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【給付率4割】特定一般教育訓練給付金制度が開始されています
2019/11/25
在職社員の資格取得促進に使える給付金制度
個人が資格取得など自己啓発を行う際の費用を軽減するために活用できる制度として、雇用保険に教育訓練給付金制度が設けられていますが、政府のテーマとする「人づくり革命基本構想(平成30年6月13日人生100年時代構想会議決定)」の一環として、2019年10月1日より従来の一般教育訓練給付金をさらに充実させた『特定一般教育訓練給付金』が新たに拡充されました。雇用保険と言えば失業給付のイメージが強く、失業しているときにしか個人が貰えるものはないと思われがちですが、教育訓練給付金は在職中でも受給できる制度で事業主にとっても従業員のスキルアップに使えることはあまり知られていません。
最大で224万円の支給、講座受講料の20%~70%を補助し、すでに延べ350万人が利用した『国が個人を応援する制度』です。
指定を受けている講座は14,000以上あり、キャリア形成に意欲的な従業員が希望する教育が厚生労働大臣の指定を受けた制度対象となっていることもあるため、事業主も忘れずに確認しておきましょう。
教育訓練給付制度とは
教育訓練給付金とは雇用保険の制度の一つです。働く人が自発的に、「資格取得にチャレンジしたい」、「今の仕事のスキルアップをしたい」、「新しい分野にチャレンジしたい」と思うことは社会全体にとっても大変有意義なことです。しかし、学びにはお金がかかり、より専門的になるほど勉強期間は長くその費用は高額になります。新たな知識取得の機会を費用の面であきらめることは個人だけでなく、社会にとっても大きな損失です。
教育訓練給付金制度は、働く人の主体的な能力開発の取組を支援し、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的として、雇用保険の被保険者または被保険者であった方が雇用の安定及び就職の促進を図るために必要な職業に関する教育訓練として厚生労働大臣が指定した講座を受講し修了した場合、教育訓練施設に支払った教育訓練経費の一部が公共職業安定所(ハローワーク)から本人へ支給される制度です。
1.一般教育訓練給付金
一般教育訓練給付金は、受講開始日時点で雇用保険の支給要件期間3年以上(初回に限り1年以上)を満たす方が、厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講し修了した場合に教育訓練施設に支払った経費の20%(上限10万円)を支給するものです。
一般教育訓練給付金の対象として指定されている講座は11,299(H30年4月時点)あり、IT関係や機械運転、医療・介護のケアサービスなど、様々な分野の講座があります。
(支給要件期間)
受講開始日までの間に同一の事業主の適用事業に引き続いて被保険者(一般・高年齢・短期)として雇用された期間をいい、転職者はその被保険者資格を取得する前1年を超える空白期間が無い場合には通算することができ、過去に同給付金を受給した場合の被保険者期間は除外します。一方で、失業中の人が教育訓練給付金制度を利用する場合には雇用保険の喪失(退職)から1年以内であることが要件となります。
2.専門実践教育訓練給付金
専門実践教育訓練給付金は、受講開始日時点で雇用保険の支給要件期間3年以上(初回に限り2年以上)を満たす方が、キャリアコンサルタントによる「訓練前キャリアコンサルティング」によってジョブ・カードの作成と交付を受けたあと、中長期的なキャリア形成に資する専門的・実践的な教育訓練として厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講し修了した場合に教育訓練施設に支払った経費の50%(年間上限40万円/3年120万円)を支給する制度です。さらに、資格を取得し1年以内に被保険者として雇用された方(既に雇用されている方)には20%を加算した計70%が支給(総額年56万円/3年168万円)されます。
専門実践教育訓練給付金はその受講期間が1年~3年以内と長期にわたるため、失業中の場合には受講期間中の生活費の補填として「教育訓練支援給付金」として45歳未満など一定の条件を満たせば雇用保険の失業給付(基本手当)日額の8割を支給する制度があります。(受講途中で離職した場合は受給できないためご注意ください)
