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ハラスメント相談窓口は社内?社外?外部委託する会社はどんな理由?

2022/06/22

(最終更新日:2024/09/10)

2022年4月から中小企業含めた全ての事業主に全面施行された「改正労働施策総合推進法(通称、パワハラ防止法)」もすでに数年を経過し認知度も高まってきたことに伴い、法律上の解釈や設置窓口の運営に関する実務的な相談が増えてきました。なかでも義務の一つであるハラスメントの相談窓口をどこに設置するかについては、当分は社内とし、問題があるようであれば、費用を払って外部に委託する方針である会社が多いように思います。

同じく2022年6月の公益通報者保護法の改正もあり、相談・通報窓口を外部委託する企業は増加していくと予想しておりますが、委託のきっかけや理由は企業によって様々です。当方で受託している企業はおおよそ10~1000名程度の従業員数の中小・中堅会社のため、このサイトをご覧いただいている企業の皆様も当てはまることが多く、いずれ外部委託を検討するタイミングが来るかもしれません。他社が外部委託した「きっかけ」についてご質問いただく機会も多いため、当社の主観となりますが実際の相談事例を踏まえながら参考にお役立てください。

 

理由その1.法改正に対する適合

毎日のようにどこかのパワハラ事件がメディアで取り上げられ社会問題化していますが、大企業は令和2年6月1日から、中小企業も令和4年4月1日から完全義務化され、職場のパワハラ、セクハラ、マタハラは法律の強制力を持って全企業が社内で防止措置を講じ、行ってはならないこととなりました。法改正による雇用管理上講ずべき措置とした指針で、「相談窓口をあらかじめ設置し、相談窓口が適切に対応できるようにし、できない場合には外部委託等を活用すること」と示されたことをきっかけに外部委託する会社も多くあったようですが、それは万が一にもハラスメントが事件化(炎上)し、企業価値を毀損した際の損害が大きくなるような個人消費者向け商品を展開するような大企業が多く、守るべき企業ブランドが無いと思い込んでいる中小企業は法改正をきっかけに外部委託を検討するような関心は低かったように思います。実際に、法改正に併せて外部委託に踏み切ったのは大企業が多く、中小企業では直前であったり、別の理由がありやむなく外部委託するに至ったような腰の重い企業が多かったようです。

 

理由その2.ハラスメント事件が起きた

組織では様々な考え方を持った従業員たちが集まって仕事をしています。当然、職場は日常的なコミュニケーションを必要とすることがほとんどのため、不十分な伝達、仕事以外の日常会話、時には漏れた愚痴や不満が相手に伝わり人間関係の軋轢が生じます。翌日には忘れているような簡単なものであれば問題ないかもしれませんが、異なる立場で意見が違ったり、信頼関係が低かったり、あまりにも度を越える発言があった場合には日が経ってもずっと心に残ることがあります。そういった人間関係の問題が、大小のハラスメント事件として顕在化します。そして例えば、仕事ができる上司が実は部下にパワハラまがいの言動を行っていた時、会社としては解決に様々な心理が働き、躊躇し、悪化させてしまうことがあります。当社では弁護士事務所・司法書士事務所など法律事務所の外部相談窓口としても業務を受託していますが、「法律家であっても自分のことは解決が難しい」と代表者は話されます。代表者が窓口をしている場合などはいきなり火が付いた「どっちを取るか二者択一」状態から解決を迫られることもあり、そんなことはできないためほとんどの問題は大きくなります。社内の担当部門に申告するということは、熟慮し相当な覚悟を持った「最終状態」であることは予想できますので当然と言えます。いきなり言われても困るというのは事業者側の都合であり、それなら事前にしっかりと対策を講じておいて欲しいという従業員側の想いに気づくかどうかで結果は大きく変わります。

初期段階のハラスメント問題が外部相談窓口を経由して社内に通知されたのなら、ソフトな解決方法もあったかもしれないと気付き、外部委託するケースがあります。

 

理由その3.担当部門の人手不足

ハラスメント窓口担当を命じられて困っているという相談も多く寄せられています。立場や複雑な人間関係がある社内でもしもハラスメントの相談を受けた時、担当者は中立健全に対応できるものでしょうか。相談窓口を任命された担当者は他の日常業務をこなしながら、突発的(もちろん、被害者本人は長く悩んだ末に相談することもあります)にハラスメント相談を持ち掛けられた際に、優先して対応することが難しいこともあります。また、人事問題を率先してやりたいという方は稀で、大半はややこしい人間関係に首を突っ込みたくないのが本音です。人手が潤沢な規模の企業なら多少の負担は分散されますが、100名以下の小規模事業者で社内相談窓口を優先して担当させる余力はありません。窓口を強制されたことを不満に担当者が離職したり、ハラスメント担当者の対応がハラスメントと扱われるなど不幸なケースも実際にあります。あわせて新入社員の採用や定例のパワハラ研修を同時に担当するケースも多いため、ハラスメント対策業務だけでも激務になりそうです。実際の現場では相談窓口担当者や調査担当者が多忙で事実確認を怠ったため被害が悪化したとされ、担当部門が懲戒処分された例もあります。これはたまりません。

