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注目されるリファラル採用の紹介料は法律違反?

2019/10/01

リファラル採用のインセンティブは法律違反!?

かつては「縁故採用」や「コネ入社」とよばれてイメージの悪かった、「社内人材の紹介で採用する」制度は名称がいつの間にか横文字になり、年々高まる採用費用に対する効果的な手法として『リファラル採用』と呼ばれるようになり、大企業をはじめ中小企業でもいま注目が高まっています。応募から書類選考や筆記試験、複数回の面接など、通常企業では一定のプロセスを経て人材を採用することになりますが、これらの手順を「簡略して」入社に至るならば言葉は違えどコネ入社と同じです。さて、現代の経営で注意しておくべきことはどのようなことでしょうか。

リファラル採用のメリット

☑採用コストが抑えられる

☑入社後活躍すれば紹介者のモチベーションもあがる

☑紹介で入社したことで責任感が高まり離職率が低い

☑事前に従業員の説明があるためミスマッチが起きにくい

リファラル採用のデメリット

✅不採用にした時の紹介者従業員との関係悪化

✅入社後活躍できなければ紹介者のモチベーションもさがる

✅リファラル入社社員が退職した場合の紹介者の意欲低下

✅リファラル社員への既存社員のイメージが悪い(選考プロセスの納得感)

インセンティブ支給に係る法律上の問題点

紹介者に紹介料として金銭を支払う場合には注意が必要です。労働基準法第6条では「何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」とされているほか、職業安定法40条では「労働者の募集を行うものは、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第36条第2項の認可(人材紹介業等)に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない」と中間搾取の排除を定めています。たとえ自社従業員であっても職業紹介によって報酬を得ることが一定限度を超えると安定法に違反することとなります。(6カ月以下の懲役または30万円の罰金)

どのように、いくらまでなら適法の範囲か

前の法律の制限をクリアするためには以下を踏まえて制度設計する必要があります。

☑就業規則での定め

☑賃金として支払う

☑業とみなされない程度の一般的な額

以下で詳細を確認していきましょう。

就業規則の定め

従業員に報酬を支払う場合には就業規則上の根拠が必要なのは原則通り変わりません。よって、報奨制度として人材紹介の旨を規定するほか、金額、入社3年目以降の従業員など、インセンティブを受け取ることのできる対象となる従業員の範囲を定めておかなければなりません。

賃金として支払う

紹介料などと露骨な名称でインセンティブを支払うことはできません。あくまでも規則で定められたルールに則り賃金を支払う要件をクリアするため、支払の時期も規則で明記することが望ましいといえますが、所得として課税されるほか、支給時期によっては社会保険料に影響する点も注意が必要です。

業とみなされない程度の一般的な額

通常は5~10万円程度の紹介料を支払うところが多く見られますが、これらも累積すると紹介料だけで100万円を超えることも想定されます。職業安定法40条の規定は厳しく、リファラル採用が違法とされ行政指導を受けた事例は今のところ聞いたことはありませんが、他人の就業に介入して報酬を得た無資格者が摘発された事例は多くあります。妥当な範囲についてはケースバイケースとなり基準となるラインはありませんが、やはり紹介料だけで年収の過半を占めるような場合であれば業とみなされても仕方ありません。あくまでも、紹介に対する「気持ち」程度の額とすることが望ましく、また紹介料だけで大金を稼いでいる従業員がいることは組織運営上も問題がありますので、あまり高額を支給しないようにすることが必要です。

失敗例

【ケース①】
他社で評判の高かった営業社員が転職先を探しているとのうわさを聞きつけ、かねてより交流のあった社員が自社を紹介した。入社に至ったが、他社の営業スタイル(個人主義)と自社のスタイル(組織主義)に大きく乖離があり、数字を伸ばせずに結局離職することに。
【教訓】
社員が活躍できるかどうかは個人の資質より組織との相性によることが大きい。他社の活躍を信用して人物選考を甘くしたことが失敗の要因。

【ケース②】
従業員の強い推薦でフリーランスとして活躍している人材が紹介によって入社した。しかし、個人の主張が強く組織になじめず、また仕事に対する自己評価が高すぎるため受注のたびに報酬の要求が高く、最終的には個人で仕事を受注していたことが発覚して退職。
【教訓】
個人事業主と違って会社で働くためには様々な義務がある。通常なら見抜くことができた問題のある人材も、信頼する従業員の強い推薦により選考が甘くなったことが失敗の要因。

【ケース③】
人材紹介キャンペーンとして正社員一名につき20万円の報酬を払う月間を実施。5名の採用枠に100名近くの紹介があり、大量の不採用よって紹介者から苦情が相次ぎキャンペーンを廃止。口コミサイトにまで悪評を書き込みされることに。
【教訓】
紹介料が高すぎる。

【ケース④】
ベテラン社員の紹介により選考プロセスは面談のみ実施し既存従業員に対して何の説明も無く管理職候補として入社。他の従業員に対して威圧的な態度、また見下した発言を繰り返し、既存従業員が大量離職。最終的にパワハラによって解雇。一名の採用が大量離職を生む悪例。
【教訓】
既存従業員に十分な説明も無く上司(候補生)を採用することはリスクが高い。パワハラ対策を講じず権力を勘違いさせてしまった愚策。このパターンは非常に多い。

おわりに

グーグルなど超一流企業でもリファラル採用が実施されており、米国企業では8割、日本国内でも上場企業のリファラル採用推進割合は4割を超えていると言われていますが、実は紹介料を廃止した会社も多くあります。人材不足の中小企業の場合であれば求人広告費用や人材紹介・派遣会社に支払うコストと比較すれば正社員一名の採用に対して数十万円程度は支払っても十分お釣りが来ますが、規模が大きくなり知名度や経営の安定、賞与支給実績など十分な待遇が用意できるようになればコストよりも人物を重視する傾向にあります。ニンジンをぶら下げてレベルの低い人材を紹介されるくらいなら、従業員のモチベーションや承認欲求を満たす「心的報酬」でリファラル採用を進めることもまた必然といえます。インセンティブで高まるモチベーションは短期的で、持続性がありません。また金銭欲しさに強引な紹介を勧めるなど、企業イメージの低下など、高額を支給することの問題は後を絶ちません。きれいごとになりますが、求人コスト削減を目的として紹介料をばらまくよりも、従業員が自ら会社を紹介したくなるような労働環境を用意することが長期的に見て有効な施策です。当事務所では紹介料相当を支払うとしても1~2万円の二人で一杯飲みに行ける程度が適当と案内しています。

 

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