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中小企業の在宅勤務(テレワーク)規定と同意書|作成例・雛形サンプル【2025年最新版】

2021/03/05

(最終更新日:2025/8/18)

はじめに

新型コロナを契機に急速に普及したテレワーク(在宅勤務)は、現在も人材確保や事業継続計画(BCP)の観点から重要性を増しています。一方で「監視されているようで負担」「労働時間管理が難しい」「コミュニケーション不足」といった課題も顕在化しています。

本記事では、中小企業が在宅勤務制度を導入する際に必要な規定・同意書の雛形サンプルを提示し、労務管理・税務・労災の観点から留意点を解説します。

テレワーク導入の現状と企業の課題

従業員からの不満の声

  • 常時カメラをつけられて精神的に負担

  • 不要な報告が多く業務効率が低下

  • プライベートを侵害されているように感じる

  • 在宅勤務より事務所勤務を希望

事業主側の悩み

  • 出勤命令を無視される

  • 実労働時間を正確に把握できない

  • コミュニケーション不足による生産性低下

  • 時間外労働の増加

⇒ テレワーク制度は、従業員の満足度だけでなく、生産性向上と両立する仕組みが不可欠です。

非対面に取り組まないビジネスは淘汰される

様々な問題はあるにしても、常にテレワークを実施できる体制を整えておくことが現在の企業のリスク管理の一つとして重要視されています。今はテレワーク制度を導入する予定がなくとも、実際に在宅勤務規定がどのような点を考慮して作成されているか学び、いつかは必ず従業員をテレワークさせるつもりで知識を蓄えておきましょう。今後は非対面ビジネス化に取り組む会社とそうでない会社の生産性(当然、従業員の賃金も)は乖離していき、テレワークする気の無い事業者が淘汰の憂き目にあう不安はぬぐえません。

テレワークのメリットとデメリット

デメリット メリット
①労働と生活の混在(労働時間管理)

②評価が困難

③セキュリティレベルの低下

④自己負担の増加

⑤コミュニケーション不足の懸念

①通勤時間短縮等出勤負荷の軽減

②介護離職の引き留め手段

③オフィスの省スペース化

④事務所光熱費の削減

⑤感染症に対する安全配慮

 

人事評価・成果物管理の課題

在宅勤務では行動や進捗を直接把握しにくく、評価制度が形骸化するリスクがあります。

  • 成果物や工程が明確な業務は請負契約への切替えも可能ですが、解雇回避目的での形式的転換は違法となるため注意が必要です。

  • 「時間」を提供する労働者には、評価制度・賃金制度の明確化が必須です。

 

在宅勤務における費用負担と税務処理

国税庁は在宅勤務時の費用負担について以下の取扱いを示しています(令和3年1月)。

  • 在宅勤務手当を一律で支給 → 課税対象

  • 通信費 → 実費の2分の1を非課税扱い可能

  • 電気代 → 床面積を按分し、業務使用割合分のみ非課税扱い可能

⇒在宅勤務手当や通勤手当の停止などは就業規則・賃金規程に明記し、社労士や税理士と相談の上でルール化することが必要です。

⇒在宅勤務者の個人スマホを会社名義に変更する方法はこちらの記事を参照ください

 

在宅勤務中の事故と労災適用のポイント

在宅勤務も通常勤務と同様に労災保険法の適用対象です。ただし、公私の線引きが難しく、以下のように判断されます。

  • 認定されにくい例:洗濯・散歩・家事中の怪我

  • 認定されやすい例:トイレに行く途中の転倒、PC作業中の事故

⇒労災適否の判断は労基署が行うため、会社独自で「対象外」とするのは危険です。

 

労働時間の管理と法的留意点

  • 在宅勤務者が常時連絡可能な状態であれば、みなし労働時間制(労基法38条の2)や裁量労働制(38条の3)が認められにくい

  • 過度な監視はプライバシー侵害につながるため、業務効率とバランスを取る必要があります。

⇒「制度設計は厳格に、運用は柔軟に」が基本です。

在宅勤務規定を整備すべき理由

  • トラブル防止(労働時間・費用・労災)

