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補助金が不採択となる10の理由【ものづくり補助金・再構築補助金・持続化補助金】
2021/07/07
令和3年6月18日に今年最大の補助金と言われた「事業再構築補助金(第一回公募)」の採択結果が発表(全体の採択率36%[申請22,231件のうち採択8,016件])されたほか、ポストコロナを踏まえた新たなビジネスやサービス等を補助する新たな枠組みとして「ものづくり補助金〈低感染リスクビジネス枠〉」や「小規模事業者持続化補助金〈低感染リスクビジネス枠〉」など、補助率・補助額が拡充された注目度の高い補助金の初回採択結果が続々と公表されました。
採択後も手続きは続きますが、まずは採択された事業者から歓喜の声と、不採択だった事業者からは落胆や怒り、無気力、無反応と、受験さながらのリアクションです。
長引く新型コロナウイルス感染症拡大のなか、影響を受けた多くの事業者は数少ない手段として補助金にチャレンジするわけですが、全ての事業者が採択されるわけではありません。県(府)や市など地方自治体が実施する補助金はともかく、国が実施する補助金にはどれも共通した考え方があり、最近は特に、会計検査院による補助金の効果検証が厳しく実施されており、ひと昔のように「簡単にお金がもらえる」ものはほとんどありません。
当社にも不採択となった事業者から相談が多く寄せられておりますが、「不採択だった理由」を学び、初めて申請される方や再度申請をチャレンジしようと準備している方の参考にしていただければと思います。もちろん、当社も補助金を扱う中で数多の不採択に幾度も涙を飲んできましたので、一度や二度の不採択で失敗と諦めず、何度でも立ちあがる経営スピリットをもって再チャレンジしていただきたいと切に願います。いずれも重要な要点ばかりですので、採択された方以外は最後までお読みください。
1.要項を理解できていない
各々の補助金には決められた「公募要領」があり、その時々の政策や社会情勢による目的をもって実施されています。まずはこの公募要領を熟読してから計画を練る必要があります。但し、30~50ページ、文字数にすると少なくとも3万文字以上のボリュームがありますし、また最近は読みやすくなりましたがお役所仕事の文体で理解しにくいので、字を読むことに慣れている方でも大変です。それでも、補助金の情報の全てがこの要領に詰まっていますので、「しっかり理解できていない」状態では採択されません。コンサル会社にお任せすれば大丈夫と思っている方もいますが、後述しますが他人任せの事業計画書は採択率が低く、またもしも採択されてもトラブルになる可能性が高いです。まずは、公募要領を熟読することが必要です。
1.具体性が不足している
社会人になると口癖のように「具体的に言え」と言われますが、具体性ってなんやねんと思っていませんか?補助金の事業計画書における具体性とは、「数値」や「固有名詞」、「データ」、「理由」によって計画の信用度を高めることを言います。多い少ないではなく、数値や比率で。他社や大手企業ではなく、社名で。美味しい不味いではなく、データで。人気や不人気ではなく、その理由を。量的に表現できるものは数値やデータを。質的なものはその理由をしっかり記載できれば具体的と言えます。これは補助金だけでなく金融機関やステークホルダーに対するプレゼンとも共通しますね。
脱線しますが、「当社独自技術なので競合他社は存在しない」と記載している計画を見かけますが、未来永劫競合他社の存在しない事業は存在しませんので、将来競合他社となりそうな業者を探してくださいね。
1.投資が過大である
補助金には補助上限がありますが、中小企業でも十分狙える現実レベルの補助金でも50~1,000万円(再構築補助金は6,000万円!!)が定められています。心理的には「補助金をもらえるならマックスもらいたい」のは当然ですが、それぞれ企業規模で適切な投資範囲があり、過大な投資と判定された場合にはどんな立派な計画でも不採択となります。例えば、年間1,000万円しか売上が無い事業者が追加の設備投資に1,000万使うなど金融機関も許さないような投資は通常は考えられません。補助金ありきで投資額を上乗せしているようなケースや、事業規模に見合わない設備投資であるかどうかはなかなか自分ではわかりませんので、補助金を活用した設備投資が過大でないかどうか、一度客観視してもらいたいところです。
1.回収の見込みが明確でない
補助金はバラマキではなく、そのお金を使って事業者が儲かり、雇用を創出し、社会経済の発展を支える意図があります。お金を使うからにはしっかりと回収の見込みがあるかどうか、もしも回収できなかったとしても、国の審査が不適切であったなどと指摘されるような先は採択されません。つまり、細部にまで計画に不備が無いか審査されます。お金が無いので補助金が欲しいアピールだけでは採択されません。
「適当な計画にお金を投資してしまい、騙され(失敗し)た」では国でも企業でも個人でも許されませんので、経験が必要になりますが出資者になって考える必要があります。直近が赤字決算で申請する場合には、具体的な金融機関名を挙げて融資の見込みがついていることや一時的な赤字である補足も忘れてはいけません。
