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【2026年対応版】IPOを見据えた労務管理 実務ガイド|創業期・成長期から整える“労務リスクゼロ化”と信用力のつくり方

2025/11/27

(監修:RESUS社会保険労務士事務所/社会保険労務士 山田雅人)


1.はじめに|IPO準備の労務管理は「直前」では間に合わない

IPO準備の場面で、多くの企業が直面するのが「労務管理・人事制度の未整備」です。
特に創業期〜成長期の企業では次のような声が多くあります。

・人件費の決め方と評価制度が曖昧
・就業規則・給与ルールはあるが運用が統一されていない
・労務は問題ないつもりだが、根拠を示せと言われると弱い
・制度を固めると動きが遅くなるのが不安

そして最も多いのは下記の誤解です。

「IPO直前になったら一気に整えればいいだろう」

実際には、従業員数が増えてからの整備は

・過去との整合性の確保
・既存制度の改修コスト
・従業員との調整コスト

が大きく、後になればなるほど難易度とコストが上がります。

労務管理の最適な整備タイミングは“社員数10〜30名の成長初期の段階”が最も多いというのが実務での共通点です。


2.IPO準備で特に確認されやすい労務領域

IPO審査・DD(デューデリジェンス)や監査法人・証券会社から指摘されやすい領域を整理すると次の通りです。

領域 具体的な確認ポイント例
労働時間管理 労働時間の把握方法、残業の算定根拠、休憩・休日管理、36協定の実効性
賃金制度 評価・昇給・賞与・役職手当の決定基準と説明可能性
就業規則・社内規程 実態と合致しているか、規程改定履歴の整備
社会保険・雇用契約 労働条件通知書・雇用契約の整合性、社会保険加入漏れの有無
ハラスメント・安全衛生 防止措置(指針・相談窓口・研修)の実施履歴
人件費見通し 人件費と採用計画・売上計画の整合性、退職金制度の扱い
解雇・退職トラブル 過去の紛争の有無と対応履歴、ハラスメント・未払残業代の可能性

根拠法令として特に関連性が高いのは以下です(2025年時点)

○労働基準法(労働時間、賃金、休憩・休日 ほか)
○労働契約法(就業規則の合理性、労働条件明示の原則)
○労働施策総合推進法(ハラスメント対策)
○労働安全衛生法(メンタルヘルス、安全衛生管理体制)

※条文単位での適用可否は企業規模・業態・職種により異なります。


3.創業期・成長期だからこそ整えるべき5つの仕組み

従業員数が少ないうちに整備することで、後のリスクを最小化できる領域です。

1)採用・処遇の“根拠”

・求人票、労働条件通知書、給与決定ルールの整合性
・評価制度の導入前でも「ポジション定義と昇給理由」だけ定義しておくと効果的

2)労働時間の把握方法の統一

タイムカード/勤怠システム/PCログ/自己申告 → 1つに統一することが重要

3)就業規則の“運用履歴”

「作ってある」ではなく

・改定履歴
・従業員への周知履歴
・例外運用が発生した場合の記録

→ IPOでは整備状況と『運用の実効性』が確認される

4)ハラスメント・安全衛生の体制

・相談窓口(基本的には外部委託化)
・教育実施(ハラスメント研修の実施履歴)
・労務対応履歴

→「働く環境の透明性」は投資家評価ポイントの1つ

5)人件費と採用計画の整合性

採用数・給与テーブル・教育投資・退職率・評価制度の整合性が取れているか

→ 財務DDでの質問が増加傾向


4.成長ステージ別実行ロードマップ

社員数 狙う状態
0〜5名 基本の労働条件の統一(契約書・給与テーブルの初期設計)
5〜15名 就業規則の整備と運用開始/勤怠管理の統一
15〜30名 評価・役職体系の導入/等級・職務テーブルの明確化
30〜50名 人件費管理、教育体系、ハラスメント対策の高度化
50名以上 内部統制・人材育成ロードマップのPDCA化

5.IPO準備企業が陥りやすい落とし穴

・制度が形骸化し「運用の履歴」が残っていない
・評価制度と給与決定が別物になっている
・ハラスメント相談・未払残業リスクを後回しにしている
・役員や幹部に『だけ』例外運用を認めてしまう

→ これがIPO直前に表面化し、労務が最大の障害となるケースは珍しくありません。最悪の場合、IPO直前に労務分野が問題となり審査に影響することもあります。


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6.FAQ|IPOと労務管理の“よくある疑問”

Q1.IPOの労務管理は法令遵守だけできていれば十分ですか?
A.実務では、法令遵守のほか「説明可能性」と「運用履歴」が重視されます。

Q2.創業期で制度が未整備でもIPOは目指せますか?
A.IPOを目指す多くの企業は創業期の未整備の状態から準備しています。重要なのは“整っていく流れ”の設計です。

Q3.評価制度は初期から作るべきですか?
A.初期フェーズでは大規模制度は不要です。「等級・役割・昇給理由の明確化」だけでも評価は高まります。

Q4.勤怠システムは必須ですか?
A.義務ではありませんが「労働時間の把握方法の明確化」は不可避です。方法の統一が重要です。

Q5.労務の整備費用はIPOにおける費用対効果が高いですか?
A.IPO準備において労務はトラブル発生時のダメージが大きく、初期整備コストに対する回収効果は高いと考えられます。

Q6.IPO間近になってから依頼するのは遅いですか?
A.制度ゼロ状態からの整備は時間が不足しやすく、ケースによっては優先順位の整理が必要です。

Q7.いつ相談するのがベストですか?
A.従業員数10〜30名の成長初期に「勤怠ルール・給与テーブル・就業規則・評価の基準」を整えることが最も効率的です。ただし、IPOが決まってから「現状のリスクチェックのみ」からご相談いただくケースも多数あります。


7.まとめ|“今から整えばいい”ではなく“今なら整えられる”

IPO準備の労務整備は

・社員数が少ないうち
・制度の変更耐性が高いうち
・運用の統一が容易なうち

が最も効率的です。

IPOは「完璧な労務」でないと目指せないのではありません。“整っていく流れ”が設計できているかが問われます。


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