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【令和7年6月施行】職場の熱中症対策が義務化|企業が取るべき対応と罰則リスクとは?
2025/06/27
(最終更新日:2025/08/18)
2025年6月1日より、改正された労働安全衛生規則が施行され、職場における熱中症対策が企業の義務となります。
これまで努力義務とされていた対応が明確に「義務化」されることで、事業者には従業員の安全確保に向けた具体的な対応が求められます。
特に、WBGT値や気温が高くなる現場作業や屋外業務においては、熱中症による労働災害が年々深刻化しており、2024年には死傷者数が1,000人を超え過去最多となりました。企業には、「事後対応」だけでなく「未然防止」も含めた総合的な対策が求められています。
(データ出展:厚生労働省)
なぜ今「熱中症対策の義務化」なのか?
地球温暖化の影響により、夏場の気温上昇は年々深刻さを増しています。厚生労働省のデータによれば、近年は死亡災害の約4%が熱中症に起因するという報告もあり、企業の対応が強く求められています。
これを受け、労働安全衛生規則に新たに第612条の2が追加され、特定の環境下での作業に対し、事業者に次のような義務が課されることになりました。
企業が講じるべき義務的対応(新設条文より)
✅ 1. 体調異常の早期報告体制の整備と周知
作業者自身、または周囲の作業者が熱中症の症状を感じた場合に、速やかに報告できる体制を整え、対象従業員に周知すること。
✅ 2. 緊急時の対応手順を明確化・共有
作業からの離脱、冷却措置、医師の診察など症状悪化を防ぐ手順を定め、全員に共有すること。
✅ 3. 緊急連絡網・医療機関リストの整備
連絡先の可視化・共有により、いざというときに即座に行動できる体制を構築。
対象となる作業の基準とは?
以下の条件に該当する作業が対象となります:
-
WBGT28度以上または気温31度以上
-
連続1時間以上、または1日4時間を超えて従事する作業
特に建設、物流、製造、警備、外回り営業など、空調が効かない環境や屋外業務を伴う業種は注意が必要です。
冷房の効いたオフィスや店舗での作業は基本的には該当しませんが、作業の基準となる「WBGT値」とは聞きなれない言葉ですが、環境による熱ストレスを評価するために扱う指数のことで、作業に伴う身体の代謝によって異なる体感気温を指数化することで、気温による判断だけにとどまらず、作業現場や作業内容によるきめ細やかな判断ができます。
今回の法改正では熱中症が起こった際の対応方法を事業者に義務付ける内容のもので言わば『事後対応』のものとなりますが、当然、倒れてしまってからでは遅く、熱中症にならなくとも「熱中症になりそうなぐらいキツイ」業務は世の中に山のようにあります。
事業者として法改正による義務対策は当然として、労務管理の観点からも熱中症可能性を想像し、「未然に防ぐ」ためのリスク対策が必要と考えられます。
【参考となる判例】船舶修理会社で船の補修作業中の30代男性が死亡したことは会社が適切な対策を怠ったことによる熱中症で安全配慮義務違反であるとして企業を相手取った訴訟では、2025年2月に企業の不法行為を認めた地裁判決を高裁も支持し、4,860万円の損害賠償を命じた(会社側・遺族側双方が最高裁に上告)
熱中症対策の方法
法律の施行によって熱中症対策を怠った企業には「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金(法的罰則)」が設けられました。では万が一事故が起こってしまったとき、「熱中症対策をしっかり行っていたので会社に罪は無い!」と企業が主張するためにはどのような方法が効果的でしょうか。安全配慮義務違反を争う裁判で評価されそうな企業の取り組みについて、例を挙げてみましょう。
●一定時間ごとに一斉の休憩を設け、水分補給などを行わせていた。
●熱中症の注意喚起のためポスターを作成(印刷)して事業場の見やすい場所に掲示していた。
●業務開始のタイミングと業務途中のタイミングで、塩飴や経口補水液などを提供していた。
●薄手の素材や通気性の良い服装(空調服など)を推奨し、その旨社内掲示板で案内していた。
●ハンディファンやネッククーラーなど直接表面体温を下げる熱中症対策グッズを支給していた。
●「熱中症アラート」として作業日ごとの注意指数をメールで配信していた。
