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中小企業も同一労働同一賃金の取り組みが義務化されます!

2019/08/07

同一労働同一賃金への取り組みに遅れていませんか?

パートタイム労働法は2020年4月1日より正式な名称を「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)」として改正して施行されます(中小企業では2021年4月1日から)。いよいよ日本でも本格的に同一労働同一賃金が法制化されることになります。

同一労働同一賃金の導入は、『同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指し、同一企業内における不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにするもの。』とされています。

もともと日本では全く同じ仕事をしていても、正社員と異なる雇用形態であれば賃金に差があることは一般的で、正社員側からすれば難関を乗り越えて就職を勝ち取ったという理屈はあるでしょうが、多くの非正社員に納得できる理由ではありません。雇用形態によって将来の役割期待が異なるため賃金ルールが異なるという今までの考え方は、厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン案」によると、主観的・抽象的説明で不十分としています。つまりは一方にのみ合理性のある理由では待遇格差はないとは言えず、あらゆる雇用形態の人にとって不合理とならないよう制度上配慮する必要を迫られています。

国際労働機関(ILO)のILO憲章(1946年制定)では前文から同一賃金の文章「同一価値の労働に対する同一報酬の原則」があり、国際的にも同一労働同一賃金は重要な位置を占めるものであり、単純に日本の労働史を語ることは許されませんが、日本の労働市場はガラパゴス化しているといわれても仕方のない一面があります。

同一労働同一賃金導入の最大の目的は、日本経済の生産性を高め成長力の底上げを図ることですが、原資の僅かな中小企業にとっても自社の生産性、成長力の底上げにどう取り組むかは大きな課題であり、取り組み内容によっては経営を良くすることもできます。まずは基本から確認しましょう。

※中小事業主とは資本金の額又は出資の総額が3億円以下(小売業又はサービス業の場合5000万円以下、卸売業の場合1億円以下)である事業主、もしくは、常時使用する労働者の数が300人以下(小売業の場合50人以下、卸売業又はサービス業の場合100人以下)である事業主を指しています。

均衡待遇規定(不合理な待遇差の禁止)

①職務内容②職務内容・配置の変更の範囲③その他の事情

の違いに応じた範囲内で待遇を決定する必要があります。

均等待遇規定(差別的取扱いの禁止)

①職務内容②職務内容・配置の変更の範囲

が同じ場合、待遇について同じ扱いをする必要があります。

派遣労働者については次のいずれかを確保することが義務化されます

①派遣先の労働者との均等・均衡待遇

②一定の要件を満たす労使協定による待遇➡労使協定方式に関するQ&A(厚生労働省リンク)

併せて、派遣先になろうとする事業主に対し、派遣先労働者の待遇に関する派遣元への情報提供義務が新設されます。

非正規雇用労働者は、「正社員との待遇差の内容や理由」など、自身の待遇について説明を求めることができるようになります。事業主は、非正規雇用労働者から求めがあった場合は説明しなければなりません。

都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続き(ADR)の規定が整備されます

均衡待遇や待遇差の内容・理由に関する説明についても、行政ADRの対象となります。

(※ADR=裁判によらない紛争解決手続き制度)

同一労働同一賃金とは、基本給は当然として、賞与や福利厚生、休暇や健康診断関連、研修に至るまで、正社員や非正規などの雇用形態に関係なく、業務内容に応じて対価を決める制度です(正社員と正社員間では適用されません)。特別な罰則は当面設定されないため行政指導はありませんが、法律で義務が明文化された以上は損害賠償請求を受ける可能性があり、裁判になった場合、事業主は大きな負担を負うことになりかねません。

「同じ仕事に対しては同じ給料」とシンプルな考え方ですが、経営はそんなに単純ではありません。しかしパート・有期雇用労働法に違反すると判断されれば不合理とされた待遇を定める部分は無効とされ、過去の差額賃金相当額が逸失利益として損害賠償請求されうることになります。

同一労働同一賃金のメリット

✅非正規雇用労働者のモチベーション向上が期待できる

✅待遇格差の解消により従業員の納得感を高め組織の活性化と生産性が向上する

✅適切な取り組みによって優秀な人材の維持・獲得で優位に立てる

同一労働同一賃金のデメリット

✅人件費コストの増大(適正化コスト)

✅人事制度や規則類の見直し、周知にかかる変更コスト(ダブルコスト)

派遣先から派遣元企業への情報提供は派遣契約の縮小につながる可能性の指摘もあります。特に派遣社員については派遣先事業所の労働者に合わせた待遇改善が求められており、企業の体力に差がある場合は派遣元の経営が深刻な事態になる可能性も多くあります。

格差の解消は非正規雇用労働者の待遇引き上げが期待されていますが、反面、正規雇用者の待遇引き下げによるつじつま合わせも想定されますので蓋を開けるまでは企業がどのようなに取り組むかはわかりません。

日本郵政グループが非正規社員の待遇改善を求められた結果、正社員だけに支給されている住居手当を廃止することで均衡を図ったニュースが大きく扱われました。多くのニュースでは「同一労働同一賃金」を盾にした人件費削減策のように扱われていましたが、実態としては非正規社員に対するボーナスや技能加算など、正規社員から削減した原資を非正社員に充当した調整で、単に会社が得をしただけの変更ではないことがうかがえます。

都心部の一等地に自社ビルを構える超大手企業であれば原資はいくらでもあるだろうと批判を浴びることになりますが、余裕のない中小企業では同一労働同一賃金にどのように対策していけばいいのでしょうか。