専門実践教育というだけあって、司法試験のための法科大学院や会計大学院などの専門大学院や看護専門学校やMBAコースまで、まさに専門的な教育を受ける人材に対しては手厚いサポートを行っていることがわかります。高度な学問ほど仕事を続けながらは難しくなりますが、将来目指す自分がある人であれば専門実践教育訓練給付金と教育訓練支援給付金を活用すれば年間で200万円以上受給できることもあり相当オイシイ制度といえます。
3.特定一般教育訓練給付金【NEW!!】
特定一般教育訓練給付金は、受講開始日時点で雇用保険の支給要件期間3年以上(初回に限り1年以上)を満たす方が、キャリアコンサルタントによる「訓練前キャリアコンサルティング」によってジョブ・カードの作成と交付を受けた後、速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練として厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講し修了した場合、教育訓練施設に支払った経費の40%(上限20万円)が支給されます。
特定一般教育訓練給付金は、昨今の人手不足の実態等の観点から、人材確保、生産性向上への寄与といった「社会的有用性」の高い講座を重点的に指定対象としているため、国家資格で業務独占資格・名称独占資格など特に人気の高いものから2019年10月時点で150の講座が指定されており、今後さらに拡大されていく予定です。
特定一般教育訓練給付金受給の流れ
※一般教育訓練給付金を申請する場合には受講を終了した後に申請を行うため、事前の届出等は必要ありません。(専門実践・特定一般は1か月前までに事前確認が必要)
『一般教育訓練給付金』と『特定一般教育訓練給付金』はどう違う?
(※)訓練前キャリアコンサルティングと受給資格確認を行うためにはまずハローワークを経由して指定の『キャリアコンサルタント』へ面談予約が必要になります。混雑時期によって予約が取りずらいことがあるため余裕をもって準備しましょう。
受給資格確認の必要書類
①教育訓練給付金及び教育訓練給付金受給資格確認票(様式33号の2の2)
②訓練前キャリアコンサルティングを受け作成されたジョブカード
③運転免許証、住民基本台帳カード、パスポート、マイナンバーカード、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳、在留カード、特別永住者証明書、官公庁から発行(発給)された身分証明書又は資格証明書(写真付き)のいずれか
④払渡希望金融機関の通帳またはキャッシュカード
対象となる講座
大型自動車第一種・第二種免許、中型自動車第一種・第二種免許、普通自動車第二種免許、玉掛・フォークリフト運転・けん引免許、介護職員初任者研修、介護支援専門員実践研修、登録販売者、宅地建物取引士、社会保険労務士、税理士、行政書士、司法書士、弁理士、通関士、ファイナンシャルプランニング技能士(FP)、自動車整備士、電気主任技術者等
不正受給はダメ!絶対!
偽りその他不正の行為により教育訓練給付金の支給を受け、又は受けようとしたものは給付金を受けることができなくなるだけでなく、「不正に受給した金額の返還」と加えて、「返還額の2倍の金額の納付(つまり3倍返し)」を命じられるほか、「詐欺罪」として処せられることがあります。
おわりに
教育訓練給付金制度は講座を受けるだけで比較的手続きも簡単で、社会人として雇用されている、又は雇用されていた方なら比較的容易に受給することができます。また、特定一般教育訓練給付金や一般教育訓練給付金は専門実践教育訓練給付金よりも受講難易度が低く、在職中でも本人のやる気次第で十分受給することができるため、事業主の方々は社員の資格取得やキャリアアップを促すことができ、自社の従業員レベルの底上げにもつながります。
なお、従業員の方が「会社に隠して」スキルアップを図る場合でも教育訓練給付金制度は原則として本人が申請・本人に支給されるものであり、利用が会社に知られることはありません。
仕事を続けながら資格取得を目指す従業員を支援する事業主には厚生労働省の「人材開発支援助成金」も対象となるケースがあります。詳しくは人材開発支援助成金パンフレットでご確認ください。
(人材開発支援助成金/厚生労働省リンク)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
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