などが考えられます。事故が起こった際に主張するためには「口頭で注意喚起を行っている」ではさすがに企業としては不十分で、記録が残る方法で実施することが必須です。また従業員の自主性に任せているようでは企業は責任を逃れることはできません。職場は学校や家庭ではなく、安全衛生法にしばられた企業であり法律違反には罰則が伴います。企業側が自主的に、主体的に、率先して「熱中症対策を強制させる」ことが重要です。文書や掲示板などで掲示した際には写真で記録しておくなども効果的ですね。繰り返しになりますが、「何度も注意していた」、「日陰に行くように案内していた」、「水分摂取を忘れないように朝礼で案内していた」、などでは根拠が弱く第三者には評価されそうにありません。
外部相談窓口の設置が「義務対策+職場改善」に有効
法改正に伴い、職場内の環境改善や不満の早期把握は企業にとって極めて重要です。
実際、当社が運営する法人向け外部相談窓口には、熱中症対策の不備に関する声が多数寄せられています。特に医療・介護業界、金融、営業部門では、「業界の慣習」が暑熱対策を阻む要因になっているケースもあります。
外部相談窓口を設けることで、
-
現場で見落とされがちな温度環境や労働条件の異常
-
対応に悩む管理職の相談先
-
安全配慮義務違反の未然防止
といった複数のメリットがあります。
50社を超える法人の外部相談窓口を担当している当社に寄せられる通報・相談の1割程度が施設的な職場環境の改善を求めるものであり、特に近年は酷暑から「職場の熱中症対策が不十分なので何とかしてほしい」という報告が数件寄せられました。建設業や製造業など夏の日中時間帯に炎天下や冷房施設の無い施設で業務を行う場合は従業員からの申告があればすぐに改善することができますが、たとえば看護師・介護士のようなケアサービス事業者では、生命・健康を第一優先すべき利用者や家族からのクレームを恐れてマスク着用の指示を解除できなかったり、外回り営業職でネクタイ+ジャケットを着用させている金融、法律業界や法人営業部門など信頼感が重視される業界のように、暑いとわかっていても熱中症対策を躊躇してしまうなど業界それぞれの難しさがあります。ただし「業界的な常識」だけに意識をとられてしまうと、いざ職員が業務中の熱中症により高次機能障害や死亡事故となった際には企業は安全配慮義務違反による損害賠償を逃れることはできなくなります。
施設的な職場環境は長く勤務するほど気が付きにくく、たとえ一般常識とかけ離れているような臭気、施設内温度、危険物(作業)であっても上位職者などベテランからすると「大丈夫だろう」と判断しがちです。また飲食店の厨房のように、いつでも水分補給できるからといって自主性に任せて指導をおろそかにしてしまうと多忙でタイミングを逃し熱中症になるという不注意による事故もリスクとして十分あり得ます。熱中症の初期症状が出た時点で店舗は回らなくなるリスクがあります。
「義務を守るだけ」で終わらせない環境づくり
企業の役割は「法律を守ること」だけではありません。
なぜ法改正されたのか、なぜ人手不足が深刻化しているのか――こうした本質的な課題に向き合う姿勢が、企業の信頼と採用力を高める基盤になります。
【ベテラン社労士からのアドバイス】例えば1時間に一度の給水ルールや水分補給の張り紙など職場内での熱中症対策を行ったことが客観的に証明できない場合は当然、飲食店でも安全配慮義務違反が成立する可能性があります(そんなことよりも、酷暑劣悪な環境では誰も働いてくれません)。
当社のような第三者の窓口に通報があればその環境が一般とどれくらいかけ離れているか、また他社はどのような対策をおこなっているか、まさに『客観的な』アドバイスを行うことができ、多くが改善に至っています。他人に言われた初めて気が付いたというお声も多く、外部窓口の設置が功を奏した好例といえます。
職場内のパワハラ・セクハラ・カスハラなどハラスメント問題から公益通報者保護法に基づく内部通報、そして今回の安全衛生規則改正による熱中症対策など、企業に従業員を守らせるための法律によってさまざまな対策が義務化されています。しかし会社経営は「法律で決まっているから義務を守る」だけでなく、なぜ法律が改正されたのか、なぜわが社は人手不足なのかを客観的に見つめなおし職場環境の改善に取り組む必要があります。人手不足によって事業継続が困難となる「人手不足倒産」も報じられますが、中小零細企業でも労働者の職場環境改善に率先して取り組んでいる会社は深刻な人手不足に陥ることが少ない印象があります。従業員を大切にするための取り組みをできることから進めていくことだけが、人手不足で苦しまない安定経営の最短距離と言えます。
昔からその職場や業界に慣れた事業主の皆様からすれば全く問題ないと思っていても、従業員たちは苦しんでいるかもしれません。そのギャップが離職率の高さにつながっています。環境改善なくして人材確保は困難です。優秀な人材を獲得したいなら、職場環境を見直すことが大切です。皆様の会社は従業員の不満や改善希望の小さな声に耳を傾けてくれていますか?
