NEWS
【2025年対応版】改正公益通報者保護法の実務ポイント|通報体制の整備と外部窓口の活用
2022/07/04
(最終更新日:2025/08/14)
はじめに
2022年6月の改正公益通報者保護法の施行により、企業の内部通報制度には、形式的な設置ではなく、実効性と従業員からの信頼を兼ね備えた運用体制が強く求められるようになっています。
特に従業員数300人を超える事業者では、内部通報窓口の設置や「従事者」の指定が法的義務となり、対応を怠ると行政指導や罰則の対象となる可能性があります。一方で、300人以下の中小企業にも努力義務が課されており、不備があればSNS投稿やマスコミ報道など、“内部告発の火種”が一気に企業の信用を揺るがすリスクが現実化しています。
ダイハツ・ビッグモーター・レオパレスなど、近年の大手企業による不祥事では、「通報窓口が適切に機能していなかった」点が共通して指摘されており、内部通報制度の整備は企業規模を問わず不可欠な時代となっています。
本記事では、改正法の要点と法的義務、企業に求められる実務対応、外部窓口の導入メリットなどを中小企業・実務担当者向けにわかりやすく解説します。また、コストを抑えつつ制度を強化できる「月額5,500円の外部通報窓口」についてもご紹介しています。
✔この記事はこんな方におすすめ:
-
「社内通報制度が形骸化していないか不安」
-
「300人未満だけど、制度整備しておくべき?」
-
「外部通報窓口の費用・効果を知りたい」
-
「従業員からの通報にどう対応すればいいか困っている」
改正公益通報者保護法について具体的にどのような実務対応が求められているのか、大企業から公共団体まで多くの外部コンプライアンス窓口を務める当社が同制度について簡単にわかりやすく解説します。すでに制度は理解済で通報窓口の外部委託先をご検討の団体様は月額5,500円でご利用いただける当社窓口サービスをこちらのページからご確認ください。
公益通報者保護法とは?
公益通報者保護法は、企業・団体による法令違反行為に対して、労働者や役員、退職者などが内部・外部に通報できる制度を整備し、通報者を保護することで社会の健全性を守る法律です(2006年施行)。
法律で義務付けられた事業者の主な措置(改正法11条ほか)
1. 従事者の指定と守秘義務
-
内部通報を受け、対応業務にあたる者を「従事者」として明確に指定
-
「従事者」には刑事罰付きの守秘義務が課され、違反すれば処罰対象に
(実務上の留意点)
従事者は通報内容の事実確認や是正対応を担い、通報者・被通報者・経営層の間で板挟みとなるなど、心理的負荷が極めて大きくなります。
→ 『外部窓口の活用や、従事者の負担軽減策(研修・独立性確保など)』が重要です。
(改正法11条)事業者は、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関して公益通報対応業務を行う者であり、かつ、当該業務に関して公益通報者を特定させる事項を伝達されるものを、従事者として定めなければならない。
「従事者の負担」について
本改正における「従事者の義務」として、従事者に指定されたものは刑事罰を伴う守秘義務が課されることになり大きなインパクトがありました(改正法12条)。本法では「定めなければならない」とされていますが、実務上は公益通報の受付をする担当者は必然的に従事者となりますし、公益通報を受けうる上司や調査を担当する方々も皆従事者に該当しえます。
従事者は通報者のプライバシーを保護しつつ、通報内容の事実確認のための調査を行い、是正措置の検討やプロセスの実行等、難易度の高い業務を担い、また通報者と被通報者との板挟み、立場によっては経営層から見えないプレッシャーを与えられるなど、極めて大きな心理的負担となることが予想できます。
通報者の通報内容が第三者に漏えいした場合には通報者は「従事者」を真っ先に疑うことが想像できますし、従事者に義務違反があった場合は刑事告訴されたり、また疑わしかった場合でも社内においては懲戒処分を求められることも十分にあり得ます。公益通報対応業務が責任感を持って実効的に行われるため、責任の所在が明確な「従事者」が必要なことは理解できますが、あまりにも負担が重すぎるという意見もあります。公益通報者保護体制を整備する事業者としては「従事者」の範囲をどう限定し、負担をいかに軽減できるかが有効な公益通報体制構築の大きなテーマのひとつと言えます。
従事者の負担軽減のためには、担当者への研修やトレーニングの実施、経営陣から影響を受けない権限の付与、監査部門のような部門としての独立性を担保するなどが考えられますが、社内に十分な人的リソースが無い場合は一次通報窓口を外部委託するなども検討するべきと言えます。
