文化し、淡々と説明

退職手続は「入社」以上に“丁寧な説明”が必要です。

  • 退職日

  • 有休消化

  • 引き継ぎ

  • 貸与物の返却

  • 秘密保持義務

  • 連絡窓口

  • 最終給与

  • 社会保険の扱い

上記を丁寧に告知すると、不信感を大幅に抑えられます。退職者向けの退職手続き案内文を作成しておくのも退職トラブル防止に効果的です。

(4)感情的な反応は禁物

  • 説教

  • 非難

  • 圧迫

  • 反論

  • 強い語気

これらはすべて“リベンジ退職の燃料”になります。

(5)相談窓口(外部)の案内

退職時も相談窓口の役割は非常に大きいです。「もし不安があれば、外部窓口に相談できます」と伝えることで、SNSに向かう前に“安全なガス抜き”ができます。

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5.SNS炎上・口コミ悪化を防ぐための対策

(1)退職者の不満をSNSに向かわせない

企業がコントロールできるのは“事前の満足感”“退職時の安心感”です。

(2)口コミ投稿のメカニズムを理解する

口コミは「満足」より“不満”のほうが投稿されやすいという心理があります。

退職者は特に、
・不公平感
・不満の蓄積
・評価されなかった体験
が強いため、投稿リスクが高い層です。

(3)退職者の不満ポイントは必ず社内改善に使う

退職者からの不満や要求は、貴重な意見であり、組織改善に活かせる重要なフィードバックとなることもあります。

  • 人間関係の問題

  • 上司の指導

  • 業務量の偏り

  • 評価制度の歪み

  • 組織構造の問題

退職者の不満は“組織改善のヒント”になります。


6.会社がとるべき“予防策”まとめ(チェックリスト付)

■ 日常の予防策

  • ミス指摘の言い方を見直す

  • 人間関係の問題に早期対応

  • 評価基準の明確化

  • 業務・負担の偏りを減らす

  • 上司のモラハラ予防研修を定期実施

  • メンタル不調サインの早期発見

  • 外部相談窓口の設置

■ 退職申出後の予防策

  • 感情的な対応をしない

  • 退職理由は追及しない

  • 引き止めはしない

  • 手続の明文化と丁寧な説明

  • 貸与物回収・有休消化などをスムーズに整理

  • 最後の対話を整える(感謝・ねぎらい)

チェックリスト(簡易版)

✅退職者との最終面談を“安全に話せる空間”で行っているか

✅引き止め行為をしていないか

✅担当者の言動が感情的になっていないか

✅不満を外部へ持ち出される前に、内部の窓口で受け止められる仕組みがあるか

✅退職プロセスが明確に“手順化”されているか


7.まとめ|リベンジ退職は“企業文化の鏡”

リベンジ退職は、個人の問題ではなく 「組織の状態を映し出す鏡」 です。

  • 日常のマネジメント

  • コミュニケーション

  • 上司の指導

  • 評価基準

  • 退職時の対応

これらを整えることで、リベンジ退職は大幅に減らすことができます。

そして最も重要なのは、不満をSNSや外部へ出させない“安全な受け皿”をつくることです。

RESUS社会保険労務士事務所では、退職トラブルの初期対応から、相談窓口の設置、研修、制度改善まで一貫して支援しています。

「退職トラブルが起きそう」
「口コミが気になっている」
「管理職の言動を改善したい」

そんなときは、お気軽にご相談ください。


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