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-
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≪法人向けハラスメント対策関連業務実績≫
★人事労務関連研修・セミナーで200回以上の登壇実績、ハラスメント等コンプライアンス外部相談窓口は従業員数1万人以上の大企業から中小企業、自治体や公立大学まで50団体以上が利用中。
- 大阪府警警察本部 幹部向けハラスメント防止研修講師担当
- 大阪出入国在留管理局 幹部向けハラスメント防止研修講師担当
- 財務省北陸財務局(石川県金沢市) 一般職員向けハラスメント防止研修講師担当
- 学校法人明治大学(東京都千代田区) 職員向けハラスメント防止研修講師担当
- 【大阪ケアウィーク’23】 カスタマーハラスメント対策専門セミナー専門家として登壇
- 大手不動産会社(埼玉県さいたま市)主催人事セミナー登壇
- 大手家具量販店(東京都北区) 人事労務部向けハラスメント対策実務研修講師担当
- 人材派遣会社(兵庫県神戸市)主催ハラスメント対策セミナーパネリスト登壇
- 地方支分部局(神奈川県横浜市) 管理職向けハラスメント防止研修講師担当
- 介護福祉事業所(京都府京都市)管理職向けハラスメント防止研修講師担当
- 建設業者(三重県津市)ハラスメント防止研修講師担当
- 社会福祉法人/社会福祉協議会(大阪府大阪市)管理職者向けハラスメント防止研修講師担当
- 協同組合(北海道札幌市) 管理職者向け人事研修講師担当
- 医療法人/病院(千葉県千葉市) 医師・看護師向けハラスメント防止研修講師担当
- NPO法人(茨城県水戸市) 職員向けハラスメント防止研修講師担当
…ほか全国の法人事業所に出張させていただきました(福岡県/愛知県/静岡県/広島県/沖縄県/宮城県/岡山県/大分県/滋賀県/奈良県など)
まとめ
2025年6月の法改正により、熱中症対策は明確に「企業の義務」となります。
安全配慮義務を果たし、訴訟や労災リスクを未然に防ぐためにも、制度的対応+職場内の声を拾う体制づくりを今から始めましょう。
よくある質問(FAQ)
法改正の内容や導入にあたって、よくいただくご質問を以下にまとめました。
不明点がある場合は、お気軽にお問い合わせください。
Q1. 熱中症対策の義務化はどのような企業が対象ですか?
A.
労働安全衛生規則の改正により、WBGT値28度以上または気温31度以上の環境下で、
-
連続して1時間以上作業する場合
-
1日4時間を超える作業が見込まれる場合
これらの条件に該当する作業を行う企業が対象です。
建設業、運送業、製造業、警備業、外回り営業など、空調がない環境での業務を行う事業所は特に注意が必要です。
Q2. 義務化に違反すると、どのような罰則がありますか?
A.
改正法では、熱中症対策義務に違反した事業者には、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、労災が発生した場合には、安全配慮義務違反による損害賠償請求や刑事責任に発展することもあります。
Q3. 熱中症対策として企業がやるべきことは何ですか?
A.
企業が講じるべき基本対応は以下の3つです:
-
体調異常の早期報告体制の整備と周知
-
冷却・搬送等の対応手順の策定と共有
-
緊急連絡網や医療機関連絡先の整備
加えて、以下のような実務対応が推奨されます:
-
休憩時間の設定、水分・塩分補給の促進
-
空調服や冷却グッズの配布
-
注意喚起ポスターの掲示
-
作業日ごとの熱中症アラート配信
Q4. 「WBGT値」って何ですか?
A.
WBGT(湿球黒球温度)値とは、気温・湿度・日射・風速などを総合的に評価し、熱ストレスを判断するための指数です。
一般的な気温よりも実際の体感温度に近い指標とされており、作業現場のリスク評価に適しています。
Q5. 外部相談窓口の設置にはどんなメリットがありますか?
A.
外部相談窓口を設置することで、
-
職場環境の不備や熱中症対策の不足を早期に把握できる
-
従業員の声を客観的に受け止める体制を築ける
-
安全配慮義務違反の未然防止ができる
-
ハラスメントや労務トラブルにも横断的に対応可能
など、リスクマネジメントと職場改善の両立に役立ちます。
Q6. 相談窓口の導入費用はどれくらいかかりますか?
A.
弊社の外部相談窓口サービスは、月額5,500円(税込)から導入可能です。
従業員数100名以下の企業であれば初期費用は無料。
電話・メール・Zoomなど、複数の相談手段に対応しています。
今すぐお問い合わせする(☎:06-6306-4864)
お見積書のご所望やサービスに関するお問合せは下記へ内容をご記入のうえ送信してください。
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