2. 内部通報体制の整備義務
-
通報窓口の設置、調査フロー・是正措置の明文化
-
窓口の独立性・中立性の確保(利益相反の排除)
-
通報内容に関する情報の記録・保管・評価体制の構築
3. 通報者への不利益取り扱いの防止
-
通報を理由とした解雇・降格・減給などの報復行為を禁止
-
加害者への懲戒処分など、通報者保護の体制強化が必要
4. 教育・周知・継続的な改善
-
社内研修・社内規程の整備と定期的な点検
-
通報者への対応内容の通知義務
-
評価・改善を繰り返すPDCA体制の構築
5. 行政・報道機関への通報も保護対象に(改正法3条)
企業が通報者に対し、行政機関やマスコミへの通報を理由に報復することは禁止されています。行政機関や報道機関等へ通報したことを理由として企業が行う不利益な扱い(解雇、降格、減給、退職金不支給等)は無効となります。
(ただし注意点あり)
適切な社内窓口を設けているにもかかわらず、手順を無視した通報(いわゆる“飛び越し通報”)は法的保護の対象外となる可能性があります。
✔ポイント
重要なポイントとなりますが、社内の不正が社内を飛ばして行政機関やマスコミに渡った場合、社内としてはいきなり大火事の状態から火消しに追われることになります。通報窓口の敷居が高かったり、通報に対するフローが不明であったり、信頼性が低かったりする場合には通報者は不正の是正の手段として「内部告発」を選ぶ可能性があります。内部告発を避け組織内でのソフトな解決糸口を探るためには、内部公益通報によって法令違反行為が是正される期待感を高めることは当然として、社内通報窓口の敷居を低く、公正で、透明性の高い部門であると従業員たちに十分な信頼いただくような利用しやすい環境の整備が不可欠です。もちろん、社内体制が不十分な場合はSNSへの投稿も当然考えられるわけで、小規模の商店や中小企業も例外ではなく、社内の不正や労務トラブルをSNSで公開されてしまうと企業ブランドは一生消えない烙印をおされ、商品やサービスの売り上げだけでなく、採用にも当然大きな悪影響を引きずる『負債』を抱えることとなります。
たとえば、匿名の通報を受け付ける。特定できないメールアドレスの利用を推奨する。経営陣と独立している理由を説明する。刑事罰付きの守秘義務を負う従事者が対応することをイントラ等で開示する。複数の窓口を用意して通報先の選択肢を増やす。外部窓口を経由してプライバシーを保護するなどがあります。いきなり社外に通報されると困るので、なんとか社内窓口で早期にキャッチしたいのが事業者の本音ですが、もちろん、敷居を下げるほど通報内容も疑わしいものが増え、私怨による虚偽通報もあり得るため、通報や相談内容の調査は「ありき」ではなく、客観性が必要です。
☑保護される通報者の範囲(改正法2条)
改正前は退職者、役員は保護される通報者の範囲に含まれていませんでしたが、改正後は退職後1年以内の者に限り、退職者(派遣社員含む)と役員が保護される通報者に含まれることになりました。併せて、同法7条によって損害賠償責任の免除が追加され、公益通報によって受けた損害を公益通報者に対して賠償請求することができないことが定められました。
☑保護される通報の範囲
改正前は刑事罰の対象となる犯罪行為が保護される通報の範囲とされていましたが、改正後は食品衛生法、金融商品取引法、JAS法ほか、公益通報者保護法で定める約500本の法律に対象を広げ、犯罪行為に加えて過料の対象となる行為(行政罰)が追加されました。
◎指針において推奨される考え方
- いわゆる顧問弁護士を内部公益通報窓口とする場合には通報を躊躇し、早期把握を妨げるおそれがあることに留意を促しています。そして、外部委託する場合には、中立性・公正性に疑義のある(つまり、利益相反)法律事務所や専門会社の起用は避けるのが適当とされています。
- 外部窓口を設ける場合には公益通報者を特定した上でなければ必要性の高い調査が実施できないなどやむを得ない場合を除き、公益通報者の明示的な同意がない限りは事業者に対しても開示してはならないこととしたり、固有名詞を仮称にすることを講ずることも考えられる。
- 公益通報者を特定させる事項を伝達する相手にはあらかじめ秘密保持を誓約させたり、情報の漏えいは懲戒処分等の対象となる旨の注意喚起を行う。
- ハラスメント事案等の被害者と公益通報者が同一の事案においては公益通報者を特定させる事項の共有には心情にも配慮しつつ、書面によって同意をえることが望ましい。
通報窓口が機能しないと何が起きるのか?
