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職場の熱中症対策が義務化!企業の対応方法は苦情相談窓口の設置が効果的!

2025/06/27

近年の酷暑による熱中症の重篤化防止のため、令和7年6月1日より労働安全衛生規則の改正省令が施行され、事業者の熱中症対策が義務付けられました。

近年の気候変動の影響から夏期において気温の高い日が続くなか、職場でおきた熱中症による労働災害はここ数年増加傾向にあり、令和6年の死傷災害(休業4日以上)は1,000人を超えて調査開始以来最多となりました。特に熱中症による死亡災害は3年連続で30人以上と報告されており、労災による死亡者数全体の4%を占めるにまで至っている状況であることが公表されています。今回の法改正により熱中症の重症化を防止し死亡災害に至らせないよう、熱中症の疑いがある従業員の早期発見や重篤化防止のために事業者が講ずべき措置について規程が設けられています。今年の夏季も猛暑が予想されており、熱中症の可能性がある業種や業務のある企業は早急な点検が必要です!

(データ出展:厚生労働省)

【労働安全衛生規則第612条の2として以下条項を新設】

(第612条の2)

事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に従事する者が熱中症の自覚症状を有する場合又は当該作業に従事する者に熱中症が生じた疑いがあることを当該作業に従事する他の者が発見した場合にその旨の報告をさせる体制を整備し、当該作業に従事する者に対し、当該体制を周知させなければならない。

2 事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、作業場ごとに、 当該作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせることその他熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順を定め、当該作業に従事する者に対し、当該措置の内容及びその実施に関する手順を周知させなければならない。

つまり、

①熱中症の疑いがある作業者やその作業者を見つけた者が報告するための体制整備と関係者への周知

②熱中症の疑いがある場合に迅速に判断できるように、『職場の緊急連絡網・緊急搬送先の連絡先』を周知

③作業を止めさせる、体を冷やす、医療機関へ搬送するなど熱中症防止のための手順を作成し関係者へ周知

することが義務付けられます。

対象となる作業とは

冷房の効いたオフィスや店舗での作業は基本的には該当しませんが、対象の作業となるのが【WBGT28度以上又は気温31度以上の環境下で 連続1時間以上又は1日4時間を超えて実施が見込まれる作業】とされます。「WBGT値」とは聞きなれない言葉ですが、環境による熱ストレスを評価するために扱う指数のことで、作業に伴う身体の代謝によって異なる体感気温を指数化することで、気温による判断だけにとどまらず、作業現場や作業内容によるきめ細やかな判断ができます。

今回の法改正では熱中症が起こった際の対応方法を事業者に義務付ける内容のもので言わば『事後対応』のものとなりますが、当然、倒れてしまってからでは遅く、熱中症にならなくとも「熱中症になりそうなぐらいキツイ」業務は世の中に山のようにあります。

事業者として法改正による義務対策は当然として、労務管理の観点からも熱中症可能性を想像し、「未然に防ぐ」ためのリスク対策が必要と考えられます。

【参考となる裁判例】船舶修理会社で船の補修作業中の30代男性が死亡したことは会社が適切な対策を怠ったことによる熱中症で安全配慮義務違反であるとして企業を相手取った訴訟では、2025年2月に企業の不法行為を認めた地裁判決を高裁も支持し、4,860万円の損害賠償を命じた(会社側・遺族側双方が最高裁に上告)

熱中症対策の方法

法律の施行によって熱中症対策を怠った企業には罰則(6か月以下の懲役または50万円以下の罰金)が設けられました。では万が一事故が起こってしまったとき、「熱中症対策をしっかり行っていたので会社に罪は無い」と企業が主張するためにはどのような方法が効果的でしょうか。裁判でも評価されそうな企業の取り組みについて、例を挙げてみましょう。

●一定時間ごとに一斉の休憩を設け、水分補給などを行わせる。

●熱中症の注意喚起のためポスターを作成(印刷)して事業場の見やすい場所に掲示する。

●業務開始のタイミングと業務途中のタイミングで、塩飴や経口補水液などを提供する。

●薄手の素材や通気性の良い服装(空調服など)を推奨し、その旨社内掲示板で案内する。

●ハンディファンやネッククーラーなど直接表面体温を下げる熱中症対策グッズを支給。

●「熱中症アラート」として作業日ごとの注意指数をメールで配信する。

などが考えられます。事故が起こった際に主張するためには「口頭で注意喚起を行っている」ではさすがに企業としては不十分で、記録が残る方法で実施することが必須です。また従業員の自主性に任せているようでは企業は責任を逃れることはできません。職場は学校や家庭ではなく、安全衛生法にしばられた企業であり法律違反には罰則が伴います。企業側が自主的に、主体的に、率先して「熱中症対策を強制させる」ことが重要です。文書や掲示板などで掲示した際には写真で記録しておくなども効果的ですね。しつこいようですが、「繰り返し注意していた」、「日陰に行くように案内した」、「水分摂取を忘れないように朝礼で案内した」、などでは弱く第三者には評価されそうにありません。

 

職場の苦情相談窓口は設置していますか!?