  • 助成金申請時に必要(両立支援助成金 等)

  • 採用力強化(求職者はテレワーク制度の有無を重視)

 

テレワーク勤務規定(ひな型)

テレワーク勤務規程

(総則)
第1条 この規程は、●●●(以下「会社」という。)の従業員に適用するテレワーク勤務の取り扱いを定める。
(定義)
第2条 テレワーク勤務とは、労働時間の全部または一部について、一定期間、所定事業所以外の自宅等で業務を遂行する勤務形態の総称をいう。
(目的)
第3条 テレワーク勤務制度は、従業員に対し一定期間事業所以外で業務に従事することを認めることで多様な働き方を推進とすることを目的とする。
(テレワーク勤務対象者)
第4条 テレワーク勤務制度は、次の条件を全て満たす者に適用する。
(1) やむを得ない事情により通勤が困難と認められる者
(2) 入社日より●年間が経過していること
(3) 自宅の職務環境、セキュリティ環境、同居の親族等の理解のいずれも適正と認められる者
(4) テレワーク勤務に適した業務に従事している者
(5) テレワーク勤務を希望し、会社の承認を得た者
(テレワーク勤務の同意)
第5条 テレワーク勤務を希望する者は、会社が指定するテレワーク勤務時の同意書(以下、「テレワーク同意書」という。)を会社に提出しなければならない。
(申請手続き)
第6条 テレワーク勤務制度の適用を受けようとする者は、前条のテレワーク同意書のほか、次の事項を記載した「テレワーク勤務申請書」を会社に提出し、事前に承認を得なければならない。
(1) 氏名および所属部署
(2) テレワーク勤務で行う業務の具体的内容、およびテレワークでは行わない業務の確認
(3) 週あたりのテレワーク勤務日数(時間)と予定期間
(4) テレワーク勤務中の連絡方法
(5) その他必要な事項
(緊急時のテレワーク実施)
第7条 台風、地震等の自然災害および感染症の蔓延等社会情勢を鑑み必要がある場合は、会社が従業員にテレワーク勤務を指示する場合がある。
(勤務時間・休憩時間)
第8条 テレワーク勤務時の始業時刻、終業時刻および休憩時間については、テレワーク勤務を行わない場合の就業時間に準じ、個別の雇用契約及び労使協定で定める場合にはその内容を適用する。
(休日・休暇)
第9条 テレワーク勤務者の休日・休暇については、就業規則および個別の労働契約に準じる。
(就業場所)
第10条 テレワーク勤務者の就業場所は、原則として自宅とする。
(報告)
第11条 テレワーク勤務者は勤務の開始、中断、および終了について次のいずれかの方法により会社に報告しなければならない。
(1) 電話または電子メールを含むグループウェア
(2) 勤怠管理ツール等会社より指定された方法
(労働時間の判定)
第12条 (個別事業により判定基準を作成してください)
(連絡体制)
第13条 テレワーク勤務者の連絡体制については、次のとおりとする。
(1) テレワーク勤務を行う時間帯は、●●により会社と(常時・適時)連絡がとれるようにすること。
(2) テレワーク勤務時に事故、トラブル、情報漏洩などが発生した場合、速やかに会社へ報告をすること。
(3) 自宅等が災害等によって罹災し情報通信手段に不具合が生じた場合は生命及び安全を優先したのち、会社へ連絡をとり、指示を受けること。
(私生活への配慮)
第14条 テレワーク勤務が、起床寝食等私生活を営む自宅で行われることを考慮し、勤務実態の把握を目的とした録画などで過度にプライベートを侵害することの無いよう会社は十分配慮を行うこととする。