労使の合意なく労働条件を一方的に引き下げることはガイドライン上も望ましい対応とは言えないとしていますが、いずれにしても法律上支払いが義務づけられていない手当や賞与の他、福利厚生制度についても引き下げの対象として議論されることが予想されます。あまりに大きな引き下げは不満やモチベーションの低下につながり深刻な場合は離職によって戦力を失うほか、労働契約法上の不利益変更にも抵触する可能性があるためいずれにしても法に抵触する可能性のある待遇格差がある場合には目標を設定し、十分な時間をかけて弁護士や社労士など専門家を交えた協議が必要です。

正社員と非正規労働者の不合理な待遇格差をなくす「同一労働同一賃金」が来年4月にスタートすることに伴い、大企業の5社に1社が正社員の基本給や賞与を減らす可能性があることが5日、人材会社「アデコ」の調査で分かった。政府は同一賃金の指針で、労使合意のない正社員の待遇引き下げを望ましくないとしており、懸念が広がりそうだ。 同一賃金は、能力や成果などが同じ場合、正規、非正規に関わりなく賃金などを同一水準にする考え方で、働き方改革関連法に盛り込まれた。調査は同一賃金が先行導入される従業員300人以上の大企業の人事担当者500人を対象に今年3~4月に実施した。(2019.8.5共同通信)

既に年功序列賃金、学歴主義、終身雇用といった『日本型雇用慣行』は、能力主義(実力主義)へと転換時期にあり、組織内においても競争が激しくなるとも言えます。

不当に高い給与をもらっていた社員や、残業代で生活していた社員にとっては厳しい時代となり、キャリアの形成など専門分野の能力向上の他、幅広い職務に対応できるポジションを獲得していくことができなければ競争の敗北者となるかもしれません。この後控える解雇制限の議論が緩和へと進めば、生活や家族へも大きな影響があります。同時に、同一労働同一賃金の根底にある能力・成果主義賃金には適正評価義務、公正査定義務と適切な情報開示を切り離すことはできません。せっかく同一賃金に取り組んでも人事権(人事考課権)濫用の不法行為を問われれば損害賠償請求が認容されることも想定しておかなければなりません。

《待遇の格差を違法とした判例》

ハマキョウレックス事件(最高裁判決H30.6.1):契約社員の手当格差を違法と判断

丸水運輸商事事件(福岡地判H30.2.1):パート社員の手当格差を違法と判断

《不公正な人事考課を違法とした判例》

マナック事件(広島高判H13.5.23):昇給査定の実施手順の逸脱を違法と判断

住友生命保険事件(大阪地判H13.6.27):既婚女性の低評価を人事権の濫用として違法と判断

精勤手当、皆勤手当や通勤手当、食事手当、家族手当や扶養手当等、職務に深く関連しない手当の格差は不合理な待遇差として違法となるため是正が必要です。また、住宅手当においては正社員と非正社員の間で転勤や勤務先の範囲に特に差がない場合は違法とされる可能性があります。その他企業によって様々な手当が支給されていますが、職務との関連性に応じて格差が不合理なものはすべて洗い出しし、必要に応じてバランスを見直しする必要があります。

全雇用者の4割近く(2118万人)を占める非正規雇用労働者の待遇改善は前進すると予想されますが、中小企業にとっては従来の『キャリアアップ助成金』を活用してもなお高いハードルがあります。

中小企業にとっては先の話といえ急な対応は大変難しく、対策が遅れるほどリスクが増大します。少しずつでも「いつまでに」、「どのように」自社は対策していくか、早期に検討を始めることが必要です。判例にも揺らぎがあり完全なリスク回避の制度設計は現実的ではありませんが、今や事業にとって重要な位置を占める非正規雇用従業員にも納得感を高め、正規社員や非正規社員の枠組みを超えてすべての従業員のモチベーションを高めて精一杯職務にまい進していただくことが経営の基本であり、やはり余計な不満を生む不合理の解消と適正な評価制度の構築に取り組むことが事業全体の生産性を高めることであるといえます。まずは事業主サイドの意識を捨て、労働者側に立った意識で制度改変・構築していくことが必要です。

基本給 能力や経験が同じであれば、正社員と同一の賃金を支給
昇給 同一の能力の向上であれば正社員と同一の昇給
ボーナス(賞与) 貢献度が同じであれば同一の支給
役職手当 同一の役職であれば正社員と同一の支給
退職手当・住宅手当・家族手当等 ガイドラインに明記は無いが不合理な待遇差に注意
特殊手作業手当(危険度・作業環境に応じて支給されるもの) 正社員と同一の支給
特殊勤務手当(交代制勤務など) 正社員と同一の支給
時間外労働手当の割増率 正社員と同一の割増率
深夜・休日労働手当の割増率 正社員と同一の割増率
通勤手当/出張旅費 正社員と同一の支給
単身赴任手当 正社員と同一の支給
地域手当 正社員と同一の支給
福利厚生施設利用(食堂・休憩室・更衣室) 正社員と同一の利用・付与
福利厚生制度(転勤者住宅・慶弔休暇・健康診断の勤務免除・有給保障) 正社員と同一の利用・付与
病気休職(病気休暇) 正社員と同一の付与(有期雇用労働者は契約期間終了まで)
法定外有給休暇 勤続期間に応じて同一の付与
教育訓練 同一の職務内容であれば正社員と同一の実施

(同一労働同一賃金ガイドラインより抜粋)

 

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