50社を超える法人の外部相談窓口を担当している当社に寄せられる通報・相談の1割程度が施設的な職場環境の改善を求めるものであり、特に近年は酷暑から「職場の熱中症対策が不十分なので何とかしてほしい」という報告が数件寄せられました。建設業や製造業など夏の日中時間帯に炎天下や冷房施設の無い施設で業務を行う場合は従業員からの申告があればすぐに改善することができますが、たとえば看護師・介護士のようなケアサービス事業者では、生命・健康を第一優先すべき利用者や家族からのクレームを恐れてマスク着用の指示を解除できなかったり、外回り営業職でネクタイ+ジャケットを着用させている金融、法律業界や法人営業部門など信頼感が重視される業界のように、暑いとわかっていても熱中症対策を躊躇してしまうなど業界それぞれの難しさがあります。ただし「業界的な常識」だけに意識をとられてしまうと、いざ職員が業務中の熱中症により高次機能障害や死亡事故となった際には企業は安全配慮義務違反による損害賠償を逃れることはできなくなります。

施設的な職場環境は長く勤務するほど気が付きにくく、たとえ一般常識とかけ離れているような臭気、施設内温度、危険物(作業)であっても上位職者などベテランからすると「大丈夫だろう」と判断しがちです。また飲食店の厨房のように、いつでも水分補給できるからといって自主性に任せて指導をおろそかにしてしまうと多忙でタイミングを逃し熱中症になるという不注意による事故もリスクとして十分あり得ます。熱中症の初期症状が出た時点で店舗は回らなくなるでしょう。

【ベテラン社労士からのアドバイス】例えば1時間に一度の給水ルールや水分補給の張り紙など職場内での熱中症対策を行ったことが客観的に証明できない場合は当然、飲食店でも安全配慮義務違反が成立する可能性があります(そんなことよりも、酷暑劣悪な環境では誰も働いてくれません)。

当社のような第三者の窓口に通報があればその環境が一般とどれくらいかけ離れているか、また他社はどのような対策をおこなっているか、まさに『客観的な』アドバイスを行うことができ、多くが改善に至っています。他人に言われた初めて気が付いたというお声も多く、外部窓口の設置が功を奏した好例といえます。

職場内のパワハラ・セクハラ・カスハラなどハラスメント問題から公益通報者保護法に基づく内部通報、そして今回の安全衛生規則改正による熱中症対策など、企業に従業員を守らせるための法律によってさまざまな対策が義務化されています。しかし会社経営は「法律で決まっているから義務を守る」だけでなく、なぜ法律が改正されたのか、なぜわが社は人手不足なのかを客観的に見つめなおし職場環境の改善に取り組む必要があります。人手不足によって事業継続が困難となる「人手不足倒産」も報じられますが、中小零細企業でも労働者の職場環境改善に率先して取り組んでいる会社は深刻な人手不足に陥ることが少ない印象があります。従業員を大切にするための取り組みをできることから進めていくことだけが、人手不足で苦しまない安定経営の最短距離と言えます。

昔からその職場や業界に慣れた事業主の皆様からすれば全く問題ないと思っていても、従業員たちは苦しんでいるかもしれません。そのギャップが離職率の高さにつながっています。劣悪な環境で人手不足を嘆いてもそれは自業自得です。優秀な人材を獲得したいなら、職場環境を見直すことが大切です。皆様の会社は従業員の不満や改善希望の小さな声に耳を傾けてくれていますか?

法人向け外部相談窓口費用が月額5,500円《パワハラ・内部公益通報》

 

ハラスメント等外部相談窓口サービス導入費用(全国対応可)

月額基本料金:5,500/月(税込/規模に関わらず一律)

◆入電報告レポート料:5,500円/件(税込)

★100名以下の中小企業はいまなら導入初期費用無料(途中解約違約金も無し!※101名以上企業は10万円~)

◆オプションサービス(別途お見積り)

※弁護士・FP・産業医のご紹介料は無料

◆ハラスメント相談窓口利用方法

電話:平日10時~17時(事前予約で夜間・休日相談対応可)

メール:24時間365日受付

ZOOM面談:事前予約制(60分以内)

≪法人向けハラスメント対策関連業務実績≫

★人事労務関連研修・セミナーで200回以上の登壇実績、ハラスメント等コンプライアンス外部相談窓口は従業員数1万人以上の大企業から中小企業、自治体や公立大学まで50団体以上が利用中。

  • 大阪府警警察本部 幹部向けハラスメント防止研修講師担当
  • 大阪出入国在留管理局 幹部向けハラスメント防止研修講師担当
  • 財務省北陸財務局(石川県金沢市) 一般職員向けハラスメント防止研修講師担当
  • 学校法人明治大学(東京都千代田区) 職員向けハラスメント防止研修講師担当
  • 【大阪ケアウィーク’23】 カスタマーハラスメント対策専門セミナー専門家として登壇
  • 大手不動産会社(埼玉県さいたま市)主催人事セミナー登壇
  • 大手家具量販店(東京都北区) 人事労務部向けハラスメント対策実務研修講師担当
  • 人材派遣会社(兵庫県神戸市)主催ハラスメント対策セミナーパネリスト登壇
  • 地方支分部局(神奈川県横浜市) 管理職向けハラスメント防止研修講師担当
  • 介護福祉事業所(京都府京都市)管理職向けハラスメント防止研修講師担当
  • 建設業者(三重県津市)ハラスメント防止研修講師担当
  • 社会福祉法人/社会福祉協議会(大阪府大阪市)管理職者向けハラスメント防止研修講師担当
  • 協同組合(北海道札幌市) 管理職者向け人事研修講師担当
  • 医療法人/病院(千葉県千葉市) 医師・看護師向けハラスメント防止研修講師担当
  • NPO法人(茨城県水戸市) 職員向けハラスメント防止研修講師担当

…ほか全国の法人事業所に出張させていただきました(福岡県/愛知県/静岡県/広島県/沖縄県/宮城県/岡山県/大分県/滋賀県/奈良県など)

 

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