本来は自社の問題は自社内で解決すべきというのは正論ですが、人手不足ならばプロにアウトソーシングするのが最適な方法とも言えます。

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理由その4.業務効率化(コスト削減)

ハラスメント事件が発生したとき、会社は解決に向けてすみやかに取り組まなければなりません。関係者の聞き取り、上司(コンプラ部門)への報告、諮問委員会の開催、処分妥当性の検討、第三者意見の聴取、懲戒処分の実行、被害者ケア、再発防止策の検討・周知啓発など、事前の対策マニュアル作成はもちろん、一本の通報で膨大な作業が発生します。もちろん、面倒な作業を嫌がってもみ消しととられるような不適切な対応を行ったり、対応手順を誤ったり、大したことないと放置したりすれば、本人の離職だけでなく、安全配慮義務違反を問われて訴訟されたり、監督署からの社名公表などもあり得ます。また、ハラスメント問題は個人だけでなく、他の従業員のモチベーションを低下させることが一般的ですので、「大量離職」などとなれば業務が回らず大変なことになります。事業主であってもパワハラを軽く考えている方が多いのは事実ですが、マニュアルの作成や事後対応、円滑な解決プロセスで早期の問題解決を図ることは業務効率化であり、現場をよくわかっている方からすれば、外部専門家の力を借りるほうが安くつくと考えるのもごく自然です。事故が起きてからでは遅いかもしれませんが、事故が起きたことをきっかけに社員研修や相談窓口を外部委託する会社も結構あります。

 

理由その5.離職率が改善しない

優しい社長なのに、なぜか離職率が高い。思い当たった方は多いと思います。病院やクリニックに多い印象がありますが、代表者が優しすぎるのもハラスメント対策には問題があります。「社長が優しいので言いづらい。」そんな従業員も多く、また「社長が優しすぎるから自分がしっかりしなくては」と考えて部下や新入社員に厳しくあたる管理職者もあろうかと思います。代表が優しい職場ではハラスメントは表面化せず、我慢して黙って辞める従業員が多くなります。面接で優しそうな社長だったから入社を決めた方も多いでしょうから、そんな優しい社長を慕う方は優しい従業員であり、まさか職場のハラスメントを訴えて辞めることなどできるはずもありません。代表者自身では優しくしているつもりなのに、なぜか離職率が高い職場は要注意です。良い会社でも2年くらいであれば離職率が高いのも普通ですが、3年を超えて「パワハラは無いはずなのに、なぜか離職率が高い」場合は人間関係に問題がある可能性が高いです。退職者は本当の退職理由は話しませんので、本当はパワハラなど人間関係が離職の原因かもしれません。理由はわからないけれど離職率が高い場合は、とりあえず相談窓口を外部に設置してみることをおすすめします。

 

理由その6.転職口コミサイトの評価が低い

最近は零細企業でも転職口コミサイトで評価されていることがあります。事実はどうあれ、転職口コミサイトの評価が低いと、求人募集時にはマイナス要因となり、応募が減るばかりか従業員のモチベーションも左右されかねません。

しかし、過去にブラック企業のイメージが定着してしまった企業であっても、事実を認め、改善に取り組んでいることをアピールできれば、応募者は戻ってきます。もちろん偽りは逆効果ですが、「ハラスメント撲滅に向けた取り組みの一環として、利害関係の無い中立的な外部に相談窓口を委託している」ことを公表すれば、わかっている求職者はプラス要因として受け取ってくれます。

どの業種も採用難、人手不足であることを考えれば、採用市場での優位性向上のために「外部窓口を利用する」戦略も賢い選択と言えます。

 

おわりに

ハラスメント問題だけでなく、人間関係は立場や考え方によってさまざまな繋がりがあり、組織の人事計画は資金繰り、事業展開に並び、経営上の終わりなき難題の一つです。また、「モノ」や「カネ」と違って、「ヒト」はいくらでも替えがきくものではなく、手間と時間をかけて育てていくことで価値が発揮されます。優秀な人材を外から採用すればよいという特効薬的な甘い考えは幻想であり、コストの無駄、人的問題の悪化を招くことはよくわかっているはずです。

職場の従業員がいきいきと、持てる能力を発揮し、最大の成果を期待するのは経営者として当然のことですが、どんなプロ経営者や人格者でも簡単に実現できることではありません。今後も人件費は高騰し、人手不足がどんどん進むことによって、ますますアウトソーシングの需要は高まっていきます。今は大丈夫と考えず、事業を続ける限り必ず必要となる相談窓口の外部委託について、今から取り組みを検討することが有用です。

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