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【2026年対応版】“働かないおじさん問題”の正しい解決ガイド|評価・指導・配置転換を「ハラスメントにせず」改善する実務

2025/11/26

(監修:RESUS社会保険労務士事務所/社会保険労務士 山田雅人)

本ページでは、“働かないおじさん問題とは何か”を明確化し、原因・対応策・制度設計の観点から実務的に解説します。

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■ はじめに|“働かないおじさん”という言葉の誤解と危険性

まず前提として、“働かないおじさん”という表現は本来、年齢や属性をもとにしたレッテル貼りであり、推奨されるものではありません。しかし現場では、
「仕事量が少なく、責任を果たしていない中高年社員がいる」
「若手ばかりが負担し、世代間の不満が生まれている」
といった状況を表現する俗語として使われることが増えています。

この問題を“本人の怠慢”と捉えると、叱責、冷遇、退職圧力につながり、パワハラ・メンタル不調・紛争・離職の重大リスクになりますが、組織課題として捉えることで、予防・改善につながる建設的な取り組みが可能になります。

「働かないのではなく、働けない環境・役割・評価制度・人間関係の問題。」

そのため本記事では、働かないおじさん問題とは特定の属性を否定する発想からではなく「制度・役割・配置・マネジメントの改善によって成果に戻す」という“安全で再現性のある実務アプローチ”を解説します。

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■ 1.“働かないおじさん問題”はなぜ起きるのか

現場でよく見られる背景は次の通りです。

・役割と期待水準が曖昧で、何をすれば評価されるか分からない
・かつての成功経験と現在の役割が合致していない
・若手中心の組織に変わり、活躍機会や情報が得られない
・評価・面談が形骸化し、フィードバックが機能していない
・健康状態、心理的安全性、職場内人間関係の影響

つまり、「本人の能力や年齢による問題」ではなく、「組織設計・育成設計・評価運用の問題」であることが多いのが実態です。

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■ 2.法律・コンプライアンス上の注意点

次の行為は、ハラスメント・差別・人事訴訟の大きなリスクとなります。

・年齢や属性を理由に役割や評価を下げる
・「もう若くないんだから」「早く退職したら?」などの示唆
・過大な業務負荷を故意に与えて退職させようとする
・職場での冷遇・孤立化・情報から外す
・評価の根拠が曖昧、または不公平

改善のための指導は認められますが、「人格否定」「威圧」「罰を意図した配置転換」は禁止されます。

※本ページは法令の一般的な原則を踏まえた説明であり、個別事案の適法性を断定するものではありません。

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■ 3.“働けていない状態”を整理する分類(5パターン)

改善アプローチは、状況別に次の分類で整理すると実務対応が明確になります。

1)役割の曖昧さ

 何が求められているか不明確で動けない

2)役割量の低さ

 現在の業務量が少なすぎて“低稼働状態”化

3)能力ギャップ

 スキル・IT・新体制への非対応が足かせに

4)健康問題(メンタル・身体)

 業務遂行能力の低下が背景にある

5)関係悪化・心理的安全性の低下

 相談できない、聞きづらい、頼れない

いずれの場合も「叱る」ことでは改善せず、原因に応じた個別のアプローチ設計が必要です。

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■ 4.改善のための正攻法アプローチ

重要なのは、指導ではなく「設計」です。

・業務の目的と役割の具体化
・期待行動や成果基準の言語化
・短期目標の設定と毎週レビュー
・“何を直せば良いか”の明示
・成功事例のフィードバック
・小さな成功体験の累積
・面談記録の作成(透明性確保)

配置転換が必要な場合は、「罰として」ではなく「成果を出しやすい環境に移す文脈」で行うことが重要です。指導の強度ではなく“設計の精度”を上げることで、対立を生まずに改善できます。

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■ 5.改善が難航した場合のステップ

いきなり厳しい措置に進むのではなく、段階的に進めることが原則です。

1)業務内容・指導内容・面談の記録
2)短期目標と評価基準の明確化
3)支援・教育機会の提供
4)配置転換(合理的な説明を伴う)
5)評価制度に基づく評価
6)懲戒等が必要な場合は、就業規則・法律との整合性を確認

※懲戒の要否は“結果が悪いから”では決まりません。
※改善の機会・説明・公平性が極めて重要です。なお、懲戒の要否判断には個別事案の精査が不可欠であり、社内のみで判断せず、専門家への相談を推奨します。

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■ 6.改善に成功した組織の共通点

成功事例には次の3つの共通点があります。

・世代対立ではなく「役割の再設計」に焦点を当てた
・管理職側の“伝え方・関わり方”の見直しを行った
・評価制度と育成・指導が一体化していた

特に2つ目の「伝え方」「圧のない指導」「関わり方の型」は改善の決定打になることが多く、管理職研修の効果が最も高い領域です。改善は「本人が変わる」ことではなく「環境と役割が整う」ことで自然に実現しています。

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■ 7.まとめ|解決の鍵は“責める”ではなく“設計する”

“働かないおじさん問題”は本人の怠慢ではなく、「制度・役割・コミュニケーション設計のミスマッチ」から起きることが大半です。

誰かを責める構造では問題の根本解決にならず、また新たな「働かないおじさん」を生むだけです。組織運営の観点から考え、「役割の再設計」「圧のない指導」「評価基準の明確化」これらを揃えることで自然と成果に戻ります。

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■ 当社の人材活用サービスメニュー

※必要に応じて、下記の専門支援もご提供しています。

管理職向け「伝え方・関わり方」実務研修
ハラスメント・グレーゾーン指導研修
外部ハラスメント相談窓口(第三者機関)
ES調査(職場の実態の可視化と改善提案)
人材育成プログラム(育成ロードマップ設計)
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■ 法令注記・免責事項

本ページの内容は一般的な実務情報であり、特定の事案に対して適法性・妥当性を断定するものではありません。本ページは特定の考え方や人物を否定する意図は一切なく、組織改善の観点からまとめた情報です。個別事案については顧問弁護士・顧問社労士など労務・法務の専門家へご相談ください。