なお、事業者のほとんどが「自分は違う」と思っていますが、不採択者は回収の見込みがない「補助金が欲しいだけ」の計画書になっています。ご注意ください。
1.積算に誤りがある
積算というと、「将来のお金の計画」であり、事業活動によって行う投資によって得られるリターンや付随する人件費など、コストを試算したうえで行う計画のことですが、税理士さんに積算関係を作成してもらったので完璧と思っている場合はかなり誤りが多いです。税理士さんは税金のスペシャリストであり、補助金申請や金融機関で提出する事業計画書は目的が異なることを理解せず丸投げしているからです。例えば、個人事業主の場合は申告時に「補助金」を売上(収入)として計上することがありますが、補助金の申請における積算時は「事業にかかる収益」を補助金などその他の雑収入と分離して計画しなければ、計画としておかしなものになります。また、「人件費はとにかく抑える」のも経営的には間違いではありませんが、国のお金をもらう場合は儲けた金はどんどん人件費に投入していく計画性が求められます。
1.ひとりよがりの計画書
不採択だった事業者全般に言えることですが、事業計画書は相手の立場になって作成する必要があります。多いのが、有名大学出身で外資系企業の責任者を務め新規事業に携わっただの、不採算事業の立て直しに成功しただのと職務経歴書ピカピカエリート社長の場合は、「自分はこんなにも優れている」ことを熱弁する(ページ数を割く)主観的な計画になりがちですが、補助事業計画は「新たに取り組む事業」を競うコンペであり、自分が優れていることを熱弁しても採択されません。自社が優れているかどうかは決算書を見ればすぐわかります。社長や自社のことはさりげなく書く程度にしておき、新たに取り組む事業に重点を置き、「読む相手方」の立場に立った客観性が必要です。これが一番難しいと皆さん言います。弁護士や医者でも自社の事業計画は客観視できないという人が多いので仕方ないかもしれませんが、補助金の審査員は皆さんのような「経営者」ではなく、大学教授や中小企業診断士など、「経営に関する学問の専門家」ですので、フレームワークやSWOT分析など好物となりそうな項目をしっかり盛り込みたいですね。
1.他人任せ(丸投げバレバレ)
京セラの稲森会長は上場企業の膨大な決算書であっても、見た瞬間に問題点が光って見えるというのは有名な話ですが、その能力は特別なものではなく、ベテランの経営コンサルタントなどは近い能力を持っている人が多く、それは経験だといいます。事業計画書も同じように、審査員は何百の計画書を見て審査していることは容易に想像できますので、他社に丸投げして作成した計画書は一瞬でバレます。当社レベルでも丸投げはすぐにわかりますので、審査員の目を欺くことはできないでしょう。コンサルを利用する場合であっても、補助金の事業計画は自社で作成し、添削してもらうつもりで依頼するのがトラブル防止の秘訣だと最近は特に感じます。最悪なのは、高い着手金だけ取られて丸投げで不採択だったケースでいわゆる「着手金詐欺」と本人たちが主張するケースです。かわいそうだと思いますが訴えるのは無理ですねぇ。ちなみに、採択後の実績報告を一切考慮せず採択を取るだけなら簡単です。丸投げしたのは、あなたです。。。コンサル選びは、慎重に。。。
1.図や画像の工夫が無い
事業計画書は相手を理解させるための書類であり、補助金の計画書には図や画像を挿入しても良いことになっています。審査員はAIではなく生身の人間であり、審査する側に立ってみれば、文字ばかりの計画書が並び疲労でげんなりしているなか、カラーの図表や商品の参考画像が挿入された「見やすい計画書」があった場合、少しは読む気になると思いませんか? 誤字脱字や書類不備は問題外ですが、様式美にもこだわり、改行や図表の挿入位置、文字の太字やアンダーラインなど、読みやすい工夫をするのとしないのでは採択率に大きな差がある気がします。Wordで作図が難しいなら、パワポで作成したものをWordに挿入する方法もあります。
1.既存事業とかけ離れすぎている(再構築補助金のみ)
ものづくり補助金や再構築補助金は不採択となった理由を事務局に問合せすれば、「審査員の所見」を教えてくれますが、いまいち理由にピンと来ていない人が多いようです。
再構築補助金はコロナ禍で大きな影響を受けた事業者が、思い切った業種・業態転換を行う場合にその経費を広く補助するものですが、全く違う業界へ参入するのとは意味が違います。高級料亭が宅配弁当事業に参入する場合や、旅館がスポーツ施設に転向することもアリだと思いますが、「既存スタッフ」をクビにせず活用が見込める計画や新業種の展開に必要な「ノウハウ」について、記載が不十分なケースがあります。新たな補助金につき、採択される審査のツボ(観点)は想像するしかありませんが、再構築補助金であっても基本的にリソースの活用やノウハウ、人員計画は必須です。かけ離れすぎていると判定されないように、既存事業があったからこそ新規事業に取り組むことができる理由を事業計画にしっかり盛り込む必要があります。
1.ニーズが不明確
