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いよいよ始まるダブルワーク(副業)解禁!中小企業の実務を検討

2019/08/10

副業解禁への法改正がいよいよ始まる!?

政府によるダブルワークに関する検討資料が令和元年8月8日にまとめられ、「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会報告書」として公表されました。

社会の状況が変化していく中で、労働者を含めた働き手が副業・兼業を希望する傾向が強まっているとともに、「働き方改革実行計画」(平成 29年 3 月 28 日働き方改革実現会議決定)に副業・兼業の促進が盛り込まれるなど、社会全体として副業・兼業に対する機運が高まっている。こうした中で、副業・兼業の場合の実効性のある労働時間管理を求める声が強くなってきている。以上のような状況等を受けて、本検討会においては、雇用による副業・兼業を行う場合の、実効性のある労働時間管理や健康確保措置のあり方について、検討することとなったものである。(報告書頭書抜粋)

以前よりダブルワークについては法の明確な解釈(法律・通達)によって許可しずらい面があった反面、社会的ニーズの高まりとのギャップがあり政府は副業推進に舵をきり、解決に向けた検討は始まったばかりです。実質同一事業主による法の潜脱なども想定されており、今後法改正や通達による解釈の変更などで対応していくと思われますが、既に進んでしまっている現行の実務ではどのように対策しておけばよいかを考え、準備しておく必要があります。

ダブルワークの制限(現行法律上の解釈)

1.ダブルワークの労働時間は通算する(労基法38条)

2.割増賃金も通算して支払い義務がある

3.割増賃金は後から雇用した事業所に支払い義務がある

4.残業によって通算時間が法定労働時間を超過した場合は残業させた事業所に割増賃金支払い義務がある

4.オーバーワークの健康管理(安全配慮義務違反のリスク)

主に以上のハードルをどのようにクリアしていくかが事業主側でも慎重になっていた理由ですが、事実上適切な労働管理は現実的に難しく違法状態は放置されている状態です。労働基準法に対する信頼が損なわれている中、今後増加すると想定されるダブルワーク関連の紛争を想定した場合に法律違反状態はあまりにリスクが大きいため、ダブルワーク従業員を活用している事業主でも現行法令を踏まえた実現可能で現実的な対策が必要です。

事業主のメリット

1⃣自社で得られない知識やスキルを獲得できる(個人の成長)

2⃣従業員の自主性・自立性の促し

3⃣人材流出の防止、人材の確保(人材競争力の向上)

4⃣副業で得た知識やスキル、人脈を利用して事業拡大につなげる

事業主のデメリット

1⃣労働時間管理・健康管理の適切な運営が難しい

2⃣オーバーワークにより生産性が低下する

3⃣機密情報の漏洩リスクが高まる

4⃣またがる企業間の獲得競争・起業による離脱

労災補償の扱いについて

労災保険は全ての労働者に適用されますが、例えばダブルワークの事業所間で移動の際に交通事故など災害にあった場合は『終点の事業場の保険関係で行うもの』とされています。したがって、終点の事業場が副業で収入が少ない側だった場合でも、労災保険からは少ない収入を基準として休業補償を受け取ることしかできません。この辺りも今後審議を経た結論が待たれます。雇用保険は双方での加入はできず、要件を満たした一方のみとなります。隠れて副業している従業員はもう一方の親切な雇用保険適用手続きで受理されなかった場合に発覚することが多いようです。

健康診断の実施について

事業主は従業員のダブルワークにかかわらず要件に該当すれば健康診断等(労働安全衛生法66条)を実施しなければならないことはよく知られていますが、実施の判断にあたっては他所との労働時間は通算されません。しかし、健康配慮・健康確保のため義務ではなくとも一定の措置をとることをお勧めします。

【一般健康診断の対象】
①常時使用される労働者(1年以上の有期契約ならびに契約更新により1年以上使用が予定されている労働者、1年以上引き続き使用されている労働者を含む)
②正社員の週所定労働時間の3/4以上勤務するパートタイム労働者