(費用の負担)
第15条 会社が貸与する情報通信機器、ソフトウェアを利用する場合の通信費は会社負担とする。
2 在宅勤務に伴って発生する水道光熱費は在宅勤務者の負担とする。
3 業務に必要な郵送費、事務用品費、消耗品費その他会社が認めた費用は会社負担とする。
4 自宅以外の場所で就業したことにより発生した費用については、●●に限り会社負担とする。
(給与)
第16条 テレワーク勤務期間中の給与については、テレワーク勤務を行わなかった場合の給与に準じるほか、支給される手当がある場合は以下の通り扱う。
イ 通勤手当は テレワーク勤務期間中(も支払う・停止する)。
ロ 在宅勤務手当として 本人が負担する通信費及び電気代の他、業務利用部分の自宅床面積比率を考慮し、月額(日額)●●円を上限として下記計算式に基づき支給する。
【在宅勤務手当の計算方法を記載】
ハ 在宅勤務環境整備補助金として セキュリティソフト・オフィスチェア・モニタ・WEBカメラ(マイク)購入に係る諸費用実費相当額●万円を一時金として支給する。
上記が月額による場合は月単位とし、テレワーク勤務日数が月n日以下の場合は切り捨て、月(n+1)日以上の場合は1か月として扱う。
(情報管理)
第17条 会社から業務に必要な資料や機材その他の情報を持ち出す際には会社の機密情報保護及び管理規定に十分留意し、自らの責任において厳重に管理しなければならない。
2 テレワーク勤務中に作成した成果物は紛失、毀損しないように丁寧に取扱い、確実な方法で保管・管理しなければならない。
(テレワーク勤務時の服務)
第18条 テレワーク勤務者は、就業規則の服務事項・禁止事項及び本規定に定める事項を遵守しなければならない。
(1) テレワーク勤務時間中は業務に専念しなければならないこと。
(2) 会社へ報告する労働時間と実労働時間に差異がないようにすること。
(3) テレワーク勤務時間は通常の勤務時間として扱い、適切に休憩を取得できるよう自ら管理を行うこと。
(4) テレワーク勤務の際に持ち出した会社の情報ならびに作成した成果物を第三者(親族を含む)に閲覧、複写等されないよう最大の注意を払うこと。
(5) テレワーク勤務者は、漏洩リスクの高いネットワーク(公衆無線LANスポット等)への接続は禁止する。
(6) テレワーク勤務の実施に当たっては、会社情報の取り扱いに関し、関連規程類を遵守すること。
(教育訓練)
第19条 会社は、テレワーク勤務者に対し、必要な教育及び訓練を行う。この場合、テレワーク勤務者は正当な理由なくこれを拒むことはできない。
(安全衛生)
第20条 会社は、テレワーク勤務者の安全衛生の確保および改善をはかるため必要な措置を講じる。
2 テレワーク勤務者は、就業規則その他会社の諸規程、安全衛生に関する法令等を遵守し、労働災害(長時間労働による精神疾患含む)の防止に努めなければならない。
(災害補償)
第21条 テレワーク勤務者の災害補償については、関係法令に準じる。
(出勤命令)
第22条 会社は、業務上の必要が生じた場合は、テレワーク勤務者に出勤を命ずることがある。
(制度適用取消し)
第23条 健康管理・制度運用・成果創出面において不適切であると会社が判断した場合は制度の承認を取消すことがある。
(その他)
第24条 この規程に定めのない事項については、就業規則その他の諸規則を準用する。
附則
この規程は、令和  年 月 日から施行する。