事業の責任は事業主自身が取ればよいだけで、言い訳する必要が無いためか、中小企業は市場調査の分析が苦手です。大企業の企画系社員ならダメだった理由がマーケティング不足では降格間違い無しでしょうから、失敗したときの言い訳のため常に外部市場を調査する習慣がついています(偏見です)。さて、審査員の所見で「ニーズが明確ではない」とコメントされた事業は非常に多いようですので重要なポイントと理解が必要ですが、ニーズがあるから事業が生まれる事業創出のプロセスはしっかりと押さえなければなりません。例えば取引先から求められている要望や、顧客アンケートで多かった意見を商品化することが必要であり、実際のところは事業が先行する(ニーズは後付け)のが中小企業経営ですが、補助金採択のためにはマクロ視点からミクロ視点までの市場動向から新規事業に至った理由付け(こじつけ)が重要です。「こだわりすぎて客の来ない高級料理店」でも経営的には面白いと思いますが、ニーズを無視した事業では他人からの支援は期待できません。
1.デジタル技術の未活用
IT導入補助金だけでなくすべての補助金に言えることですが、デジタル技術の活用は生産性向上に今や欠かせません。単なる機械設備もデジタル技術とつながればそれは「革新的」になります。アナログでひたすら技術を追求する職人集団でも結構ですし、誰でも同じ結果になる作業まで全てを職人が行うことは悪いことではありませんが補助金の活用を検討するときは、デジタル技術を活用する余地が無いかどうか、しっかり検討する必要があります。デジタル技術一切無しのアナログ機器で補助金申請は、ちょっと厳しいです。
1.加点項目の未取得
補助金にはそれぞれ加点項目が設けられていることがほとんどです。従業員数や資本金のような企業規模による加点が儲けられている場合はやむを得ませんが、賃金の引上げ(賃上げ加点)のほか、経営力向上計画や経営革新計画、事業継続力強化計画など国の認定を取得すれば加点すると要領に記載されているのに取得していないケースがあります。不採択でも落ち込まないようなダメ元申請なら結構ですが、それなりに真剣に立てた事業計画ならば加点項目は全て押さえるのが 常識です。認定関係は面倒ですが、わずかな差を争うコンペであることを忘れてはいけません。
1.人員(計画)不足
立派な事業計画も人員がいなければ成り立ちません。個人事業主も補助金は申請することができますが、補助事業構築のための担当要員は十分か、事業実施後も人員不足で頓挫することが無いかどうか、あくまで計画であっても人的リソースは十分であり、今後増やす予定であることを記載することが必要です。個人的には人員計画は大きく項を割く必要はないと思いますが、生産性が向上した結果スタッフを減らしていくような計画は絶対NGです。社長一人の事業者でも、将来はスタッフを雇い入れる予定である計画にしましょう。
1.費目が細かすぎる(おまけ)
採択(交付)決定後は基本的に、経費明細表に記載した設備の変更はできません。メーカーやグレードの変更もできません。使用する経費は詳細を求められていますし、経費の細目までしっかり記載していると事業計画書は具体性が高まりますが、あまりにも細かく記載しすぎると採択後に融通が利かず、またそれらすべての経費個別に報告書を作成しなければならず事務作業が膨大になります。
計画の途中で多少の仕様変更があった場合や完了報告時の作業を考えながら、たとえば具体的な設備は計画書に「例」として記載したうえで、経費明細表には「一式」とするなど、採択された後のことも考えて計画書を作成するのがおススメです(自己責任でお願いします)。
大型のものづくり補助金や再構築補助金で不採択だった事業計画はしっかり不採択の理由がありますが、少額(?)の持続化補助金などはなぜ不採択だったのかわからないものや逆に、こんな計画でよく採択されたなぁと思う計画書も多数見ましたので、どちらかといえばうまくいかないことが多い経営の不条理だと思って、計画が不採択になった場合でもあまり落ち込み過ぎず、再チャレンジに向けて前向きに検討するのが精神的に良いと思います。当社も数年前に6連続不採択を食らったときは補助金サポート業務を本気でやめようと思いましたから。(おわり)
当事務所の補助金申請サポート(計画書作成代行業務)の報酬目安【全国対応可】
小規模事業者持続化補助金 | ものづくり補助金 | 事業再構築補助金 | |
顧問契約 | 不要 | 不要 | 不要 |
着手金 | 無し | 100,000円 | 150,000円 |
成功報酬 | 交付決定額の20%または10万円のいずれか高い額 | 交付決定額の10%または50万円のいずれか高い額 | 交付決定額の10%または75万円のいずれか高い額 |
計画書の添削のみ
(アドバイス) |
1回2万円 | 1回5万円
無制限10万円 |
1回5万円
無制限15万円 |
※各補助金の加点要件(経営向上計画・経営革新計画・事業継続力強化計画)の取得は別途
※採択後の完了報告、実績報告等(年次報告)は別途有償でのご契約となります。
※事業計画書のテンプレート(ひな型)ご希望の方はこちらからご依頼ください。
※成功報酬のため、採択可能性が低い事業計画と当社で判断した場合には受託をお断りさせていただくことがあります。
お問い合わせ
補助金申請サポートは全国対応可(初回相談料無料)とさせていただいております。下記お問い合わせフォームにご用件をご記入のうえ、『送信』ボタンを押して完了してください(送信確認メールは配信されません)。
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