実務上の対応例

1.雇用契約書上の工夫をしておくこと

入社時点で既に他所とのダブルワーク希望者だった場合は雇用契約書にて工夫が必要です。一日・一週の上限は『他所での就労時間と通算した上限』である旨記載しておく必要があります。もしも法定時間を超過する場合は36協定の届出が必要なほか、健康には十分な配慮が必要です。

働き方改革による残業削減によって昼間社員が夜間開業の飲食店等サービス業で副業することも多くあります。昼間フルタイム社員が夜間アルバイトを始めた場合は法律上、『夜間バイトは全て割増賃金の支払い義務がある』となります。さすがに負担が重すぎるため雇用しないことが最良とも考えられますが、人手不足の事業所への就業希望者は貴重で不採用にするには惜しい苦悩があります。雇用契約書に『他所での就労時間を通算して法定上限を超えない範囲内での勤務とする』など、苦しい一文を記載する程度でしか対策できませんがやはり違法状態となる可能性が高いため、フルタイム正社員の副業採用は見送ることをお勧めします。本人が良いと言っても許されないのが労働基準法です。

2.就業規則上は条件付きの許可制としておくこと

何の条件もなくダブルワーク(副業・兼業)を認めると、先に記載した制限による不測の損害や潜在リスクを抱えることにもなりかねませんので、グレーゾーンに明確な指針が出されるまでは一定の制約が必要です。

【厚生労働省モデル就業規則(副業・兼業)】
1.労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2.労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3.第一項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社はこれを禁止または制限することができる。
 ①労務提供上の支障がある場合
 ②企業秘密が漏洩する場合
 ③会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
 ④競業により、企業の利益を害する場合
《※平成30年のモデル就業規則で記載されていた「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という副業禁止規定が削除されました。》

就業規則を変更する場合にはまず経営陣での方向性(副業解禁の是非)を話し合い、自社の状況に合わせた変更案を作成します。変更案をもって労働組合または労働者の過半数代表者と協議のうえ意見をうかがいます。意見をまとめた「意見書」に署名してもらい、就業規則と併せて労働基準監督署長へ届出し受理印をうければ事業所への備え付け、周知によって就業規則の変更は完了します。副業規定に違反した場合は就業規則の具体的違反内容を根拠としてのみ懲戒処分できるものですので、あらゆるケースを想定した十分な検討が必要です。

3.本人からの申告の証明書を取得しておくこと

他所での副業を希望する従業員には書面で対策しておくことも必要です。あまりにも詳細に申告させることは私生活への過度な干渉にもなり、また『詳細を知っていたにもかかわらず違法行為を行った証明』ともなりかねませんので避けるべきです。実務上は秘密保持義務や競業避止義務、職務専念義務の十分な説明と誓約させることは当然として、『ダブルワーク先の業種』、『他所でのおおよその就業時間』を申告させることは必要です。しかし制度に違反し副業を行うことや、繰り返しの注意に改善しない可能性は十分に考えられます。虚偽申告や誓約違反の場合の懲戒規定は盛り込むべきですが、判例では、「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、各企業においてそれを制限することが許されるのは労務提供上の支障がある場合等」とされています(小川建設事件・東京地裁・57.11.19、マンナ運輸事件・京都地判・H24.7.13他)。つまり実務上は相当な悪影響がない限り禁止することはできないものと考えておきましょう。

結局は、従業員と企業間のコミュニケーション、信頼関係に委ねられる面が大きいといえます。

報告書によると、ドイツ、フランス、オランダ等の参考とすべき先進国においても一定のルールはあるものの副業を認めており、日本にも浸透していくはずです。(監督署の人材不足や暗黙も日本同様であることがわかります)

今後将来のビジネスを考えると、副業の全面禁止では人材も確保できず、多様化やイントレプレナー(社内起業家)やイノベーションの創出など、現代企業に求められている生産性を追求できない可能性が高いため、取り組みの遅れている中小企業においても検討を進めていくべき重要事項です。特に深刻な人材不足・採用難を抱える小規模事業者では多用な副業を認めることで、人事の問題が改善に向かうと期待できます。

 

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