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歯周病検診で助成金!?【人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)】
2021/09/30
助成金は年々受給要件が厳しくなっており、また不正受給の取り締まりも強化されていることから、近年は「オイシイ助成金なんてない」というのが社労士業界でも一般的な考え方となりました。
確かに、最も利用者が多い『キャリアアップ助成金』でも賃金アップの要件が厳しくなっていますし、ごく最近では一部のマニア筋で注目されていた、定年の改善で最大160万円がもらえる『65歳超雇用推進助成金』が申請多数を理由として募集後6か月を待たずに受付終了(R3.9.24)されました。しかしいうまでも無く雇用関係の助成金は中小企業の強い味方で、職場環境のルール整備が不十分であったり、今後予定されている法改正に対応するためのコスト負担軽減に役立てている会社も多くあります。
コロナによる雇い止めや解雇によって仕事を求める失業者が多くいるという報道もありますが、実際は雇用調整助成金をはじめとする政府の手厚い施策によって国内の失業者は低く抑えられており、多くの中小企業ではあいかわらず人手不足が深刻化しており、国内の人材は完全な売り手市場となっています。
新しい人材を確保することも必要ですが、「底が抜けたバケツ」状態とならないよう、今いる従業員の定着性を高めることが最善の取り組みと言えます。
今回は、「手続きは多くなく、時間はかかるもののもらいやすい」助成金の一つとして、研修制度や法定外検診など雇用管理制度を整備・実施し離職率が低下した会社に支給される〈職場定着助成金〉のなかでも特に使いやすい、【雇用管理制度助成コース】をご案内します。
‼助成金は予告なく終了することがあるため、申請を検討する場合は厚生労働省サイトで直近の情報をご確認ください。
助成額
目標達成助成:離職率低下で57万円(生産性要件を満たした場合は72万円)
助成金申請を行う直近の会計年度における生産性が3年度前に比べて6%以上伸びていること等を満たした場合に助成金が加算されて支給されます。
生産性=(営業利益+人件費+減価償却費+賃借料+租税公課)÷雇用保険被保険者数
※制度導入だけでは助成金はもらえません。
※人件費に役員報酬は含めません。
対象となる事業主の要件(一部)
☑労働関連法律の違反が無いこと(保険料未納、賃金未払い、帳簿未整備等)
☑直近6か月以内に事業主都合で解雇していないこと
☑正社員を1名以上雇用していること
☑法令で定められた定期健康診断を実施していること
☑制度を確認できる就業規則等を整備していること
対象となる事業主が次の(1)から(3)を実施した場合に助成されます。
(1)雇用管理制度整備計画の認定
次の〔1〕~〔5〕の雇用管理制度の導入を内容とする雇用管理制度整備計画を作成し、管轄労働局の認定を受けること。
〔1〕諸手当等制度
〔2〕研修制度
〔3〕健康づくり制度☜おススメ★★★
通常の法定検診に加えて、次のいずれか1つ以上の検診を、対象者(正社員)全員に、事業主が半額以上を負担し、就業規則等に明示すること。
○胃がん検診 ○子宮がん検診 ○肺がん検診 ○乳がん検診 ○大腸がん検診 ○歯周疾患検診 ○骨粗鬆症検診 ○腰痛健康診断
〔4〕メンター制度
〔5〕短時間正社員制度(保育事業主のみ)
歯周疾患検診であれば一人5,000円程度と費用も安くすべての従業員が受診しやすい(拒否する人が少ない)と考えられますのでおススメです。当社で取り扱いさせていただいた事業主の9割が歯科検診を選択されています。なお、通常は歯周疾患検診は健康保険の適用外となりますが、歯科医師の判断で歯石除去などを実施し保険適用となった場合でも自己負担部分を会社負担すれば問題なく、また、本人が窓口で費用負担し領収書も本人宛の場合には、本人から会社へ受領書(領収書)を発行する方法で差し支えないとのことです(管轄労働局へお問い合わせください)。
(2)雇用管理制度の導入・実施
(1)の雇用管理制度整備計画に基づき、当該雇用管理制度整備計画の実施期間内に、雇用管理制度を導入・実施すること。
具体的には、就業規則類の変更手続きと、計画した制度を実施し、費用を支払う必要があります。
(就業規則記載例)
第○条(健康づくり制度)
会社は、健康増進および就労意欲の向上のため、定期健康診断の対象となる従業員に対して毎年一回、歯周疾患検診を行う。 2.歯周疾患検診にかかる費用は会社が負担するものとし、検診予定日の少なくとも3週間前までに、書面等の方法をもって対象者へ通知する。 3.会社は、診断の結果、人事管理上必要と認めるときは、配置転換等必要な措置をとることがある。 (施行日) 令和3年●月●日 |
計画申請時にも就業規則等の変更案を提出するよう求められますので、別紙で変更案として届出すれば受理されます(各労働局にご確認ください)。なお、法定の健康診断は計画期間内でなくても通常通り1年に一回実施していれば問題ありません。
(3)離職率の低下目標の達成
(1)、(2)の実施の結果、雇用管理制度整備計画期間の終了から1年経過するまでの期間の離職率を、雇用管理制度整備計画を提出する前1年間の離職率よりも、下表に掲げる目標値(※)以上に低下させること。
※低下させる離職率の目標値は対象事業所における雇用保険一般被保険者数に応じて変わります。
雇用保険一般被保険者の人数 | 1~9人 | 10~29人 | 30~99人 | 100~299人 | 300人以上 |
低下させる離職率(目標値) | 15% | 10% | 7% | 5% | 3% |
雇用保険一般被保険者とは、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者、日雇い労働被保険者以外の被保険者です。
(所定の期間の比較方法)
評価時離職率・・・計画期間の末日の翌日から起算して12ヶ月経過する日までの期間として上記から算出した離職率(30%以下となっていることが要件)
計画時離職率・・・計画認定申請日の12ヶ月前の属する月の初日から計画認定申請日の属する月の前月末までの期間として上記から算出した離職率
何を言っているかわからない方も多いと思いますがざっくりいえば、計画を出す1年前と、計画が終わった1年後の離職率が改善していればいいということになります。つまり、従業員が辞めないように気を使いましょうということです。離職は時の運もありますので、助成金申請のタイミングで離職率が上がってしまった場合には助成金はもらえません。また、新規創業等で計画時離職率が算出できない場合は評価時離職率の目標が「0%」となりますので、一人でも辞めると助成金がもらえません。
計画期間は3カ月以上1年以内で設定することとされています。計画期間を3カ月にできるなら助成金申請も早く行うことができます。なお、計画から申請までは以下の図に示すとおり、最短でも15か月程度の期間を要しますので、離職率を達成した場合に支給申請を忘れないように管理することが一つと、運転資金のあてにしないことが必要です。
(雇用管理制度助成コースの申請期間の例)
おわりに
人材不足で悩む事業所のほとんどは新たに採用することばかりに目がいきがちですが、人材不足の解消のためにはまず、離職率を低下(バケツの穴を塞ぐ)させることが重要であり、定着性を高めるためには賃金だけでなく、様々な福利厚生制度の実施を検討していくことが必要になります。本助成金では会社として十分可能な取り組みを支援するものであり、残念ながら離職率の低下が達成できずに助成金をもらえなかった場合でも、十分意義のある取り組みと言えます。社員が数名であれば大きな支出も必要ありませんし、離職率低下目標も達成しやすいことから、小規模の事業者ほど是非利用をご検討していただきたい制度です。
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