 

テレワーク勤務同意書

テレワーク勤務時の同意書

 私は、 株式会社○○ (以下「会社」という。) のテレワーク勤務規定に同意し、以下の事項を遵守することを誓約いたします。

1.テレワーク勤務を行うにあたっては、会社の指揮命令に従い職務に専念し、適正に業務を遂行します。

2.テレワーク勤務における勤怠は、会社から指示された方法により、始業・終業・休憩時間等を正しく申告し、テレワーク勤務を行った日ごとに会社の担当者の承認を得ます。

3.テレワーク勤務が所定労働時間を超えるとき、深夜に及ぶとき、または所定休日にテレワーク勤務をしようとするときは、事前に指定された方法により会社の担当者に申し出、相談の上、許可を得て行います。

4.会社より貸与される機器や持ち帰りが許可された書類等(以下「貸与物等」という。)の取扱いについて以下を遵守いたします。

(1)電車等で移動する場合は、貸与物等を常に手元に置き、網棚等に置かないこと。

(2)飲酒の機会がある場合は、貸与物等を持ち歩きしないこと。

(3)貸与物等を鞄等から取り出すのは自宅と会社事業所のみとすること。

(4)貸与物等が紛失・破損・盗難される等しないよう最大限の注意を払うこと。

(5)テレワーク勤務期間終了または会社から指示があった場合には、速やかに貸与物等の返却を行うこと。

5.貸与物等は個人利用の機器等と明確に区別し、会社からの承諾があった場合を除いては、貸与物等に個人利用のUSB等に接続したり、ソフトウェアのインストールは行わず、また業務以外の個人利用もいたしません。

6.テレワーク勤務中に席を離れる場合は、パソコン画面を閉じる等を徹底すると共に、家族を含む第三者に対し、情報の一切が開示・漏えいしないよう最大の注意を払います。

7.業務遂行状況が芳しくない場合、テレワーク勤務に関する規定等への違反が生じた場合、または業務上の支障が生じた場合などは、本テレワーク勤務を中止または終了する場合があることを承諾いたします。

令和   年  月  日

社員番号:        

氏名:        

 

まとめと今後のポイント

  • 規定整備・同意取得・法令遵守がテレワーク導入の基本

  • 税務処理や労災適用は専門家と連携

  • 採用・定着力を高めるための「柔軟な働き方」施策として必須

⇒在宅勤務規定・同意書の雛形セットを整備し、専門家のチェックを受けることで、企業も従業員も安心して制度を活用できます。

おわりに

テレワークは新型コロナによって一気に加速し、いまやひと昔前までは珍しかったテレワークはいまや中小企業でも「常識」になりつつあるとはいえ、まだまだ法整備や実務課題が山積している黎明期と言えます。これからの企業は幅広い人材を登用するため、在宅や事務所など勤務地、柔軟な労働時間の選択肢を与えるだけでなく、短時間勤務正社員としての「労働者」と、労働時間以外に仕事を請け負う「業務委託」を混在させるハイブリッドな委託型労働契約も現れています。私たち事業主は、「将来の会社にとって取り組む有益な方法」を迷いながらも取捨選択しなければなりません。今は全く考えていないと言いながら、実は将来は(可能なら)テレワークもアリだと思っている人は多いはずです。規則は準備が大切です。今後も繰り返される感染症との付き合い方として、テレワークの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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よくあるご質問(FAQ)

Q1. 在宅勤務中の事故は必ず労災になりますか?

A. いいえ。業務との因果関係がある場合のみ労災認定されます。例えば「PC作業中の転倒」は認められる可能性がありますが、「洗濯中の怪我」は対象外です。最終判断は労基署が行います。

Q2. 在宅勤務手当は非課税ですか?

A. 一律で支給する手当は給与として課税対象ですが、実費相当(通信費や電気代の業務使用分)は非課税扱いが可能です。就業規則や賃金規程に明記し、税理士と相談して運用することをおすすめします。

Q3. 規定がなくても在宅勤務はできますか?

A. 一時的な対応は可能ですが、長期的に運用する場合は「在宅勤務規定」「同意書」「申請書」を整備するのが必須です。助成金の申請にも必要となります。

Q4. みなし労働時間制はテレワークに適用できますか?

A. 常時連絡可能な体制を求めている場合には適用が難しいとされています。業務の性質に応じて裁量労働制や在宅勤務用の労働時間管理方法を設計する必要があります。

 

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