近年、企業の不祥事が発覚した際には、以下のような背景が共通して見られます。
-
✅ 通報者が「社内で解決されない」と判断
-
✅ 匿名性が確保されていない
-
✅ 上司・経営層に握り潰される恐れがある
-
✅ SNS・マスコミに“直接通報”される事態に
このような状態になると、企業は炎上・信用失墜・採用難・営業機会の喪失といった長期的なダメージを受けます。
通報制度を信頼されるための具体策
-
☑ 匿名通報の受付(メール・フォームなど)
-
☑ 通報者のプライバシーを守る外部窓口の設置
-
☑ 経営層から独立した体制の明示
-
☑ 通報ルートを複数設け、選択肢を提示
-
☑ 通報への対応状況のフィードバック制度
(ハラスメント窓口担当者は「従事者」となるか)
公益通報受付窓口が先に法定されているハラスメント相談窓口を兼務するケースも想定されます。さて、ハラスメント相談窓口担当者が公益通報者保護法にける公益通報対応業務を行う者として定められる「従事者」に該当するのかについては、ハラスメント行為は強制わいせつ罪(刑法176条)、暴行罪(刑法208条)、のほか、時間外労働の強要など割増賃金の未払い(労働基準法119条)などが含まれている可能性があることから「公益通報」に該当するため、ハラスメント相談窓口の担当者が公益通報窓口を兼務する場合には「従事者」に指定することが必要と考えられます。
中小企業でも必要?通報体制の整備理由
努力義務とはいえ、中小企業でも以下の理由から内部通報体制の整備が強く推奨されます。
-
不正やハラスメントがSNSに拡散するリスク
-
小規模でもブランド毀損・業務停止リスクあり
-
従業員からの信頼と採用力の強化に寄与
-
取引先(大手企業・自治体)からの信頼にも直結
外部通報窓口の導入メリット
-
✅ 守秘義務付きの専門家が対応(刑事罰あり)
-
✅ 通報者が安心できる「中立性・匿名性」の確保
-
✅ 社内のリソースが少なくても法対応可能
-
✅ 第三者の目線で、通報内容の調査・整理も可
弊所では、月額5,500円(税込)で外部通報窓口を提供しています。詳しくは下記リンクよりお問い合わせください。
よくある質問(Q&A)
Q1. 300人未満の中小企業も窓口設置が必要?
→ 努力義務ですが、SNS・告発リスク対策として事実上必要です。
Q2. 顧問弁護士を窓口にしてもいい?
→ 指針上は「抑止効果を弱める恐れがある」として、中立性に疑義のある窓口は非推奨です。
Q3. ハラスメント相談窓口担当者も「従事者」に該当しますか?
→ 可能ですが、対象行為が法令違反に該当する場合、ハラスメント窓口担当者も「従事者」に該当します。
まとめ|「形だけ」から「機能する体制」へ
内部通報制度は企業のガバナンスを強化するだけでなく、従業員が安心して働ける職場づくりに直結します。
制度の整備は「義務だからやる」ではなく、企業価値を高める投資です。
外部相談窓口費用が月額5,500円《パワハラ・内部通報・EAP対策》
今すぐお問い合わせする(☎:06-6306-4864)
公益通報対応体制の構築、外部相談窓口に関するお見積りなどご相談は下記フォームへ内容をご記入のうえ送信してください(初回相談料無料)。
《関連記事》
職場の外部相談窓口費用が月額5,500円《パワハラ相談・コンプラ通報》
ハラスメント相談窓口は社内?社外?外部委託する会社はどんな理由?
中小企業もハラスメント防止研修を実施した方がいい?訴訟リスク対策です!